見出し画像

第23章 カネやん復活/1990(平成2)年

(1)カネやん「走れ、走れ」が復活

 カネやんが12年ぶりに監督復帰し、早々にトレードを仕掛けた。前年の11月17日、水上、高沢と広島の高橋慶彦内野手、白武佳久投手、杉本征使投手とトレードが成立したと発表した。前々年の首位打者高沢とベテランの域に達した水上と主力2人の放出には驚いたが、前年、遊撃は佐藤健が.297/11本塁打と結果を出しており、広島でくすぶっている高橋を外野で再生させ、投手力の補強というカネやんの意向からだった。カネやんは「西村と高橋で100盗塁。2人で盗塁王を争って欲しい」と期待を寄せた。
 また、荘、ディアズに続く3人目の外国人選手としてデビッド・ヘンゲル外野手を獲得。荘のローテーションの合間に登録する形を取っていくことを決めた。

 「練習についていけない選手は、投球も打撃もさせない。守備練習も参加させない」。
 カネやん一時政権での「走れ、走れ」は伝説として残っている。12年が経過していたが、このカネやんの言葉に選手たちは戦々恐々としていた。そして、合同自主トレが始まると、選手たちはカネやんトレーニングの洗礼を受ける。初日からサーキットトレーニングを終えると30分間のランニングが待っていた。

 鹿児島キャンプに入ると、メニューは前年までと激変した。8時に散歩が始まるが、カネやん式の散歩は競歩並み。球場の隣にある陸上競技場まで歩き、芝生の上を約30分歩くことから始まる。そして、メニューは約1時間のランニングの後、入念なウオーミングアップから入った。有藤前監督も厳しさはあったが、実戦メニューにも重きをおいていただけに、その基礎トレーニングのハードさに選手から悲鳴が上がった。ただ、一次政権時に現役だった榊バッテリーコーチは「我々の時はもっとハードだった。監督も随分優しくなった」と苦笑した。

 ところが、キャンプ中盤にカネやんの構想が崩れるハプニングが発生する。高橋には「一番レフト」を想定していたが、足太ももを痛め「外野は難しい」と金田監督に内野再転向を直訴した。オープン戦で三塁に入ったが安定感を欠き、結局、ショートに入ることになった。内野はファースト・愛甲、セカンド・上川、サード・2年目の初芝、ショート・左藤健という構想だったが、佐藤健と高橋が重なることになった。高橋の起用については、シーズンに入ってもカネやんの頭を悩ませることになった。

 カネやんも「現有戦力の強化」と話す投手陣では前年勝ち頭の牛島と40歳の村田が軸になる。「荘は間隔を空けて使えば負けない投手になる。小川はもう一度速球に磨きをかける」。
 先発は村田、牛島、園川、荘に前年3勝に終わった小川の復調、2年目の前田が入ることになる。中継ぎ、抑えには3年目の伊良部、移籍の白武を配する。
 しかし、軸にと期待された荘が右肩痛を発症し、ペースが遅れる。結局、開幕に間に合わない事態となった。
 明るい話題はルーキーの小宮山だった。オープン戦で先発のメドが立ち、オープン戦で活躍したルーキーが選ばれる「ルーキー大賞」に選ばれた。

 また、来シーズンからのオリオンズの移転が決定的と思われていた千葉県千葉市の新球場「千葉マリンスタジアム」が3月に完成し、3月24日には、こけら落しとして読売主催のオープン戦として、読売対オリオンズ戦が行われた。

 不安要素と期待要素が入り混じる中で迎えた開幕戦は西宮での阪急戦。7日の開幕戦が中止となり、翌8日が開幕となった。先発はスライドして13度目の開幕投手となる村田がマウンドに上がった。開幕スタメンの内野陣は1番ショート高橋、2番セカンド佐藤健、7番サードで初開幕スタメンの初芝が名前を連ねた。また、右肩痛の荘が登録を外れ、ヘンゲルが5番ライトに入った。
 試合は村田が好投。打線も佐藤健、愛甲に1号が飛び出し、9回まで4-0とリード。9回裏に1点を失ったものの、村田が完投し4-1で勝利。白星発進となった。40代開幕投手の勝利は49年の若林忠志(初代オリオンズ監督、記録時は阪神)以来41年ぶりの快挙となった。
 続く10日からの日本ハム3連戦(東京ドーム)を1勝2敗と負け越すと、近鉄2連戦(川崎)、西武3連戦(西武)と雨に祟られ、ともに1試合ずつとなる。しかし、15日の近鉄1回戦を村田が3失点完投で5-3と勝利すると、19日の西武1回戦は小宮山がプロ初先発。4回途中3失点で降板するも2番手白武が好投。打線が逆転に成功し、10ー7で勝利し白武が移籍後初勝利を飾り連勝、開幕から4勝2敗とまずまずのスタートを切った。

(2)若手投手に活路、村田緊急抑えに

カネやんは若手投手を起用。2年目の前田も力投

 開幕から好投を見せたのは不惑の村田だった。開幕戦を1失点完投、2試合目は8回二死コールドながら3失点完投、3試合目は5回2/3を4失点ながら勝利と開幕から3連勝していた。
 4試合目の先発は30日の西武3回戦(川崎)。チームは7勝3敗と好調な出足。オリオンズは3位ながら首位を走る西武とは1.5ゲーム差で、この試合が首位攻防戦となった。スタンドは1年ぶりの大入り満員30,000人を集めた。
 しかし、この日の村田は2回に2点の先行を許すと、4回にも追加点を許してKО。その後も4投手が打ち込まれ、今シーズン初の2ケタ失点となる3-16で大敗した。

ここから先は

11,509字 / 5画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?