“隻腕”クライマーのパラクライミングTALK④
片腕のクライマー・大沼和彦が主催する、パラクライマーたちによるインスタライブ。日曜日の夜に不定期でゆる~く開催。悪ふざけだったり、パラクライミングへの熱い思いだったりが繰り広げられています。
今回は、海外渡航費をどう捻出するか、パラクライミングの認知度を高めるためにはどうしたらいいか、シビアな話が展開しました。
▼パラクライミングも金策を考えていかないと
大内秀之(AL1):アメリカ・ソルトレイクシティでのワールドカップがいちばん車いすクラス(AL1)が盛り上がりそう。4か国7選手そろう。オーストリア2、アメリカ3、日本は俺、あとよく分からないけど。AL1の選手がイタリアに2人いるけれど、ソルトレイクシティ大会には出てこない。
高野正(RP3):イタリアはお金がカツカツらしい。同じクラスにRP3がいるんだけれど「今回来るの?」て聞いたら「全部自腹になっちゃうから厳しい」って言っていた。
大内:海外の選手とコミュニケーション取っていると情報がいろいろ入ってくるよね。ヨーロッパでの大会は戦争の影響があるのかね。この間の世界選手権でロシア・モスクワ大会に行った人はロシアの人と触れ合ってるから、そこで起きていることに寄り添えるよね。
高野:ロシアにもパラの選手いるから、かわいそうだよね。
大内:今回、大会で海外に行けるから、そういう交流を大事にしたいな。いまはコロナ禍で観光で海外に行きにくい状況で、選手として行ける。日本人で日本代表になれる人なんて何人もいないんだから。そういうことも考えていきたいな。
大沼和彦(AU1):インスブルック大会の渡航費は自腹。地元の市役所に行って申請すると、国際大会だと奨励金が出る。その書類を出さないといけない。奨励金をいただくにあたって、今度、笠間市に表敬訪問に行くことになった。めちゃくちゃ緊張している。どんなことを聞かれるのかシミュレーションをしている。
高野:俺の地元でも調べてみたら、パラリンピックもしくはパラリンピックの団体に属していないと奨励金は発生しないってなっていた。
大沼:パラクライミングは確かパラリンピックの団体に入っていないらしいですよね。地元の笠間市は国際大会でも奨励金が出る。ワールドカップよりそっちの方が緊張している(笑)
高野:クラウドファンディングは考えてる?
大沼:自分は考えてないですね。日本パラクライミング協会は今回、クラウドファンディングは考えてないですよね。
高野:あのときは八王子で世界選手権開催の予定だったからけっこう動いてくれた。
大沼:少しでも補助してくれるのはすごく助かる。大内さんはクラウドファンディング始めましたね。ワールドカップ3大会すべて出ますからね。出れるなら出たいですよね。
高野:俺だったら仕事クビになるね(笑)
大沼:大内さんのクラウドファンディングって支援した方がいいのかな? 同じパラクライマーとして支援したいが、大内さんはどう思うかな。喜んでくれるとは思うが自分たちもインスブルック大会の渡航費で大変な面があるのに気を遣わせちゃうのかな。
高野:逆にたかっちゃえばいいんじゃないの(笑)「社長お金ください」って。でも応援するだけでもいいんじゃない。俺は公務員っていう壁にぶつかる。個人では寄付を受けとれない。協会が寄付を集めて、それをもらうしかない。濱ノ上文哉くん(B2)も言っていたが、クラウドファンディングはそれに気を取られちゃって大変だって。
大内:1000円から支援できますので。
高野:なんと1000円で1万円のリターンがあるらしいですよ(笑)
大内:パラクライミングの金策も考えていかないと。1人のクライマーが目立っても仕方ないので。
大沼:スポンサーからは何か出る?
