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Vol.20「キリスト教」

聖書

聖書は、「世界中で最もよく売れ、最もよく普及している本」としてギネスに登録されています。

聖書は、二種類あるのをご存知ですか?

旧約聖書新約聖書です。
旧約聖書には、神様がこの世を作った天地創造からはじまり、アダムとイブ、ノアの方舟、モーセの十戒のほか、ユダヤ人の歴史などが書かれています。旧約聖書は、ユダヤ人が信仰するユダヤ教にとって唯一の経典でした。

イエス・キリスト

イエス・キリストはユダヤ教徒として育てられました。
ところがイエスは、ユダヤ教を批判し、改革運動を進めました。
ユダヤ教では、ユダヤ人こそが神に選ばれた民であって、神に救われる唯一の民族であると説いています。イエスは、「すべての人間はみな平等で、神を信じる者は誰でも救われる」と教えました。

ユダヤ教には、「神が人々を救うためにこの世に救い主を遣わす」という救世主(メシア)思想があり、イエスの言葉をきいて感動した人々は、彼こそが救世主であると信じました。

「救世主」のことをギリシャ語で「キリスト」と言います。
イエス・キリストとは、「キリスト(救世主)であるイエス」という意味です。

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イエスのことを救世主と認めないユダヤ教徒たちは、ローマ帝国の役人に「イエスが帝国に逆らって独立を考えている」と訴えます。その結果イエスは捕らえられ、ゴルゴダの丘で十字架にはりつけられて処刑されてしまいました。紀元30年ごろのことだと言われています。

イエスが生きていた間には、まだキリスト教は成立していません。

イエスの教えは弟子たちによって、『福音(ふくいん)書』にまとめられました。福音とは「良い知らせ」という意味で、ギリシャ語ではエヴァンゲリオンと言います。

この福音書が後世に『新約聖書』としてまとめられ、世界中に広まっていきました。

旧約聖書と新約聖書

キリスト教は、ユダヤ教を背景にして生まれた宗教なので、キリスト教の神とユダヤ教の神は同じ神をさしています。

宗教の教えが書かれた経典は、ユダヤ教では『聖書(律法)』。
キリスト教はこれを『旧約聖書』と呼び、『新約聖書』と共に経典と定めます。
ユダヤ教では『新約聖書』は認めていません。

一方、7世紀頃にできたイスラム教は、ユダヤ教とキリスト教の影響を強く受けており『コーラン』のほかにも『旧約』も『新約』も認めています。

その信者数は24億人。
キリスト教は、世界最大の宗教と言われています。

復活祭(イースター)

キリスト教徒にとって、イエスが生誕したことを祝うクリスマスより重要とされているのが復活祭です。

ゴルゴダの丘で処刑されたイエスには、3日後に復活するという予言がありました。そしてその予言通りに3日目に復活を遂げ、40日の間伝道(でんどう)をしたあと、天に昇られました。

この「イエスの復活」という奇跡がなければ、キリスト教はこの世に存在しませんでした。

イエスの復活を祝う復活祭(イースター)は、毎年春分の日以降の最初の満月から数えて最初の日曜日と定められています。
2019年は4月21日、2020年は4月12日です。

イエスが復活した日が日曜日だったため、ローマ帝国ではその日を安息日と定めました。日曜日には仕事を休み、主の復活を祝って教会でミサを行います。

降誕祭(クリスマス)

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12月25日はクリスマス。
イエスの誕生日だと思われていますが、実は『新約聖書』にはイエスが生まれた日がいつなのか、明確には書かれていません。

4世紀の中頃にカトリック教会が、春を呼び豊作を祝う祭りと結びつけて、冬至の12月25日を「イエスの誕生を記念する祝日」に決めたと言われています。

ちなみにキリスト教では、日没で日付が変わるとされています。つまり「クリスマス・イブ」とはクリスマスの前夜ではなく、クリスマス・イブニング=「クリスマスの夜」という意味です。

同じキリスト教でも、東方正教会は1月6日をイエスの誕生日としています。

イエスが生きていれば、何歳?

