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ひとくち日記2023.9.21-22

 書きたいことが多すぎて書くことを随分サボってしまった。いけない。

 七時過ぎに起床。朝食を摂りながら『らんまん』を観る。神木隆之介と浜辺美波に老人役は無理があるだろうと思う。それから神田の火消しが「ひけし」と言っていて、「江戸の火消しが"ひけし"なんて言うか?」と思ったのだけど、昨日観た『福田村事件』ではちゃんと「しつけ(火付け)」と言っていて、流石に映画はドラマほどあまちゃんではないと思う。

 祖父母は八時過ぎには鷹の観察へ出掛けた。雨降りなら見合わせるということだったが、結果や如何に。

 昨日のうちに会ってくれる人々が決まったのだけど、何時に、何処で、ということが不確定なまま朝を迎えてしまった。discordで朝から場所決めなどを試みるが、起きていたのは白濱さんだけだった。とりあえず、十一時前に家を出た。
 十一時過ぎに最寄駅に到着。ここで匿名潟さんが起床した模様。新宿へ向かう。
 正午丁度に新宿駅に着いた。ここで庶民くんが目覚める。各人これよりの集合である。

 織沢が新宿駅をまともに降りたのは今回が初めて。駅前に現れた新宿アルタに「ここで『いいとも!』を放送していたのか」という深い感慨があった。隣には新宿ネコの名で知られる3Dに見える街頭液晶。インターネットで見るよりも随分小さい。

 人を待つのに喫茶店にでも入ろうかと思ったけれど、紀伊國屋書店の新宿本店に行ったことがないので、行ってみることにした。

 その充実ぶりに感動すると共に、現在勤めている店の貧弱ぶりに悲しくなってしまった。規模としては織沢の勤めている店の方が大きいはずなのに、なんだこの差は!

 午後二時前ころ、ようやく庶民くんが到着。続けて白濱さんも来られた。二時間も紀伊國屋で頑張ったのだ。庶民くんに柴田勝家の『ヒト夜の永い夢』を、白濱さんに河野多惠子の『赤い脣・黒い髪』を差し上げる。お土産ですね。
 庶民くんが来る直前、海外文学の棚でパステルナークの『ドクトル・ジバゴ』の大きな本を開いていたら、後ろから白人の女性が迫って来た。私が脇に退くと、群像社ライブラリーの本が並べられた辺りを物色している。私より余程背が高い金髪の女性は、ロシア出身なのだろうか。
 『ドクトル・ジバゴ』を棚に戻し、イギリス文学の棚に後退。ヒラリー・マンテルの著作を手に取ろうかと思っていると、その女性は棚から去って行った。どんな本を見ていたのか、ヘンリー八世の肖像がデザインされた本を棚に戻して、再びロシア文学の棚へ行く。群像社ライブラリーの並びには隙間があり、何か抜き取られた(万引きということではない)形跡がある。ツルゲーネフを見ていたのかしら。

 匿名潟さんが紀伊國屋に着くまで、庶民くん、白濱さんと本屋を回る。
 ホセ・ドノソの『閉ざされた扉』という全短篇を収めた本が出たばかりで、流石は紀伊國屋だけあって高々と積み上げられている。
 りうりくんがこれを買うつもりという話をしていたので、先に買っておこうかと思うが、止めておく。

 匿名潟さんと合流。太田省吾の演劇論風のエッセイ集を買う。匿名潟さんには、辻原登の『枯葉の中の青い炎』を進呈した。一路、中野ブロードウェイへ。

 中野ブロードウェイでは、黒田硫黄『大日本天狗党絵詞』の一と三巻(二巻は売ってなかった……)いがらしみきお『I(アイ)』の二巻(一と三巻は持っている)谷岡ヤスジ『ヤスジのメッタメタガキ道講座』唐十郎『海星・河童』別役実『マッチ売りの少女/象』井上ひさし『藪原検校』杉浦茂『杉浦茂マンガ館』全五巻を買う。買いすぎである。
 配送サービスが有料ながら使えるとのことなので、全て送って貰う。

 買い物が済んだところに、りうりくんが合流。井上ひさしの『國語元年』を渡す。どこかで夕食を摂ることになる。ラーメン屋という話も出たが、私が「ラーメンは食べ物じゃなくて文化でしょ」と言って嫌がったので(そもそもラーメン屋では、ゆっくり話せないから)鳥貴族へ。

