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濱ノ上文哉(M-B2) パラクライミングJC第2戦 2023年度

2024年3月に開催された2023年度パラクライミング「ジャパンシリーズ」第2戦。日本選手権を兼ね、日本代表を決める選考大会です。
3段階ある視覚障害クラスのうち、中等度のB2クラスで、金メダルを獲得した、濱ノ上文哉選手と、サイトガイドの矢崎有希さんへのヒーローインタビューです。

「答えが分からないまま出発して、あれこれやったが、結局、答え合わせができなかった」

――男子B2クラス、金メダル、おめでとうございます
予選と決勝のルートに対してどんな感想を?

濱ノ上:予選1本目は、あまり馴染みのないホールドで、渋い動きをさせられて、高度が思ったより稼げずに、落ちちゃった。
2本目は、矢崎さんとペアを組んで初めて、公式戦として完登という結果を残せたので良かった。

予選2本目でトップをつかむ濱ノ上選手。網膜色素変性症による強度の弱視

決勝の課題は、最終局面の動きが、アイソレーションの中でも、結局どうするんだ?っていう答えが分からないまま出発して、あれこれやったが、結局、答え合わせができないまま終わってしまった。そこが悔いが残る感じ。けれど、全体を通して、楽しく課題を登れたという印象です。

決勝課題、終盤の濱ノ上選手の登り

――矢崎さんは、濱ノ上選手の登りをどう見た?

矢崎:予選1本目に関しては、動きが固かった。自分が思っていたよりも下の高度で落ちたのもあって、かなりヒヤヒヤした。ただ、気持ちをしっかり切り替えて、2本目は生き生きした登りで完登してくれたので、予選は、かなりほっとして終えることができて良かったです。

濱ノ上選手にホールドの位置を伝える矢崎さん

――前回大会で自分のことのように悔しさを感じていたのが印象的だったが、その悔しさをいくらかでも晴らせた?

矢崎:前回大会のときに掲げた目標が、課題を完登することだったので、2本目で、少なくとも1つは完登に導くことができて、すごく嬉しいです。ただ、決勝課題のムーブを読み解く力がなくて、うまくガイドしてあげることができなかったので、ムーブが難しいときの解決方法みたいなのを、もう少し2人で鍛えていきたいなと思いました。

――毎回、新しいサイトガイドとやってきた濱ノ上選手が、2大会連続、矢崎さんとペアを組んだが?

濱ノ上:彼女自身も、大会の流れであったり、段取りであったり、朝ご飯に僕が何を食べたいのかとかまで理解してくれる。ご飯担当みたいな(笑)。生活面も含めて、すごくリズムが合ってきたかなという感じ。

――日本代表に選考されたが、次はどういうシーズンにしたい?

濱ノ上:まずは目前の3戦が予定されてるワールドカップ。今シーズンは、4つあった国際大会で、2つ優勝できた。今回はワールドカップ全戦優勝を目指していきたい。
今大会前から思っていたところではあるが、最終局面の登りの中で、そこまで丁寧に登れているのに、最後に力が出しきれずに落ちるみたいなところが、国際大会でも、国内大会でも多かった。スタミナの強化を3月まで、すごく意識してやってきた。でも今回、ムーブの引き出しの少なさや、不慣れなホールドに苦しめられた部分があったので、そういうところも克服しつつ、迷っても、押し切れるぐらいのスタミナをつけて、登りこんでいければいいなと、引き続き楽しくクライミングに向き合えたらなと思っています。

――世界の舞台で活躍していくために、普段の生活や、メンタルの調整にも意識を向けている?

濱ノ上:なるべく健康的に、変なもの食べないとか、よく睡眠を取るとか、わりと当たり前のことをやっているつもり。メンタルについては、まだまだ弱点になっているところはあるが、そもそもメンタルって何?メンタルが強いって何?みたいなところが、まだ自分の中でしっくり来る答えが見つかっていない感じなので、暫定的には、なるべく日常と変わらない状態。練習をたくさんすることが自信をつがるかなと思っているので、それを怠らないように、大会当日に、頑張って練習してきたなと言い切れるように、ふだんの練習を大事にしていこうという感じです。

――応援してくれる人たちにメッセージを

濱ノ上:会場のアクセスも悪い中、会社の人含め、プライベートの友人含め、多くの仲間に応援に来ていただいて、視覚障害クラスの場合、ガンバって言うのは本当はダメなんですけど、ついつい声が漏れて、ガンバって声もちょこちょこ聞こえてきた。そういう意味では、応援に来ていただいた皆さんに、多少なりとも、良い登りを感じてもらえたのかなと思うので、引き続き、さらに良い登りができるよう、頑張っていきたいと思うので、見守っていただければ、ありがたいなと思っています。

(了)

クラス分けについてはこちらの記事で解説↓

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