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私はデジタル古本屋かアナログ古本屋か

杉本梁江堂 杉本豊三   

表題の言い回しがすでに古めかしい感じがしますが、もう10年以上も前から、古本屋の間では、「あるもの」の是非について、ちょっとした問題になっていることがあります。

その「あるもの」とは、所謂「古書目録」についてです。私自身は催事や自家目録において、古書目録を「作る過程」が好きですが、「古書目録」は、ネット販売が主流になりつつある現代において、ものすごくアナログな存在ではないでしょうか。もちろん今でも目録販売中心で、盛業されている古書店は多数あります。


私がこの業界に入った30数年前は、古本屋にとって古書目録は販売の主流の一つでした。

その頃の目録作成は、短冊状の目録原稿用紙に商品の情報を記入し、フィルムカメラで写真を撮り、プリントした写真をトリミングし、写真をページごとに並べ、それを白い紙に割付し、割付した紙と目録原稿・写真をページごとに封筒へ入れ、まとめてから印刷屋さんへ入稿する、その後数回の校正を経て、印刷に入り目録が完成します。あとは名簿のあて名をコピーして封筒に貼り付け、顧客に発送する、という段取りで、完成まで数か月かかることも当たり前でした。

現在でも超アナログ人間の私は、アナログなやり方とデジタルな部分を組み合わせて目録を作成しています。商品に付けておきたいので目録原稿用紙は今でも使用しますが、原稿提出はエクセルで、写真はスマホで撮影とトリミングをする、などデジタルな部分が増えてきました。

また目録の解説を書くために調べるときも、以前は国書総目録や参考書・図録などを引っ張り出して調べていましたが、今はパソコンで検索することから始めています。

しかし少しでもわからない部分があった場合は、インターネットの「日本の古本屋」やアマゾン等デジタルを駆使し、参考書を注文して購入し本で調べる、といったデジタルなのかアナログなのか訳のわからない作業をしています。


現在私は「萬巻」「水の都の古本展」や「阪急古書のまち」の合同目録に参加しています。以前は催事ももっとあったので目録もたくさんやっていました。大した商品はなく、ページ数もたくさんやるわけではないのですが、少しずつ商品が集まり、ページ構成を考えるのは楽しい作業です。

しかし最近は、古書目録作成は経費が高い割に売り上げがなかなか厳しいし、先まで目録用に商品を寝かせておくのは大変だ、ということで古書目録をめぐる環境が良くないのも事実です。面と向かって「古書目録はもう時代遅れです。」と言われたこともあります。確かに仕入れた商品をすぐにデジタル世界に掲載すれば、経費も古書目録作成より格段に安いし勝負も早い。その方がスピード感あふれた商売です。

しかし私は目録を「作る過程」が大好きです。古書市場などで仕入れた商品を調べ、原稿を書き、写真を撮る。また、関連の商品や同系統の本や資料が増えてきてページ構成を考える、といった作業は地味で時間がかかり、効率も悪く、経費がかかる割に売り上げもすぐに見込めない作業ですが、好きだからしょうがない。

古書目録のことを「紙の目録」と仰る方もいらっしゃいますが、古書目録は紙でできているのが当たり前で、私からすれば「布の洋服」と言ってるのと同じような感覚です。


私もインターネット「日本の古本屋」やアマゾンマーケットプレイスに参加していますし、たまにヤフオクなどにも出品します。月々のデジタルな売上げが、収入の柱になっています。この売り上げは何物にも代えがたいし、ないとたちまち困ってしまいます。しかし規模が小さくなってもアナログな「古書目録」だけは続けたいし、なくなることはない、と信じています。


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