今年は西暦何年かご存知ですか?

2020年ですね。
では、なにから2020年経ったのでしょう?

実はこの西暦こそ、イエスが生まれたとされる年の翌年を元年とした、紀年法なのです。紀元前を「B.C.」と言いますが、これは「Before Christ」=キリスト誕生以前という意味です。

『西暦』は6世紀、イエスが誕生した年を学者が計算して決定しました。
しかし、その後の研究によって、イエスが生まれたのは紀元前4年ではないかという説が一般的になっています。

天地創造の神

「父と子と聖霊の御名(みな)において」
ミサの冒頭に、こう詠みあげます。

キリスト教における「神」とは、この世を創造した唯一絶対の「創造神」です。「父なる神」と「子なるイエス・キリスト」。これに「聖霊」が加わり、父、子、聖霊の三つが「一体」であるという考えが、キリスト教独自の神観念、「三位一体」です。

イスラム教アッラー(唯一の神)も、元を正せばユダヤ教、キリスト教と同じ「天地創造の神」の事です。
ただ、「神」に対する考え方が異なります。

ユダヤ教のヤハウェ(ヘブライ語で神)は、人間や宇宙を創造するが、人間とは別の存在。

イスラム教のアッラー(アラビア語で神)は絶対に従わなければならない厳格な存在。

そして、キリスト教のゴッドは、人間を深く愛し、罪を赦す存在。

「汝(なんじ)の隣人を愛せよ」
キリスト教の教えの核心には、があるのです。

キリスト教とローマ帝国

イエスの死後、ペテロという弟子を中心に信者が集まって教会を作り、そこにパウロが加わって、布教活動を行いました。
ローマ帝国の歴代の皇帝は、自分を神として崇拝するように人々に命じますが、これに従わないキリスト教徒は迫害を受けます。しかし、神の前での平等を説くキリスト教を信じる人が増え続け、無視できなくなった皇帝は、キリスト教を国教(国の定める宗教)に認めました。

その後、ローマ帝国は東ローマ帝国と西ローマ帝国に分かれ、キリスト教も
東西に分裂します。西方教会がローマカトリック教会、東方教会が東方正教会になり、それぞれ発展を遂げました。
東方正教会は各国ごとに呼称が異なり、ギリシャ正教会、ロシア正教会、日本ハリストス正教会などがあります。

ローマ・カトリック教会

ローマ教皇を最高指導者とし、世界に12億人以上の信者を有するキリスト教最大の教派です。
カトリックの総本山は、ローマ教皇が住む世界最小の独立国家『バチカン市国』。バチカン市国にはキリスト教建築として世界最大のサン・ピエトロ大聖堂があります。
日本に初めてキリスト教を伝道したフランシスコ・ザビエルは、カトリック(イエズス会)の宣教師でした。

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プロテスタント

16世紀の宗教革命によりカトリックに抗議(プロテスト)を行い、プロテスタントという教派が誕生します。
聖書中心主義で、聖書の解釈は個々の良心に任せるのがプロテスタントの特徴です。プロテスタントを「新教」と呼ぶのに対して、カトリックを「旧教」と呼ぶことがあります。

日本国内の33教派が公同教会として設立したのが日本基督(キリスト)教団です。

カトリックとプロテスタントの違い

カトリックは、どんな罪人でも善行を積めば救われると考えます。善行とは巡礼や寄付、ボランティアのことです。
対してプロテスタントは、どんな罪人でも信仰によって救われると説きます。

