【全史】第19章 稲尾退任と落合放出/1986(昭和61)年
(1)熾烈な外野争い
稲尾監督はキャンプインを前に、レギュラー争いが激化しそうな外野陣に言及した。
「実力第一主義でいくがウチの外野陣は駒が豊富で、レギュラーを決める前に誰を一軍に残すかで頭を悩ますよ」。
まさに、嬉しい悲鳴だ。
前年までの実績ならば、レフト・有藤、センター・高沢、そして、前年ルーキーながら3割を記録したライト・横田という布陣になるだろう。しかし、有藤は今シーズン40歳。自身も「代打でも」という気持ちでいる。稲尾監督も「ウチは実力主義。それは有藤も例外ではない」と明言する。前年、その有藤の守備固めとして出場したのが野手転向3年目となる愛甲と2年目の岡部だ。愛甲は守備固め中心の起用だったが、終盤には打席に立つ機会が増え、徐々にタイミングも合い、63打席ながら3割を超えた。岡部はルーキーイヤーだった前年は最終盤で登録され、14打席ながら12打数7安打.583、2本塁打と今シーズンに期待を抱かせる内容だった。庄司、芦岡のベテラン勢も地力はあるだけにこのままで終わらない。この争いにルーキーが参入する。東都大学リーグで15本塁打を放ったスラッガー・古川がドラフト4位で入団した。長打力は大きな武器になりそうだ。
そこに山本功も加わる。腰の状態が今一つの落合が、守備の負担を軽くするためファーストに回るために山本功も外野に回ることになった。外野陣は有藤、山本功、高沢、横田、庄司、芦岡、愛甲、岡部、古川と9人で3つのポジションを争う。
内野陣ではファースト・落合、セカンド・西村、ショート・水上と強固だが、サードが空くことになった。9年目の佐藤健が第一候補だが、稲尾監督は有藤をサードに再コンバートすることもほのめかしている。また、落合の腰の状態が回復すればサードに戻し、山本功、愛甲をファーストに回すことも考えていた。
課題の投手陣は、先発は村田の復活により村田、仁科、水谷に深沢と石川が復活を期す。この先発陣で固定出来れば、荘がリリーフに回る。そのリリーフには梅沢、右田、西井、佐藤政が控える。4年目の井辺、前年一軍初登板を果たした5年目の田子、前年ルーキーながら2勝3敗4Sの小川、即戦力ルーキーの園川、伊藤ら期待の若手も増え、ベテランと若手の融合が期待された。
開幕は4月4日、本拠地川崎での阪急戦だった。今シーズンからパ・リーグはファンサービスの一環として「開幕投手の予告先発」を発表。オリオンズは仁科と発表された。しかし、4日は中止。翌5日は改めて水谷と発表したが再び中止。結局、6日が開幕戦となり、4年ぶり9回目となる村田が開幕戦先発マウンドに上がった。
キャンプ、紅白戦、オープン戦と熾烈を極めた開幕スタメン争いは、好調だった愛甲が6番ライトで開幕スタメンに名前を連ねた。レフトには山本功、センターには横田、有藤はサードに入った。
開幕戦のマウンドに上がる村田は、前年まで173勝で球団記録の荒巻淳に並んでいる。1つ勝てばオリオンズ投手陣の歴史の頂点に立つ。そして、今シーズンは達成が難しいが200勝も見えてくる。
村田と山田の投げ合いとなった開幕戦。村田は1回表の立ち上がりに失点したが2回以降は阪急打線を封じる。しかし7回表に1点の追加点を許すと8回表には3点を失い降板。その裏、落合に1号2ランが飛び出したものの、2-6で黒星発進となった。
(2)開幕ダッシュに失敗しBクラス低迷
開幕戦に黒星を喫したオリオンズ。続く8日からの近鉄2連戦(日生)は1敗1分、12日からの日本ハム2連戦(後楽園)を連敗と今シーズン初白星が遠い。15日の近鉄3回戦(平和台)でようやく白星。1回裏に4点、2回裏に2点を奪いリード。先発荘が7回まで4点を失いながらも9-4とリード。しかし8回表に3点を失い、リリーフの小川、水谷も打たれて9-8と追い上げられるも、土屋が最後を締めて辛くも逃げ切り今シーズン初勝利。17日の近鉄5回戦も仁科-土屋のリレーで6-3で勝利。ようやく4カード目で勝ち越す。
この後、2連勝した後4連敗して4月を終える。4勝10敗1分、借金6で南海と同率で最下位に沈んだ。そして、4月は開幕2連戦をはじめ8試合が中止となった。
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