思いやりの示し方

MBTI(Myers–Briggs Type Indicator、マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)。これは簡単に言えば16タイプに人間を分け、その違いを提示し相互理解に役立てることを目的としたものである。形式的には自己申告型のアンケートに過ぎないが、これは単なる占いや心理テストではない。心理学者のユングが出版した著書『心理学的類型』に基づいて、キャサリン・クック・ブリッグスと娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズによって完成させられた、「自分の心の意識化を促進するためのメソッド」である。

さて、MBTIの簡単な説明はこの辺にして。

思いやりと言うとどうしても「寄り添って」とか「一緒に」とか「譲って」といったような言葉の数々が想像されるが、実際はそれだけではないのが事実だ。「そっとしておいてあげること」「叱咤激励すること」「発言に関心を持つこと」「よりよい環境を整えること」「新しい視点を見つけること」……などなど、人によりその示し方は千差万別である。そして時に人は、「どうして自分は思いやってもらえないのだろうか」と考えたりする。自分の欲しい「思いやり」がもらえない時、人は尊重されていないと感じるのである。

実を言うと私は長い間、傲慢にも身近な人から尊重されていないと思ってきた。どんなに与えられても、「違う、そうじゃない」と思い続けてきた。例えば私に対し、父親は常に論理的であるよう指導してきた。何を手に入れるためにはどういったプロセスが必要なのか詳細に説明し、何にでも目的意識を持つように教えてきた。一方母親は、私がひとりぼっちにならないように、自分の友達の子供を遊び相手として連れてきたり、積極的に紹介することで、子供に自分と同じようなコミュニティを与えることに尽力してきた。
しかし私が欲しかったのはそのどれでもなかったのだ。論理や詳細な説明は正直どうでもよかったし、豊富な人脈も必要ない。私が欲しかったのは、「二人が夫婦喧嘩をしないこと」、そして「私の考えや秘めている優しさについて理解してくれること」であった。

なぜこうしたすれ違いが生まれていたのか?これは長年、私の中で疑問であった。しかしMBTIは、この難問を解決に導く手助けをしてくれたのだ。今回の場合、後にわかったことだが父はISTJで母はESFP、私はINFJであった。ISTJは状況を分析し、詳しく説明することで人を尊重する。一方ESFPは現在の活動や話題に招き入れることで人を尊重する。そしてINFJは他者を支援するためのアイデアが認められる時などに尊重されていると感じやすい。これは全くもって他タイプの二人の尊重方法と噛み合わないのである。ならば、尊重されていないように感じるのは無理もない。

しかし、私が受けてきた扱いは、紛うことなき彼らなりの尊重(思いやり)だったのである。それに気づくことで、私は充分に尊重されて生きてきたことを理解できた。そして傲慢を感謝に変えることが出来るようになってきた。これは私の長年の問題――一方的な孤独感――が、少し解決した瞬間であったように思う。

ここで示したように、人間はそれぞれ、持っている「思いやりの示し方」が異なっているのである。私の場合、それを教えてくれたのがMBTIだった。もちろんMBTIが全てではないが、MBTIがより多くの「思いやりの示し方」を教えてくれたことで、世界は優しさに満ちていると捉えられるようになった。
私はMBTIを作り出したユングやマイヤーズ親子に心から感謝している。もし人間関係で悩んでいる人がいたら、ぜひMBTIを役立てて頂きたく思う。もちろんこのタイプ論が人間の全てを語れるわけではない。それでも、他者との関係を考える際のちょっとした助けとなれば幸いに思う。

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