カトリックの聖職者は「神父」と呼ばれ、生涯独身を通し、女性の神父はいません。
プロテスタントの教職者は「牧師」と呼ばれ、妻帯が認められ、女性の牧師もいます。

ステンドグラスやマリア像、宗教画、十字架に磔られたイエス。懺悔室。
これらはカトリック教会の特徴です。

プロテスタントは簡素で装飾がなく、偶像崇拝を避けるためマリア像もなく、十字架もシンプルです。

プロテスタントは讃美歌(さんびか)をカトリックは聖歌(せいか)を歌います。
聖歌と讃美歌の違いは、宗派の違いです。

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ミサ

イエスは処刑される間際に、弟子たちを集めて食事会を開きました(最後の晩餐)。
イエスはその席で、パンを手にとり「これは私の体である」と言い、ぶどう酒を「これは私の血」と言い、弟子たちに分け与えました。
キリスト教の信者は毎週日曜日に教会に集い、イエスの死と復活を祝って「主の晩餐」を行ってきました。これがカトリック教会でミサ(感謝の礼拝)と呼ばれる儀式です。
このパンとぶどう酒を食する儀式を聖体拝領(せいたいはいりょう)と言います。カトリックのミサでは必ず行われます。

プロテスタントではミサのことを単に「礼拝」と呼び、聖体拝領は重要視されません。

洗礼式

キリスト教に入信することを洗礼と言い、その儀式を洗礼(せんれい)式と言います。神父や牧師から頭に水をかけられたり、体を水に浸したりと、宗派によって方法は異なります。

洗礼をうけると、キリスト教徒としての名前「洗礼名」が与えられます。
洗礼名+日本の名前となり、例えば「ガラシャ細川玉子」と呼ばれます。

キリスト教の葬儀

日本で行われるキリスト教の葬儀は、
全体の1%に満たないと言われています。
しかし、いざという時に慌てないために、
基礎知識として覚えておきましょう。

カトリックの葬儀

キリスト教には、通夜式に該当する儀式はありません。日本では通夜の風習があるため行いますが、特定の儀式は定められていません。

伝統を重んじるカトリックの葬儀は、ミサとして、教会で行うのが一般的です。聖歌や神父による聖書の朗読、聖体拝領が行われます。

一通りの儀式が終わると、葬儀社が進行し、弔電の披露、献花(または焼香)、遺族挨拶、お別れ、そして出棺となります。

カトリックの葬儀は『ローマ儀式書 葬儀』に則って行われますが、日本の特色、事情に合わせて作られたものなので、焼香が認められています。

プロテスタントの葬儀

プロテスタントはカトリックのように中心となる教会がないため、各教会で考え方が異なります。

プロテスタントでは「ミサ」という言葉は使いません。通夜は「前夜式」「通夜の祈り」「通夜記念式」などと呼ばれます。葬儀は「葬送式」「記念礼拝」などと称されます。

葬儀の流れは、オルガンの奏楽、牧師による聖書の拝読、讃美歌が歌われます。説教や祝祷(しゅくとう)などが行われ、告別式では献花を捧げます。

設営時の注意

教会で葬儀を行う場合、十字架、祭壇、復活のロウソク、柩が参列者から見えるように配置します。柩の置き方に決まりはありませんが、教会内では足を祭壇側にして安置します。(起き上がった時に顔が祭壇に向くように)遺影写真に黒リボンは付けません。また、神の前では平等であるため、供花札を飾らない場合があります。

キリスト教にとって「死」とは

キリスト教では「死」はすべての終わりではなく、神様の元に帰ることを意味します。この世には神様によって遣わされたので、使命が終われば神様の元に帰るのは当然です。

死ぬことを「召天(しょうてん)」と言い、天に昇るのではなく、天に召されます。神様に呼ばれて神の世界に生きるので、「死」は祝福と考えます。

キリスト教ではお悔やみの言葉は使いません。

「平安をお祈りします」
「平安が訪れますように」
などと言葉をかけます。

実はキリスト教とイスラム教の起源は同じで、多くの共通点があります。
死後の世界に対する考え方もよく似ています。死者はすぐに天国や地獄に行くわけではなく、現世にとどまります。死者はお墓や礼拝物ではなく、人と同じようにそこら中にいるという考えです。

世界が終わる最後の日に、神様によって神様の国、天国へ連れて行かれるとされています(「最後の審判」)。その際に肉体が必要なため、キリスト教やイスラム教では土葬が一般的です。


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