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Vol.3「線香」

お線香を絶やしてはいけない?

「ロウソクや線香の火を絶やしてはいけない」

お葬式まで過ごされるご遺族が気にされるのが、「火の番」です。ロウソクの火を消してはいけない。線香の煙を絶やしてはいけない。
今でこそ電気ローソクや巻き線香でなさる方が増えましたが、夜通し行うそれは「寝ずの番」とも言われました。

なぜロウソクの火を消してはいけないのか。
なぜ線香の煙を絶やしてはいけないのか。

皆さんは説明できますか?

枕飾りを飾ってみよう

故人の安置が終わったあとに、「枕飾り」をします。枕飾りとは、故人の枕元に飾る仮祭壇のことです。  

仏式の場合はロウソクを立てる燭台(しょくだい)と樒(しきみ)を飾る花立て、お線香を立てる香炉(こうろ)を置きます。
燭台、花立て、香炉を三具足(みつぐそく)と言います。香炉を真ん中に、燭台を右側、花立てを左側に置きます。  

花立てに飾る(しきみ)を「一本花」とも言います。樒を飾る際、花立てには水を入れません。「樒をわざと枯らす」という意味があるからです。(水を入れても間違いではありません)  

枕飾りはロウソクや線香などを使うので、枕元が無理ならば手が届きやすい手前に置きます。

準備が整えば、ご遺族にお線香を供えていただきます。  

この時からお葬式まで、お線香の煙を基本的には絶やしません。

亡くなった人の最高のご馳走とは

故人に供えるご飯を仏飯(ぶっぱん)と言います。できるだけ炊きたてのご飯お供えします。故人がご飯の湯気や香りを召し上がっていらっしゃるからです。

お線香も同じで、故人はお線香の煙や香りを召し上がられます。香りは最高のご馳走になるそうです。  

これを「香食(こうじき)」と言います。

時々、お線香がなくなる前に新しいのと交換しなければならないという使命感を持った方を見受けます。しかし、お線香が消えたところで煙や香りがすぐに消えてしまうわけではありません。気が付いたときにお線香がなければ足してあげる。それぐらいのゆったりとした気持ちで亡き人を送ってもらってください。

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ロウソクの火の意味は?

ロウソクの炎は、「あの世への道を照らす道しるべ」と言われています。昔は遺体が動物に襲われないように炎を焚いて追い払っていたのでしょう。神道でも火は信仰の対象で、神棚にはかがり火として焚きます。

キリスト教では聖書に「あなたがたが世の光である」とあり、「命」や「愛」を、周囲を照らしながら自らは燃えて小さくなっていくろうそくの炎にたとえて表現している一説があります。

口は災いのもと

お線香は必ずロウソクから火をもらいましょう。火を消す時は、口で消してはいけません。「口はわざわいの元」と言うように、口から吐く息は穢(けが)れとされているからです。  

ロウソクは手であおぐか、樒の葉を使って消しましょう。燃え上がった線香は、縦に振るとすぐに消えます。  

一般的な線香の燃焼時間は、だいたい25〜30分です。故人と過ごす最期の時間。できるだけそばにいて、できるだけ気にかけてあげてください。  

線香を立てる本数

線香を立てる本数は宗派によって違います。  

真言宗天台宗は、線香を三本立てます。  

日蓮宗一本、または三本です。  

浄土真宗一本の線香を2つか3つに折り、
火をつけて寝かせて供えます。  

創価学会は長方形の長香炉に寝かせて供えます。  

他の宗派は基本的に一本です。  

香典はお線香代だった!? 

昔は葬儀がある度に喪家は参列者に食事をふるまっていました。葬儀や食事に多額の費用がかかるため、周りの人たちは食料や金銭を持ち寄り、お互いに助け合いました。

お線香や樒を買う代金として持ち寄ったお金は「香を供える」という意味の香奠(こうでん)と言われ、これが「香典」のはじまりとされています。  

今は香典を辞退される方がいますが、香典には「助け合い」や「義理」の精神があり、なかには「貸し借り」で考える方もいらっしゃいます。香典は本来、断るものではありません。  

神道やキリスト教の場合

神道(神式)ではお線香はお供えしません。
八足(はっそく)と呼ばれる8本足の白木の小机で枕飾りをします。  

八足の上に、燭台と花瓶を左右に置きます。花瓶には樒ではなく、(さかき)を飾ります。中央に水、御神酒(おみき)、洗米などを供えます。
故人へのお供えなので、故人がお好きだった食べ物をお供えすることもあります。  


キリスト教の場合は枕飾りの風習はありませんが、台の上に黒い布を敷いて燭台や聖書ロザリオ(十字架)などを置くことがあります。

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神棚封じについて

自宅に神棚がある場合は、それを隠すように半紙を貼ります。これを神棚封じと言います。神道では「死」は穢れとされているので、神様に近づけてはならないという風習があるためです。神棚を封じている間は榊やお供えはしません。穢れがあるときに神棚に触れることがよくないからです。

穢れ(けがれ)は「汚れ」、汚いもののように感じますが、実際には「気枯れ」=生命力の減退や気持ちが沈んでいることを指します。

神棚封じは仏式でも行います。

神棚封じは忌明けまで行います。神式であれば50日、仏式では49日です。

火の用心のために

ロウソクは当然ですが、線香も火災の原因になります。目を離す時には必ず火の元は消していただくようにしましょう。遺族はたいへんお疲れです。火をつけたまま眠ってしまわないように気を使ってあげましょう。電気ロウソクや巻き線香で、遺族の不安を解消するアドバイスも忘れずに。

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まとめ

故人はお線香の煙や香りを食べる(所説あり)。

ロウソクは道しるべ。

火の用心には気を付けて。

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