日本のメディアに触れられないクリミアの先住民「クリミアタタール人」について

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前回の続き。今回はクリミア半島の先住民クリミアタタール人についてです。

クリミアタタール人とは

クリミアタタール人とは、13世紀〜18世紀にまたがり、クリミア半島を中心に南ロシアを支配していた「クリミア・ハン国」を起源に持つ、テュルク系民族です。言語は主にテュルク系言語のクリミアタタール語（他はロシア語、ウクライナ語、トルコ語など）を話します。宗教はイスラム教スンニ派が大半を占めます。

15世紀にオスマン・トルコ帝国の従属国になり、オスマン・トルコ帝国の保護の下で勢力を拡大しました。重要な産業としては、ウクライナ人奴隷をオスマン・トルコ帝国へ売るという、奴隷貿易であり、奴隷を確保するために、北部のリトアニア大公国、ポーランド王国への襲撃を繰り返していました。

クリミアタタール人の住民は、北部は古くからの遊牧民が中心となったが、クリミア半島南部では、園芸、菜園、手工業、牧羊などで生活を営んでいました。

しかし、18世紀末の露土戦争で敗れたことで、クリミア・ハン国はオスマン・トルコ帝国の保護から切り離され、ロシアの支配下に置かれることになりました。クリミア・ハン国の有力者はオスマン・トルコ帝国へ亡命し、クリミア半島には多くのウクライナ人を始めとする移民が押し寄せたため、クリミアにおける少数派となります。

クリミアタタール人追放

その後のクリミアタタール人は、ロシア革命に乗じて、「クリミア人民共和国」の設立が発表されるが、ソビエト連邦政府がこの動きを阻止。人民共和国は解散となり、クリミア自治ソビエト社会主義共和国を設立させます。

その後に、第二次世界大戦が発生し、ソ連とドイツの間で、1941〜1942年、1944年にクリミア半島で戦争が発生します。多くのクリミアタタール人は、赤軍に参加させられたが、1944年にヨシフ・スターリンにナチスドイツへの協力の嫌疑をかけられ、クリミア半島に済む約20万人のクリミアタタール人が、中央アジアやシベリアに強制移住させられる「クリミアタタール人追放」措置を取られることになります。

この強制移住により、1万人以上のクリミアタタール人の命が断たれたと言われています。スターリンの死後にクリミアタタール人の強制移住の措置は解かれたものの、この追放措置は「ジェノサイド」として広く記憶されています。

ジャマラの「1944」

ちなみにクリミアタタール人の歌手ジャマラが、ウクライナ代表として出場した2016年のユーロヴィジョンで、クリミアタタール人追放についての曲「1944」を歌い、見事ユーロヴィジョン優勝を飾っています。

スターリンによって行われた「クリミアタタール人追放」について、そしてクリミアからキルギスへ強制移住させられる道中で、彼女の曾祖母の娘を失ったことを歌いました。

しかし、この曲を歌う際に、ロシア側からは「ユーロヴィジョンは政治的なテーマを歌ってはいけないルールがある」という反発の声が上がっており、ロシアの下院議員から「大半のウクライナ人は電力費を支払えず、ユーロビジョンを（テレビで）見ることもできないだろう」と侮辱的な発言も行っていました。

併合後に迫害を受けるクリミアタタール人

ユーロヴィジョンで優勝を果たしたクリミアタタール人の歌手ジャマラは、2014年のクリミア半島のロシア併合後は、故郷のクリミア半島には戻れずにいます。現在はキーウ（キエフ）で活動しています。

ロシアによるクリミア侵略後は、クリミアタタール人の多くはロシア国籍を取得し、500人がウクライナ国籍を選択することになりましたが、ロシア国籍を取得しなかったクリミアタタール人は迫害を受けることになり、宗教系文学作品が「過激思想」とされ、禁じられる出来事も発生しております。

また2015年3月には、クリミアタタール系のテレビ局の認可が取り消される出来事も発生しており、ウクライナが統治していた頃よりも状況が悪化しています。

実際、ウクライナが実効支配をしている地域へ疎開するクリミアタタール人も多く、人権擁護団体のアムネスティ・インターナショナルによると、ロシアの実質支配下にあるクリミア半島で、クリミアタタール人は迫害が増していると警告を発しています。