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ビショントレーニング(セラピー)ガチ考察③

~前回までのあらすじ~
ビジョントレーニングは発達障害児にとって有効な面があり、その手法は眼科での斜視や弱視の訓練とも被る様なものがあったとさ👍

さて、今回はビジョントレーニングの中のより眼科的な応用と言うか、実際に眼球と脳を使ったトレーニングであるNSUCOと言うものに着目したいと思います!これについては論文も何本か出ていました!
ではお勉強の開始です🔔

<NSUCOとは>

Northeastern State University College of Optometry Oculomotor Testの略語で、一般に「エヌスコ」と呼ばれています。

NSUCOの詳細は以下の通りです。

NSUCOでは被験者の眼前40cm程度の位置
に、20cm程度離れた直径1cm程度の青と赤の二つの指標を呈示して行う。

『視機能検査に用いる重心動揺計測システムの開発』



とあります。
要約すると固視と追従性眼球運動(SPEM)と跳躍性眼球運動(SEMS)を観察し、評価します。

<具体的には>

・固視

1つの視標を10秒見るとあります。

・SPEM

動く一つの視標を顔を動かさずに目だけで追尾する。視標は直径約20cmの円を描く様に時計回り、反時計回りの計2回動く、とあります。

・SEMS

左右に一つずつ配置されている視標を、顔を動かさずに交互に視認する。見る視標は検査者が指示をする、とあります。

<評価方法>

SPEMとSEMSにはそれぞれ3項目あり
1.Ability
2.Accuaracy
3.Body & Head Movement
で判定します。

<発達障害児への応用研究>

北海道特別支援教育研究第12巻1号 2018

『眼球運動の定量的評価』



によると

広汎性発達障害(PDD)児では固視は比較的出来ているが、SEMSとSPEMが未熟であり、それを頭の動きで代償していた。

『眼球運動の定量的評価』

との事でした。
また、同じ文献で

ADHD児では固視、SEMS、SPEMの全てが未熟であり、PDD児と違い頭の動きでの代償もできていなかった。

『眼球運動の定量的評価』

とあります。

上記論文より引用
A児は健常発達児
B児はPDD児
C児はADHD児


<ぼくなりの疑問点>

そもそも、

NSUCOの評価基準は検者の目視に拠る所が大きく、明確な判定基準が曖昧であると感じました。

だって視標を動かすスピードや特にSEMSでは移動させる距離が不明確ですもん。
また、先述のAbility、Accuaracy、Body & Head Movementではそれぞれ1点~5点で判定していますが、かなり主観的な判断に思えます。細かな採点基準は下記の図を参照して頂きたいのですが、出来たか出来なかったか、どの程度の誤差があったか等から構成されており客観的評価が難しいです。

NSUCOの評価基準


今回の論文ではその問題点を考慮し、アイトラッカーとパワポを用いて評価していますが、あくまで研究用の条件整備であり、臨床上では不可能に近いです。その問題をクリアすべく検査視標の開発も行われている様ですが、果たしていつ一般に普及するのでしょうか…

『眼球運動検査・トレーニングのための検査指標の開発』福森 聡, 喜多 亮介, 青柳 西蔵, 山本 倫也, 北出 勝也

ヒューマンインターフェース学会 2022.24巻2号2022


<今回のまとめ>

この様にビジョントレーニングの中でも眼科的な領域に大きく踏み込んでいるNSUCOですが、

検者のスキルに大きく依存しています。

検査条件を整えた環境下では発達障害児には特徴的なパターンが出る事が示唆されていますが、その研究結果をどう活かすか…ぼくなりに考えてみると

トレーニングと言うよりもスクリーニングに使えないかなと思いました。

トレーニングとして使うにはまだまだエビデンスに乏しいという印象です。
眼科外来で発達障害が疑わしい子どもが来院された場合、NSUCOは手持ちの固視目標を使って行える点は利点となるのでスクリーニング的に活用し、その他の検査の補助にするという方針が妥当ではないかと感じました。

今回もビジョントレーニングと眼科の関連話が終わりません😭
次こそは決着を付けますので、是非またお付き合い下さいませ🙇‍♂️
ではまた👻

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