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“歩けない僕”と“見えない私”の交換日記①by大内秀之

パラクライミング世界選手権“視覚障害”クラスで4連覇のレジェンド・小林幸一郎さんと、“車いす”クラス銀メダリストのルーキー・大内秀之さんが、クライミングへの思いを語り合うため、交換日記を始めました。

最初のビデオレターは、ルーキー・大内さんからスタートです。


▼一緒に、この国をひっくり返せたら

3月のパラクライミング日本選手権、お疲れ様でした。思えば2017年のパラクライミング日本選手権に出場してからもう4年たちました。小林さんと出会って、小林さんから、大会に出てみないか、と言われて、 日本選手権に出たことをきっかけに、僕の人生は大きく変わりました。

今まで、車いすバスケットボールしかしていなかったのに、パラクライミングという競技をやることによって、体も強くなりましたし、全ての活動は自己責任であるという覚悟みたいなものを、この競技を通して経験することができました。僕にとっての財産になっています。

小林さんと出会ったころは、小林さんは世界選手権を2連覇していたときでした。2018年のオーストラリア・インスブルク、2019年のフランス・ブリアンソン、小林さんが世界1位の座を獲得するところを、実際に生で見させてもらって、かっこいいな、やばいな、すげーなって、小っちゃい子が仮面ライダーに憧れるような感覚です。そういった偉大なプレーヤーと一緒に、同時期にパラクライミングという競技をできることを、誇らしく思っています。今度のロシアの大会にも一緒に出れることを嬉しく思っています。

NPO法人モンキーマジックを15年以上、小林さんは運営活動されていて、僕は、一般社団法人フォースタートを設立して、2年半もうすぐ3年になるんですけれども、未だに迷ったり、壁にぶつかったり、頭の中がフォースタートのことでいっぱいで、全然どうやっていったらいいのかなと迷いながら、法人運営しています。

そんなときに思い出すのが、小林さんが15年前、“視覚障害者の人たちにクライミングを”という大儀を胸に抱き、活動されていたときは、もっと苦しかったんかな、もっと悩んではったのかなと。それが僕の励みになっています。

まだまだ僕は未熟者やし、小林さんの足下にも全然及んでいないという風に思っているのですけれども、これから作り上げていく、紡いでいく歴史に、少しでも携わることができれば、僕も微力ながら、微力の微力の微力ですけれども、小林さんと一緒に、このパラクライミングを盛り上げていきたいなと思っております。

コンペのときとか、日本選手権のときとかも、ゆっくりお話できなかったですね。今まで小林さんと一番しゃべったんは、フランスのブリアンソンの帰りの飛行機の中かな。小林さん、めっちゃ風邪をひいていたけれど、隣でめっちゃ顔近く、めっちゃしゃべった記憶があって、小林さんと一緒に、この国をひっくり返せたら面白いだろうなという風にめちゃくちゃ思っていました。

メダル持ち帰る2人.改
2019年、世界選手権フランス大会でメダルを持ち帰る2人

僕は幼稚な頭やし、頭悪いし、要領も悪いし、小林さんほど人望も無いし、人気もないし、あるのは、ようしゃべる口と、人よりちょっと長い腕かなくらいに思っていますが、この口と腕が役に立つことがあれば、いつでも言ってください。一緒に世の中を良くしていきましょう。

まだ小林さんと飲んだことはないっすよね、一緒に。僕、めちゃくちゃ弱いですけれど、小林さんといつかお酒を酌み交わせることを楽しみにしております。体には気をつけてください。

“歩けない”大内さんと、“見えない”小林さん

▼大内秀之さん

  • 兵庫県出身

  • 生まれながら脊髄にガンを抱える

  • ガンは摘出するも、腹筋から下にまひが残り、車いす生活に

  • 13歳、車いすバスケを始める

  • 大学で社会福祉士の資格を取得

  • 現在、大阪府堺市立健康福祉プラザに勤務

  • 36歳、小林と出会い、クライミングを始める

  • 38歳、一般社団法人フォースタート設立。車いすバスケチーム「SAKAIsuns(サカイスンズ)」を運営

  • 2018年パラクライミング世界選手権インスブルク大会(オーストリア)AL1(車いす)クラス初出場

  • 2019年ブリアンソン大会(フランス)AL1クラス準優勝

▼小林幸一郎さん

  • 東京都出身

  • 16歳でフリークライミングと出会う

  • 大学卒業後、アウトドアインストラクターとして活躍

  • 28歳、「網膜色素変性症」が発覚。将来失明すると宣告される

  • 34歳、米国の全盲登山家エリック・ヴァイエンマイヤーとの出会いから、障害者クライミング普及を目指す

  • 37歳、NPO法人「モンキーマジック」設立。同年、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ登頂

  • 2011年パラクライミング世界選手権イタリア大会(アルコ)視覚障害B2クラス優勝

  • 2012年フランス大会(パリ)B2クラス準優勝

  • 2014年スペイン大会(ヒフォン)B1クラス優勝

  • 2016年フランス大会(パリ)B1クラス優勝

  • 2018年オーストリア大会(インスブルク)B1クラス優勝

  • 2019年フランス大会(ブリアンソン)B1クラス優勝 4連覇

▼2人のやりとりは、以下の記事で一覧に↓

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