 居酒屋でどんな話をしたのか、余り覚えていない。軟骨の唐揚げとキャベツが人気だった。チキン南蛮を未知の食べ物のように見る庶民くんが可笑しかったような気がする。

 会計を済ませ、ノリで中野から新宿まで歩くことになった。「夜の新宿裏通り〜」と小さく囁きながら歩く。中野の街中にラーメン屋を見つける度、りうりくんが「あ、文化のラーメン屋だ」と言っていた。気に入ってくれたみたい。
 中野と新宿のちょうど真ん中辺りか、電車の沿線に児童館があり、その前庭が公園になっていた。ブランコで遊ぶ。楽しい。酔いが余計にまわった人もいたみたい。庶民くんが突然ズボンを脱ぎ出し、ベンチに寝ていた。
 白濱さんと匿名潟さんが結婚か男女の交際について話していたような気がする。
 私はりうりくんと話していた。何を話していたっけ? 思い出せない。

 庶民くんが中野ブロードウェイで買った土田世紀『編集王』全巻セットを人に持ってもらおうとしているところを叱咤して持って帰らせた。物凄く重い荷物で、時には椅子になった。

 新宿近辺に着くが、駅が見当たらない。グルグル回って、トー横を見物した。小雨が降っていたので、人は疎ら。警察も警戒している。それでも広場の隅には飲酒しすぎたらしい若者が倒れていた。強烈な臭いと攻撃的な群衆を逃れて駅へ向かう。駅に着いた段階で白濱さんと別れた。残った四人は庶民邸へ。

 庶民邸の最寄駅にあるコンビニで、りうりくんと食料と酒を買い込む。

 庶民邸でひと寛ぎしていると、discordに古義人くんがいるので、通話を繋げる。
 匿名潟さんが古義人くんに恋バナを振って、古義人くんは「ゴッホより普通にラッセンが好き」と「ラッセンより普通にゴッホが良いだろ」という会話をした、という話をしていた。
 匿名潟さんは核心的な愛の営み(セックスということではない)について聞きたいが、古義人くんは話したくない──話すべきではないという対立があった。話したくないなりに、詳らかにしていたと思うのだけど。

 深夜(というか早朝)、みんなでマクドナルドへ出掛けて、ハンバーガーを買った。道中、国書刊行会の社屋を見る。普通の建物である。レンガ本のメッカなのだからゴシック建築のゴテゴテした感じかと思ったのだけど。

 ベッドに私と匿名潟さん、床に布団を敷いて庶民くんとりうりくんが入り、就寝。朝方、りうりくんは大学へ出掛けて行った。

織沢は、こういうツイートをしていた。

 昼頃、三人目覚める。近くのスーパー銭湯へ行く。昨日は散々動いて汗をかいたのにシャワーを浴びられなかったので、お昼の温泉は最高だった。脱衣所で匿名潟さんが家の鍵を失くしたかも、と言う。庶民邸にあるだろうと信じる。

 銭湯を出て、すぐ近くのブックオフへ。ちくま文庫版の『ドン・キホーテ』が全巻売られていたので、買う。また買ってら。

 昨晩から散々、「文化としてのラーメン」を馬鹿にしていたので、近くにそういう店があるということで、並んだ。三十分ほど店の前で待たされ、温泉で最高になっていた気分は、最悪になった。ラーメンは美味しかったが、やはりあれは文化ですね。

魚介薫るラーメン、美味しかった。

 帰路、脇を通る車の窓から何かが落ちた。慌てて車の傍へ駆け寄ると黄色い帽子が落ちている。拾って車内の子供に渡した。

 庶民邸に帰り着く。匿名潟さんの家の鍵は見つからない。方々に電話すれども手掛かりなし。これを激鬱という。

 私は神保町へ行くことにして、庶民邸に二人を残して出掛けた。
 一軒目を覗き、二軒目に移ろうとした段階で雨が強く降り始め、したたか濡れる。慌ててコンビニへ走り、現金を卸して傘とビニール袋を買った。
 神保町では、唐十郎『腰巻お仙』清水邦夫『わが魂は輝く水なり』『署名人/ぼくらは生まれ変わった木の葉のように/楽屋』花田清輝『ものみな歌でおわる/爆裂弾記』谷岡ヤスジ『ヤスジのアニマルどー!!』を買った。

神保町とブックオフでの成果

 匿名潟さんの鍵は結局見つからなかったようである。

 夕方、祖父母宅へ帰宅。
 夕餉に、金目鯛の煮付けと栗ご飯を頂く。濃い味付けになってしまったと祖母は零していたけれど、充分美味しかった。

 食卓の片づけの際、祖母が「一日中この曲が頭から離れなくて」と言って、CDをコンポに入れた。桑田佳祐の「若い広場」という曲が流れた。ここ一年近く、スマホで音楽を聴いていたので、ちゃんとしたスピーカーで聴く音楽は本当に良いなと思った。
 夜の涼やかな風が抜ける室内のソファに寝転び、音楽を聴く。なんて幸せなんだろうと思った。

(九月二十二日に書きかけていた日記を、十一月三十日に補筆した)

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