見出し画像

“歩けない僕”と“見えない私”の交換日記③by大内秀之

パラクライミング世界選手権“視覚障害”クラスで4連覇のレジェンド・小林幸一郎さんと、“車いす”クラス銀メダリストのルーキー・大内秀之さんが、クライミングへの思いを語り合うため、交換日記を始めました。

今回、大内は、未来の話が語ってくれました。


▼パラクライミングから いまのままやったら離れていってしまう

この前はビデオレターありがとうございました。改めて小林さんとの思い出の絵本というか小説というか、ページをめくり直すというか、思い返すというのがすごく嬉しくもあり恥ずかしくもあり、照れくさい部分もあるんですけれども。
前回のビデオレター、思い出が多かったんですけれども、ラリーなんで、僕が打って小林さんが返してくれて、今度は僕が打つラリーだと思うので、このターンは僕からの提案ですが、未来の話、小林さんと描く未来(大内バージョン)みたいな話をしたいと思います。

僕は小林さんと出会って、こんな未来が来るとは全く思っていなくて。
2017年の日本選手権、18年の日本選手権と世界選手権、19年の日本選手権と世界選手権、20年はコロナで飛んで、20年のジャパンシリーズ第1戦と、第2戦(日本選手権)と、一緒に大会に参加させていただいて、今回21年の日本代表が発表されて、新しく日本代表になる人もいるし、今回落ちてしまった人もいるし、カテゴリーが成立しなくて世界選手権すらないようなカテゴリーもある中で、 ふと思ったんですよね。そこで出会った車いすクライマーとかパラクライマーだとか、もうクライミングしていない人もいらっしゃったりするんですけれども、そういった人たちが寄り会う場所というのを探していけたらと思っています。

フランス大会出場者
2019年世界選手権フランス大会に出場した“車いす”クラスの選手たち

トップアスリートだったあなたへ、トップアスリートであるあなたへ、トップアスリートを支えるあなたへ、一緒に遊びましょ、みたいな企画をいま考えています。僕もいつか日本代表ではなくなるだろうし、日本1位でもなくなると思います。
このまま僕が日本一ではなくなって、日本代表じゃなくなって、どんどん年老いていって登れなくなったとき、僕はパラクライミングから、いまのままやったら必然的に離れていっちゃうのではないかと、僕は自分を客観的に見ていて思うんですけど、そんな未来を描きたくないので、どうしたらいいんだろうと考えたときに、やっぱり人と人とが交流する場所というのが大事だと思っていますが、どこにあるのかと考えてみると、どこにもなくて。何かそういったものを見つけていきたいなと思っています。

日本選手権であったり、ジャパンシリーズであったり、世界選手権に出た人たちと、なんか合宿みたいな感じのことをしたいなと思っています。
車いすクライマーは、この前の日本選手権で僕含めて4名だったんですけれども、誰一人失いたくないと思っています。年齢を理由に体力を理由に辞めていった車いすクライマーもいる中、そういった人たちが寄り会う場所も必要なのかなと。
ただ、強化合宿だと来ない人もいるんじゃないかと。じゃあクライミング+アウトドア、キャンプみたいなものをセットにして、ジム行って登る人もいいし、外岩を行く人もいいし、ずっとキャンプ場でバーベキューをしている人でもいいし、そういったラフでカジュアルなクライミングアウトドアスポットみたいなものを作ろうと考えています。めちゃめちゃめちゃめちゃ水面下で深海に近い水面下で、根回しをしています。

小林さんがこれからのパラクライミングについての未来を、こんなこと考えてるよ、大内聞きやがれ、というようなメッセージがありましたら是非是非教えてください!また小林さん、返事送っていただいたら、僕も返事を送ります。このラリーができることがすごく楽しいです。ありがとうございます。バイバイ~、元気でね~

“歩けない”大内さんと、“見えない”小林さん

▼大内秀之さん

  • 兵庫県出身

  • 生まれながら脊髄にガンを抱える

  • ガンは摘出するも、腹筋から下にまひが残り、車いす生活に

  • 13歳、車いすバスケを始める

  • 大学で社会福祉士の資格を取得

  • 現在、大阪府堺市立健康福祉プラザに勤務

  • 36歳、小林と出会い、クライミングを始める

  • 38歳、一般社団法人フォースタート設立。車いすバスケチーム「SAKAIsuns(サカイスンズ)」を運営

  • 2018年パラクライミング世界選手権インスブルク大会(オーストリア)AL1(車いす)クラス初出場

  • 2019年ブリアンソン大会(フランス)AL1クラス準優勝

▼小林幸一郎さん

  • 東京都出身

  • 16歳でフリークライミングと出会う

  • 大学卒業後、アウトドアインストラクターとして活躍

  • 28歳、「網膜色素変性症」が発覚。将来失明すると宣告される

  • 34歳、米国の全盲登山家エリック・ヴァイエンマイヤーとの出会いから、障害者クライミング普及を目指す

  • 37歳、NPO法人「モンキーマジック」設立。同年、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ登頂

  • 2011年パラクライミング世界選手権イタリア大会(アルコ)視覚障害B2クラス優勝

  • 2012年フランス大会(パリ)B2クラス準優勝

  • 2014年スペイン大会(ヒフォン)B1クラス優勝

  • 2016年フランス大会(パリ)B1クラス優勝

  • 2018年オーストリア大会(インスブルク)B1クラス優勝

  • 2019年フランス大会(ブリアンソン)B1クラス優勝 4連覇

▼2人のやりとりは、以下の記事で一覧に↓

みなさんのサポートは、パラクライミングの発展のため、日本パラクライミング協会にお届けします。https://www.jpca-climbing.org/