6/9 三たびのバッグ神

通勤用のバッグがぼろぼろになってきた。

今まで様々なバッグを通勤のために買ってはだめにしてきた。必需品であり消耗品だが、ファッション性も必要なアイテムである。そしてわたしにはさほど金がない。

わたしはファッションによって通勤用のバッグを持ち替えるということをほとんどしないので、雨にも強い合皮で、両肩に負担のないリュックで、たくさん入るけれどゴツすぎないもの…と買い換えるもののイメージは大体決まっている。

そして、どこで出会うのかも。

最初にそのようなリュックに出会ったのは浅草のどこかのアーケードだった。

濁声の親父さんが閉店セールだ、均一だと呼び込む店内でそれを見つけた。希望小売価格12000円のところ3000円となっており、失敗してもいいかと思って購入。

便利だし気に入って使い倒し、二年後寿命がやってきた。駅ビルなどで探してみてもしっくりこない。どんど裂けてゆく持ち手に不安を覚えて一つ適当なのを買ったがサイズが小ぶりで不便であった。

そんなおり、十条のアーケードで濁声の親父さんの声を聞いた。

均一セール、売り切れごめんの台詞に吸い寄せられるとそこにはバッグが売られている。ファッション性は微妙だが安いバッグだ。リュックはない。リュックじゃなくても…と悩んだ末に諦めた。浅草での出会いは奇跡だったのだ。奇跡は何度でも起こるものではないーーと店を出て気を取り直してアーケードを歩き進めると、親父さんの店の二軒先でもバッグを売っていた。

入ってみるとわたしの欲しいようなリュックが色とりどりに並び、3000円で売られている。商売っ気のないお姉さんに欲しい旨を伝えて購入し、ささやかな勝利の気分を味わったのを覚えている。

そして本日、地元の駅周辺で親父さんの濁声を聞いた。

バッグの売り尽くしセールであり、2000円均一であり、期間限定なのである。

わたしはおそるおそる店に入り、商品を見た。わたしの欲しいものはないので諦める。2度あることは3度あるのか、はてさてと思いながら別の用事のために駅ビルに行くと、エスカレーターを登る途中に催事コーナーが目に入り、そこに自分が今使っているリュックの色違いがあるのを認めた。

店に入ると均一セールをやっている。なんだか変な気分だ。わたしが持っているリュックは便利だけれど、同じのを買うと不思議な気持ちが倍増しそうだ。

リュックばかりみているわたしに、店員のお姉さんがリュックはこちらのが断然おすすめなのだ、なぜならばモデルの〇〇ちゃん使用のものなのでおしゃれなのだとおすすめしてくるので、今使っている型ではないリュックを買ってみた。とても自我が無いと思う。

ネイビーとかどうです?と言われたのでネイビーを買う。3990円であった。

少し変化があってちょっとホッとした。

今日買ったバッグがだめになったとき、わたしはまた濁声の親父さんを探してしまうと思う。


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