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堺の老舗が挑戦する、お茶の新たな楽しみ方と商いの舞台

株式会社 つぼ市製茶本舗(大阪府高石市)

阪堺電車の神明町駅を下車するとすぐ、白壁に描いてあるかわいい茶壺のマークが目を引く町家が「つぼ市製茶本舗」の茶寮堺本店です。今日は千利休の生まれた街、堺のお茶の歴史や文化についてお話を聞きたいと思います。

大阪も茶どころだった?堺で170年続く老舗の茶屋の歴史

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つぼ市製茶本舗の茶寮は、築100年以上の町家を改装して2014年(平成26年)にオープン。建物に贅を尽くす「堺の建て倒れ」の言葉通り、職人さんの手による内部の装飾や木材を極力生かしてリノベーション。今はご近所の皆さん観光客を問わず、たくさんの人が訪れる堺の名所になりました。

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茶寮での一番の人気商品、堺の老舗刀鍛冶特注の刃で削ったかき氷「利休抹茶ミルク金時」です。口に入れた瞬間すぐに溶けてなくなるほどふわふわな食感で、別名「無重力かき氷」と呼ばれています。

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茶寮2階のスペースで副社長の谷本康一郎(たにもと こういちろう)さんにお話を伺います。

つぼ市製茶本舗は江戸時代末の1850年(嘉永3年)に、初代谷本市兵衛さんが大阪に創業しました。店の名を「つぼ市」としたのは、現在の大阪府和泉市の坪井町に住居があったことと、お茶の保菅の容器につぼを使っていたからです。

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当時の豪商を描いた明治16年(1883年)の図絵「住吉堺名所並ニ豪商案内記」に店の賑わいを見ることができます。

「イメージしくいかもしれませんが、実はかつて大阪府南部も茶の産地で、昔の泉北ニュータウン一帯は茶畑でした。そこで摘んだ茶葉を茶屋が仕入れ、製茶して京都へ卸していました。当時は京都から堺にいっぱい買いに来られ、お茶が運ばれていました。大阪のお茶は明治のはじめ頃には開港したばかりの横浜からも輸出されていたんですよ」

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明治から大正にかけ手広く商売をしていたつぼ市も、その後の太平洋戦争末期の空襲で店舗が全焼してしまいます。これがその時唯一残った看板です。

「戦争で焼け野原になって生活どころじゃないように思われますが、それでもお茶を求めるみなさんが再開したつぼ市の店の前に列をなした、と聞いています」と谷本さん。

平和の訪れとともにお茶の消費は順調に伸び続け、高度経済成長期には四代目の谷本陽蔵さんが台湾茶を輸入し、烏龍茶ブームの波に乗り事業を拡大しました。

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「当社の『利休の詩』というお茶です。よかったら二煎めも飲んでください」と煎茶をすすめられました。グリーンが鮮やかなこのお茶はしっかりと旨味があって甘く、後味はすっきりしています。

つぼ市製茶本舗では来客の際、その担当者が手ずから淹れてくれます。それは、たとえ社長であっても同じ。感謝と愛情の心を込めておいしいお茶を淹れてくれます。

大阪でブレンド技術が発達した理由

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つぼ市製茶本舗は、お茶に関する資格を持ったスタッフが多く在籍していることです。日本茶文化の歴史や価値を伝えることに重きを置いた「日本茶インストラクター」と日本茶の鑑定や審査能力を認証される「茶鑑定士」です。茶鑑定士は、茶葉の産地や品種を実際のお茶を飲んで判定する「全国茶審査技術競技大会」に参加し、段位が与えられます。

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京都や福岡といった産地の茶屋は、産地だけのものしか取り扱いません。しかし、大阪の茶屋はお茶の産地ではないので、さまざまな産地のお茶を集めて作らなければなりません。

大阪はかつて天下の台所であり、さまざまな産地のお茶が集積する環境にあったことから、全国のお茶を集めブレンドする技術が向上していきました。その結果、ブレンド技術が大阪の茶屋の特色と強みになっていきました。

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「お茶は同じ産地でも作り方がさまざまで、その年の天候が作柄に影響して味も品質も変わります。いつもと変わらないお茶をお客様にお届けする、飲む人に満足してもらうためにブレンドするのです。

『同じ味を保つ』ということこそが一番大切で難しいことであり、一年間同じ味をお客様にお届けすることができる、それがつぼ市製茶本舗の強みです。

当社の担当者は『この産地をブレンドしたらこの味になる』と頭の中で想像しながら仕入れを行います。無数の組み合わせを頭の中に入れて、完成したお茶の味を想定して原料を仕入れます」

