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幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 13.つらさの理由②

 更に翌日。



「まーくん、ごめん。苦しい。
私、生きてていいんだよね?」



「咲笑ちゃん、つらいんだ。

もちろん、生きてていいんだよ!

生きてて欲しい。

咲笑ちゃんには生きて、幸せな未来をつかんで欲しい。

生きるってつらい事だけど、でも生きよう。」



「もう頑張れない。」



「頑張れないと思わせられるようなことがあったの?」



「家族のこともあったし、友達のお誕生日パーティーで彼の姿を見てしまった。
もう疲れたよ。」


「そっか、つらいことが続いてるんだ…。

伝えたかった事も話せてないし、見るだけでもつらかったんだね…。」


「うん。でも友達が一緒にいてくれた。

好きなだけ泣かせてくれた。」


「そっか、一人じゃなくて良かった。

つらい時は我慢せずに、しっかり悲しみを受け止めて泣いたらいいと思うよ。

咲笑ちゃんにとっては何が一番つらいのかな?」


「生きてるのがつらい。
元気になれないのがつらい。」



「生きている以上、元気にならないといけないと思ってるんだね?」


「だってみんな励ましてくれてるのに。

忠告を聞かなかったのは私なのに。」


「みんな優しいね。

忠告を聞かなかったお前が悪い!って言ってもらった方が楽になるのかな?」


「絶対誰も言わないよ、みんな頑張ったね、おかえりって言ってくれる。

なのに元気になれない。

友達はいつも傍にいてくれるのに。
絶対私を責めないのに。」



「咲笑ちゃん、頑張ったもんね。

みんなそれを知ってるから責めない。

頑張った咲笑ちゃんが大好きだから責めない。

もちろん元気になって欲しいとみんな思ってるけど、すぐに元気になれるなんてきっと思ってないよ。

頑張った分だけ悲しみも深いんだから。

みんなそれが分かってるから甘えさせてくれるし、泣かせてくれるんだと思う。

だからゆっくりでいいよ。」


「いま死んだら、みんな『もっと話を聞いてあげたら良かった。』ってきっと自分を責めると思うから死ねない。」



「そうだね。みんなが悲しむ。もちろん僕も。

死ねないじゃなくて、みんなのために生きていて。

みんな咲笑ちゃんの本当の笑顔を待ってるけど、無理しなくていい。

今は悲しみに暮れててもいい時期。

悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで、とことん悲しもう。

きっとみんな待っててくれる。
僕もいつまででも待つよ。」


「復活できないかもって思うの。」


「今はつらくて復活できるイメージが涌かないんだ…。

だから余計につらいんだね。」


「うん。漠然とだけど、無理な気がする。

結婚詐欺とかに引っ掛かった人、どうやって日常に戻るんだろう。」


「なるほど。調べてみる価値がありそう。

まだ少ない僕の知識では、相手とか自分とか、その出来事を認めたくない、許せないと思っているうちは囚われた状態。

その時の自分の状況や行動を受け止めて、許して、抱き締めてあげる事ができると前に進めるって感じだと思う。」



「それはできないと思う。

自分でいることがつらくてウィッグ買った。

なんで、いつも頑張って頑張って頑張って生きてるのに、報われないの?一番好きな人の一番になれないの?

頑張るようにって、手を抜いちゃいけないって言われて育ったんだよ。

私いい子だったんだよ。もう嫌だ。」


「咲笑ちゃん、言われた通りにやって、いい子でいる努力をしてきたんだね。

手を抜かないっていうのは誰に言われた言葉なの?」


「母と祖母と学校の先生に。
いつも努力してきたよ。」


「お母さん、お祖母さん、学校の先生、みんな尊敬できる人だった?」



「ううん。」



「じゃあ…今まだその努力を続ける?

全てに手を抜かないんじゃなくて、一生懸命に復活するんじゃなくて、ちょっとだけ自由になろう。」


「方法がわからないの。

カナダに留学してたときは自由が分かってた。

でも今は友達があまりに優しいから、そんな友達を傷つけたくなくて、復活したふりをするようになってしまった。

ほんとに優しくしてくれるから。元気になりたい。」



「復活したふりか…それもつらいね。

でもね。

大事な話。動物は危険だと思ったら逃げるの。


咲笑ちゃんが頑張ってきた道もそう。

頑張ってる姿は素敵かも知れないけど、でも向き合うのが危険な時は逃げていいの。」


「逃げる元気ももうない。」



「友達、優しいね。元気になりたいね。



つらいときは徹底的に落ち込もう。
そうすれば、きっと大丈夫。」



「いつもいつも、人の都合を受け入れてきたの。

もう自分のために生きていく方法が分からない。」


「じゃあその方法を探そう。

咲笑ちゃんの中にはきっとあると思う。

咲笑ちゃんは幸せになるために生まれてきたんだから。

そしてきっと周りの人を幸せにできる人だから。」



「違うよ。
母が祖母を黙らせるために産まれたんだよ。

役割は産まれるだけだったのに、ノコノコ大きくなったから。

産まれるだけで良かったのに、素敵な大人になりたいって願ってしまったの。」


「ひょっとすると、きっかけはそうだったのかもね。

でも、大事なのは自分の気持ち。
素敵な大人になりたいって願ったのなら、そのために生まれてきたんだと僕は思うな。」


 翌日、咲笑ちゃんが言っていた結婚詐欺から立ち直る方法に対して、僕は調べた結果を伝えたが、お礼の返事が来た後、咲笑ちゃんからの連絡はここから1ヶ月半の間、途切れたままだった。








幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~




最後までお読みくださり、ありがとうございました。


どうやってもマイナスの思考から抜け出せないこと、ありますよね。

そんなとき、ちゃんと落ち込めたり逃避できたりすれば楽になることもあると思います。


頑張らなきゃ!って無理をしていると、その方が回復が遅くなることがあります。


頑張るって、結構よく使う言葉だと思いますが、人を縛る言葉でもあると思います。


たまにはちょっとだけ、積極的に『頑張らない時間』を持ってみませんか?




次回は明日、必見の更新です。

よろしくお願いします。

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