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『ひねもの』
マスク越しにも咽せかえるほど
栗の花の匂いに嫌気がさして
わたしは来る夕立を
遠目にひとり箱の中
まばらなパンチカードの穴の淵
そこに腰掛け古物商と対話をしている
されどペテンにはかかるまい
…
いくばくか話がすすみ黙っていると
向かいの穴からザラザラとこちらへ
問いかけてくる声がする
「この曇り空、おいくらでしょうか」
…
それがあまりにも可笑しくて
ついぞ咽せてはマスクを外してしまい
商人にわたしの顔が割れてからは
ひねもの達の仲間入りとなったわけだ
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