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ブレンドするもうひとつの理由は、配合した方がお茶をおいしく仕上げやすくなるからです。新鮮で清々しい香りに優れているが旨味が少なめの産地のお茶と、逆に旨みはあるが香りの少ない産地のお茶をブレンドすることで、ふたつのお茶を掛け合わせたおいしさを楽しめます。それぞれの産地の「よいとこどり」をするのがブレンド技術の妙です。

仕上げから焙煎、ブレンドまで。製茶の技術を見に工場へ

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ガイドを担当いただく工場長です。

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工場での見どころは茶葉の選別の厳しさです。
荒茶から不要部分のみを除去し、さっと焙煎してしまうのが一般的な方法ですが、とても細かく選別するというところが、つぼ市製茶本舗の仕上げ技術の最も大きな特徴です。

入荷した荒茶は廻篩機(まわしふるいき)という機械で「頭」「実」「粉」と部位ごとに分けられ、実と粉は直接「火入れ機」で焙煎されます。

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残った頭はさらに仕上げ機と呼ばれる機械で細かく選別されます。
頭の中には「棒」と呼ばれる茎部分があり、「毛葉(ケバ)」呼ばれる粉末状態の「出物」、「細実」とさらに細かく選別されます。

茎の方が電気を通しやすいという性質を生かした導電性による選別、ふるいやエアーによる重量選別などをあらゆる方法を駆使しながら、細かく分けていきます。

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このようにとても細かく選別するのは、サイズや含まれる水分によって焙煎の適温が異なるからです。それぞれの味の良さが現れる火加減や時間を判断し焙煎します。また、それぞれ別に製茶することで品質を均し、お茶の劣化を防止するという効果もあります。

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焙煎では「火入師」と呼ばれる10年以上の実務経験を積んだ担当者が、それぞれの原料の種類や状態、その日の気温や湿度なども考慮しながら、焙煎します。味に直接影響するので、とても慎重さを求められる仕事です。焙煎しできあがったお茶を少量ずつ頻繁にチェックし、温度を加減しながら焙煎していきます。

焙煎したお茶は合組機(ごうぐみき)によってブレンドされます。ブレンド後のお茶は火入師と茶鑑定士の段位を持つ品質管理の担当者によってチェックされます。

その後、充てんや検品を経てお客様の元へ届けられます。

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近年は日本茶もティーバッグで飲まれることが増え、急須を持たずにお茶を楽しむ家庭が増えています。

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「お茶の魅力はさまざまな温度で楽しめる点です」と谷本さん。

「日本の緑茶は熱湯で入れてもぬるめのお湯で入れても水出しで入れても、いずれの温度帯でも味わい深い。熱湯で淹れると苦渋みが出て朝飲むとシャキッとします。寝る前にはぬるめのお湯で淹れて甘く仕上げるとリラックスできます。同じお茶でも温度によってさまざまで、場面に応じて淹れ方を変えると違うおいしさを発見できます。

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「それぞれのシーンでおいしさや楽しみ方があるということです。おいしい淹れ方はたくさんありますけど、それもあくまでひとつの淹れ方。スタイルにこだわらずご自分の好きな味を楽しみながら見つけていただきたいですね。おいしいお茶のある暮らしを提案するというのが私たちの使命なんです」と谷本さん。

お茶に触れる機会を創る活動と新たな商品づくり

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茶寮2階スペースでは、お茶の淹れ方教室を定期的に開催し、つぼ市製茶本舗の日本茶インストラクターがお客様にお茶のある暮らしや魅力を伝えます。お茶の淹れ方レクチャーや利き茶体験を通して、学びを深めてもらう活動です。

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小学校でお茶の樹の植樹活動を行っています。毎年5月には茶摘み体験を開催し、参加者の皆さんには摘みたての茶葉で淹れたお茶を楽しんでもらいます。

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「子ども食堂プロジェクト」では、煎茶の飲み比べ体験や抹茶の点て方を学ぶ会も開催しています。

つぼ市製茶本舗が次に力を入れているのは、お茶を使った商品づくりです。
「今開発しているのは最高級のお茶を使ったスイーツです。当社のお茶の中から厳選した品を、焙煎やブレンドで香り高く仕上げたものを使います。一緒に飲むお茶にも配慮した味づくりを心がけています。お茶に触れる時間が素敵だと知ってもらえるようなものが完成する予定です。今日はこの気分だからこんなお茶で、といった提案ができるようなスタイルで提供し、多くの方にもっとお茶の魅力にふれていただきたいと思います」と谷本さん。

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ぜひ、つぼ市製茶本舗のお茶とスイーツでゆったりとした時間をお過ごしください。

老舗茶舗の茶師がこだわって作りました
利休のお茶とフィナンシェ詰合せ

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詳しくはこちら

社名:株式会社 つぼ市製茶本舗
住所:大阪府高石市高師浜1丁目14-18
連絡先:072-261-7181


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