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息子が傷つけられる瞬間に、初めて立ち会った

怒りにふるえた経験を記録します。

先日、雨の降る土曜日に、2才11ヶ月の長男と二人で出かけました。
場所は私が住む市の子育て支援センター。廃校になった小学校の校舎1階をリノベーションしており、豊富な種類の玩具やアスレチックを無料で楽しめます。対象は小学生までの子供で、保護者の付き添いが必要。市内のママさんを中心に人気のスポットです。

息子もお気に入りの場所。到着して記名の手続を済ませると、早く走り出したいと言わんばかりに、顔をのぞきこみ「もういい??」と目を輝かせる息子。「いいよ。」と告げた途端、「ぅわああああ!!」と甲高い声を上げながらアスレチックへと駆け出しました。

そして、簡単なボルダリング、トランポリン、障害物のある平均台で体を動かし、アンパンマンカーに跨って廊下をドライブ。ポポちゃん人形でお医者さんごっこをし、線路をつなげて電車を走らせ、パズルで頭の運動。次から次へと、目につく限りの遊びに飛びつくので、保護者は後片付けをしながらついていくのに必死です。

1時間ほど遊び、そろそろ出ようと帰り支度をはじめました。心残りのないよう走らせるため、「多目的室」と書かれた、タイルカーペット敷きの広い教室へ。すると入り口で、息子より背が高く、刈り上げおかっぱの男の子が、両手足を広げて通せんぼをしていました。中にも同じ背丈の男の子が二人。同じ年齢の友だち三人組のようです。

おかっぱ君が息子にききました。「なんさい?」
お兄ちゃんが遊んでくれるのだと、目を輝かせて「にさい!」と答える息子。
おかっぱ君が「おれ、よんさいやぞ!」と言ったと同時に、息子が通せんぼの脇をくぐり抜けて中に入りました。
「つかまえろー!」
おかっぱ君が言うと同時に、二人の友だちが息子を追いかける。逃げるのが得意な息子は、楽しそうに「ぅわああああ!!」と叫びながら走り回っています。
とはいえ相手は、年上の男の子が三人。すぐにつかまり、倒されては飛び起きる息子。
私の「もう帰るよー!」という声も届かないほど、楽しそうに走り回っています。多勢に無勢でしたが、無理やり止めることができませんでした。

年上の男の子たちに4回つかまり、5回目に挑もうかというとき、おかっぱ君がどこからか、取っ手付きのバランスボールを持ってきました。大人用のものよりひと回り小さくて分厚く、取っ手があるので簡単に振り回せます。
あろうことか、おかっぱ君はフルスイングで振り回しながら、逃げる息子に投げつけたのです。幸い直撃はしませんでしたが、顔にかすりバランスを崩してゆっくり転ぶ息子。大事にならずほっとしつつも、エスカレートする子どもたちに怒りがわき始めました。まずは彼らを静止し、係員に伝えなければと思った瞬間、倒れている息子を子どもたちが取り囲み、うち二人が息子を蹴ったのです。

一瞬にして怒りが沸点を超えました。
「おい、こらぁ!」たった4才の子ども相手に、私は恫喝の声を上げていました。
ピタッと動きが止まる4歳児たち。「あれ?」という表情でムクッと起き上がる息子。私から見ればいじめのような光景でしたが、本人はまだ楽しく遊んでいるつもりです。
息子に近づく私から逃げるように、散り散りになる4歳児たち。一人は知らないふりをしながら、もう一人は泣きながら教室をあとにしました。残ったおかっぱ君は、私をじっと見たあと、「おじさん関係ないやろ!」と言い放って教室を出ていきました。

「痛くないか?」息子に声をかけると、「あのね、おともだちがね、まてまてしてね、…」要は楽しかったということらしい。
はじめて目にした、息子があからさまに傷つけられる瞬間。「もし息子が将来いじめられたら…」と考えたことはありましたが、こみ上げる怒りは想像以上でした。

それと同時に、もっと早く止めるべきだったと後悔しています。当初は、息子本人が楽しいと感じているうちは、止めるべきではないと思っていました。しかし、この話を妻に伝えたところ、
・子どもの感情は「楽しい」から「つらい」に徐々に移行しない。
・スイッチが急に切り替わり、その記憶は「つらい」として残る。
・あー、腹立つ!
と言われました。たしかに、その通り。

私は今回「これも経験だ」と見守っているつもりが、悠長に眺めていただけでした。さすがに1対3で囲むのは遊びの域を超えていますね。

ちなみに、その4歳児たちの保護者は30~40才ほどの母親でした。3人の母親たちは、自分たちの子どもがまったく見えない他の教室で、お喋りに興じていたようです。私に怒られた4歳児たちは、母親たちのもとへ駆け寄っていきましたが、母親たちは関心がなさそうでした。

本来ならば4歳児たちが将来いじめの加害者にならないよう、親に対して経緯を伝え、子どもたちへの注意を促すべきでした。しかし、頭に上った血がなかなか下りない私は、こんな親子のために説明するのがバカバカしくなり、言うのをやめました。それに、言い始めると止まらなくなること、その姿を息子に見せることを避けたかったのもあります。
とはいえ、逃げるように帰りたくもなかったので、最後に息子と鬼ごっこを楽しんで帰りました。

帰りに係員の方に経緯を説明し、「もし『うちの子が大人に怒られた』とクレームがきたら、申し訳ありません。」とだけ伝えました。係員さんは理解を示してくれて、「こちらの目が行き届かずすみません。」と謝ってくださいました。

私がもっと早く息子と4歳児たちを引き離していれば、息子が傷つけられることがなく、4歳児たちも大人に叱られ怖い思いをせずに済んだのに。
今となっては手遅れですが。

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