Kindle unlimtedのおすすめ:『だから仏教は面白い!』

 前編後編に分かれているが、どちらもkindle unlimitedの対象作品となっている。仏教を―特に釈迦が語った言葉という意味で―扱っているkindle unliited対象の本は、著者でいえば苫米地英人氏など、少なくないので興味があるならばおすすめだ。

 元はツイキャスで放送された物が電子書籍として出版され、それからさらに書籍化もされている。文語ではなく口語で、つまりインタビューだとか対談を文字起こしと同様の文体なのも取っつきやすさの一つであり、仏教の肝であったりもする。私は書籍版を随分以前に書店で買ったのだが、kindle unlimitedに登録されているとは予想だにしておらず、驚いたものだ。そうした作品が以外と多いので、色々と見てみると面白いかもしれない。個人的には例えば、『シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 「五箇条の誓文」で解く日本史』もそうした作品の一つで、おすすめ。
 『だから仏教は面白い!』に話を戻そう。

 日本、あるいは日本人の自意識として、自身の宗教を仏教、あるいは無宗教であるという自己認識が一般的であるらしいが、仏教と言っても様々な宗派がある。仏の教えと書いて仏教というから、仏(釈迦)が説いた教えが仏教であるはずだ。だが、恐らく多くの読者にとって、この本の内容と我々の抱く「仏教」との乖離は衝撃的であるに違いない。それでいて、理解が難しい訳でもない。仏教というと難解というイメージは決して間違いでもないが、少なくとも釈迦の語ったないようという意味での「仏教」には、それ程までの難解さはないし、むしろ単純明快だ。ただし、我々世間の一般的な常識との乖離がある事は確かだ。つまり、「ニートになれ!世界を終わらせろ!」というのが―少なくとも釈迦が説いた内容という意味での―仏教だ。もちろんかなり乱暴な要約ではあるが、これを踏まえて、自分の事を仏教徒、少なくとも忠実な仏教徒であるという認識は果たして持続するだろうか?もちろん、仏教といっても様々な宗派があるから、ニートになって世界を終わらすべし、というのは釈迦の言う仏教の教義である。現在の日本で一般的な「仏教」は、そうした意味では釈迦が言った内容とは一致しない部分が多い。そりゃあ、葬式や法事の時に坊主と話す機会があるだろうが、誰も「ニートになれ!世界を終わらせろ!」とは言わない訳だ。仏教と一言に言っても、宗派が違うためだ。
 釈迦の言う仏教は我々にとって一般的な仏教、あるいは一般的な範囲に現れる限りにおいての仏教と比較すると、極めて「ヤバイ」。本書(書籍版)から少々引用しよう。

 ではブッダがなぜ「自分の悟ったことは人に喋らないでおこう」と考えたかというと、それは彼が自身の教えを「世の流れに逆らうもの(パティソータガーミン)」だと理解していたからです。
だから仏教は面白い!,魚川祐司,2015,講談社,14項 

 つまり釈迦は自身の悟った内容が、我々が日常的な生活を過ごす上で、役に立ちそうなものであるとは認識していなかった。ただし、全く無用の長物であるという訳でも無い。もしそうであるとするならば、仏教はとっくの昔に断絶していて然るべきであるためだ。事実、役に立つ部分はある。ただし、本質的には上記のような物、つまり「世の流れに逆らうもの」だ。
 こうした仏教の「本質」は、多くの場合で、時には善意から、隠されてきた。しかし、それではそれで仏教の面白さをも同時に隠蔽する。仏教は「ヤバイ」。しかし、だからこそ面白い。本書の魅力は、その「ヤバさ」と「面白さ」を隠さない点にある。

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