高野:マッドロックは商品を提供してくれる。
大沼:浅草クライミングの場合は、結果に応じて。商品提供。国際大会に出るときは、渡航費をいくらか援助しますよという感じだった。でもそんなに結果を出してないので、なかなか相談しづらい。
高野:商品提供だけでもだいぶ助かる。すごくありがたい。
大沼:今のシューズだと2万円くらいするし。高野さんの場合、数か月でボロボロになりそう。
高野:半年でダメになる。
大沼:岡田卓也さん(RP1)はアスリート採用だから、会社から調達するんですかね。どれくらいもらってるんだろう。
高野:それは気になるね。
大沼:あとでこっそり聞いてみよう(笑)。3大会まるまる参加しようと思うと、大内さんが集めようとしている額を集めないと。
高野:もう少しパラクライミングの地位が確立して、バックアップしてくれる企業が出てきたらいい。
▼みんな次の一手を取ることに一生懸命
大沼:もっとパラクライミングを盛り上げていかないと。
高野:そのためにはうちらががんばっていかないといけない。ちょっとずつでもパラクライミングのことを知ってもらいたい。あとはパラリンピック種目になれば、2028年ロサンゼルス大会で。
大沼:イベントを企画した方がいいのかな。大内さんとか小林幸一郎さん(B1)みたいな。健常の人でも 参加できるような。
高野:それを継続していかないと。
大沼:そうすると仕事も考えないと。
高野:モンキーマジックみたいな団体を立ち上げる。大沼くんだったら“アームズ”とか(笑)
大沼:ジムで片手で登っていると、周りのお客さんが声をかけてくれたり、一緒に片手でやってくれたり、それでこうしたらいいとか教えてくれたり。そういうところからちょっとずつ広がっていったら。
高野:俺はルートセットをしたい。自分のホームジムでは課題を作ることがある。パラクライミングを体験できるようなルートを作ってみたい。スポンサードしてくれているマッドロックに日本代表になったことを報告に行ったら、社長さんが、子どもたちに教えるイベントに参加してほしいという話があった。大内さんがやっているようにキャンパだけの大会だけじゃなくて、片手だけで登る大会とか、片足だけで登り大会とか。パラクライミングの課題をつくって、いろいろな人に経験してもらうことがいいのでは。
大内:選手も発掘していかないと。障害のない人に体験してもらうのも大切だけれど、それだけだとパラクライミングは衰退してしまう。高野くんのクラスも大変よね。ジムで登っていても、高野くんレベルの人がいるかもしれないけど見た目じゃ分かりにくい。俺とか大沼くんだと見た目で一発で分かるけど。でも、俺たちが続けていくことがいちばん。露出していくことが大事。
大沼:練習しているときに意識して使っている言葉は?
大内:“やるか・やらないか”やな。もちろん、やらないっていう選択肢も大事にするけど。ケガをしないようにやり過ぎないとか。でも本番やったらやっちゃう。
大沼:自分は“チャレンジ”。挑戦は意識してやってる。登れなさそうと思っていても、とりあえず登ってみる、とりあえずやる。
大内:大会終わったあとに、支えられる言葉は感謝かな。まだまだ未熟だから試合中は余裕がないけど、結果が伴わなかったときには感謝がすごく大事。
高野:俺は何考えて登ってるんだろう。考えておきます。
大内:俺ら日本代表だから、ファンからいつ何を聞かれるか分かんないからね。
大内:各クラスの見所を話していこうや。AL1は両腕だけで登るのでその姿が見所です。
高野:RP3クラスは、持久力もテクニックも健常者と変わらない登りなのでそこが見所。ただただ激強クライマーが集まってる。
大沼:AU1クラスは片手しか使えないので、次の一手を取れなかったらおしまい。一手一手、真剣につかみにいかないと落ちてしまうので、渾身の一手を出している。動きも大きくなるのでそこが見所。
大内:全員に共通して言えるのは、次の一手を取るのに一生懸命っていうことやな。単純だよね。どこに障害があるかというより、その前にクライマーだからね。一生懸命登っているところを見て欲しい。しんどいよな。がんばろう。
大沼:美味しいお酒が飲めるようにがんばります。アルコールって浄化してくれるんですよね。
大内:締まらんのう。
(了)
▼障害別クラス分けについてはこちらの記事を↓
▼“パラクライマー”大沼和彦【日曜日のインスタライブ】22年4/10
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