ちょうどいい絵文字2,3個

 バイト先から「明日解禁の企画のツイートお願いしていい?」と連絡がきた。断る理由がないので私は「了解です!」と送ってTwitterを開いた。
 私は「了解です。」と「了解です!」と「了解です」を使い分けているのだが、この気配りはきっと届いていないよなといつも思う。そもそもこれを気配りと呼んでいいのかも怪しい。
 「快く引き受けます」というニュアンスを含んだ私の「了解です!」はすぐに既読が3になって、その直後に「いい感じの絵文字2,3個入れて、あとハッシュタグも考えて欲しい~!」と追加で連絡がきた。
 私は「欲しい~!」の「~!」という部分に込められた「そんな難しく考えるような仕事じゃないよ」というニュアンスを感じ取りながら(あるいはそうあってくれと祈りながら)、「そういうのはESだけにしてください」と打って送らずにそのまま消した。

 私はツイートするときもラインを送るときも絵文字を使わない。インスタはアカウントすらない。ちなみにnoteとはてなブログのアカウントは合わせて7個ある。
 そんな私が絵文字を使わないのは別に斜に構えるつもりはまったくなくて、単純に選ぶのが面倒だからだ。そのくせ「了解です」と送るときは最後に何をつけるか悩んでしまうのだから滑稽だ。どうせなら文章は全部「。」で終わらせれば、あの人はそういうタイプだからということになるのかもしれないのに、中途半端に相手からのウケを気にしてしまう。
 でもこんなご時世だから実際に顔を合わせて挽回することもできず、なんかあいつ機嫌悪いのか? と思われたまま時間が経ってしなうのはやっぱり怖い。

 いくつかのハッシュタグと文面の候補を挙げてバイト先の上司にラインを送る。今度はなかなか既読がつかなくてもう眠くなってきた私はスマホを放り投げた。別に確認するのは明日でも問題ないだろう。文面を作るよりも時間をかけて選んだ「適当な絵文字2,3個」がどういう風に思われるのか知りたくない気持ちもある。
 絵文字がある方がなんとなく冷たくないというイメージを最初に作ったのは誰だろうか。どうでもいい思考はぐるぐると渦巻いて、結局それはどこにもたどり着かず、眠りに落ちた。

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