負け組人生から抜け出したいっ! 【前編】
「はぁ〜今日も…負けだ…」
帰路に着きながらとぼとぼ肩を落とし歩く
今日だけじゃない、昨日も一昨日もずっとずっと…
大きな事から小さな事まで、とにかくハプニング、アクシデント…あらゆる負の出来事が私に起こる
階段でコケる、何も無いところでコケる、間違えて飲み物を人にかける、仕事でミスする…
数え切れない…
私は「負け」と呼んでいる
毎日負けてばかり…いいことなんて…ない
「くっそ〜やってられないよっ!」
飲みなれないお酒を家で飲みまくる
家に帰ってすぐバックを放り投げ服も脱ぎ、キャミだけになってコンビニで買ったお酒を飲んだ
「やってられないよ〜こんな人生〜」
すでに酔いは回り全身赤くなっている
「お酒たくさん飲んでおぼれてやる〜」
意味のわからない事を言いながらお酒を飲む
…あれ?スマホ鳴ってる
「もしもし〜酔っ払いです〜」
『まーた酔っ払ってるの〜?』
「うるしゃい…私の人生なんだからほっといて」
『ありゃま…荒れてますなぁ〜金村』
「荒れたくないけど荒れたくもなるの…」
『会社で盛大に負けましたからね!』
「うっさい!言うな!丹生ちゃん!」
こんなタイミングで会社の同僚の丹生ちゃんか…
太陽みたいに明るくてコミュ力高くて会社でも人気者…
私と真逆…
でもなぜか気が合うんだよね
美玖:それで〜?なに〜負け犬の私を笑いたいの?
明里:もう!ネガティブな事ばかり言わないの!
美玖:言いたくもなるよ…毎日負けてばかり…
明里:お祓いとかは?お守り持つとか
美玖:やりました!お祓い100回やって恐山まで行って!お守りも全部買った!交通安全とか安産願いとか!破魔矢も絵馬も!
明里:…そうなんだね、あはは…
言葉が出なくて笑って誤魔化すしかないや…
美玖:だからもう神様なんて信じないもん!
明里:とりあえず今だけ元気だそ?
美玖:じゃあさ丹生ちゃん
明里:なにー?
美玖:元気出すから明日、丹生ちゃんのわき…
ツーツーツー…
切りやがった…
はぁ…元気なんてでないよ…今日だって会社でさ…
ーーーーーー
??:金村君さー?何回ミスしてんの?
美玖:…すみません
??:また見積書の金額全部まちがえてるよ
美玖:申し訳ありません…
???:伊達部長、すみません、私の監督がスクイズのサイン出すの忘れました
伊達:私の監督って誰だよ、それ言うなら監督不行届な富澤課長
富澤:私の責任です
伊達:当たり前だ、金村君もだしな…まったく部下にどういう教育してんの?特にこの金村君は…
富澤:部長を見て教育しております
伊達:ほー嬉しいね、例えば?
富澤:カタギには手を出すな
伊達:それ俺の見た目で言ってるよな
富澤:エンコはするな
伊達:指詰めな、それも見た目だな
富澤:シノギは伊達の叔父貴に渡せ
伊達:そこだけ俺に罪着せてるな、君ふざけてるのか?
富澤:ちょっと何言ってるか分からない
いつものように課長が私に説教されないようやりすごしてくれたけど…
…神様なんていないし…見放されてるんだよね
酔いつぶれた美玖はそのまま寝てしまった…
「んん…ふわぁ〜」
…あれ?いつの間にか寝てた…
ベッド…全然覚えてない…
キャミのまま…酔ってそのままベッドか…
フラフラしながら冷蔵庫から水のペットボトルを飲む
…頭いたっ…このまま会社か…
朝の5時、早く起きすぎた
気分転換に散歩しようかな…
愛用の一眼レフカメラを持って外に出る
気分転換は散歩とカメラで撮る
唯一の趣味だしね…
『あの〜』
「…え?私?」
突如目の前に制服を着た女の子が立っていた
いつの間に?
??:…幸薄そうな顔してますね〜
美玖:見ず知らずの女の子に言われるなんてご挨拶ね…
??:朝ですから〜
美玖:そういう意味じゃないから…いたっ!頭…
??:頭悪いんですか〜?
美玖:あー!もう!あなたなにっ!私からかってるの!?
??:そんなそんな〜あ!わたし、ひなのです〜
美玖:…話聞いてる?
早朝から訳分からないJCだかJKだかわからない女の子に絡まれてるの…私…
ひなの:ひなのでもなのでもどっちでもいいですよ〜
美玖:…言わないから、何か用?
ひなの:あぁ!そうだそうだっ!
『お仕事頑張ってください♡』
美玖:……えっ?
ひなの:それじゃ〜えへへっ♡
トテトテトテって歩く効果音が聞こえそうな歩き方で去っていった
あの子……なに?
何となく後ろ姿をカメラで撮った
家に戻りシャワーを浴びて仕事に行く準備をする
はぁ…またミスしそうでいけない…
しかも今日取引先相手と会わなきゃいけない
私のミスで先方が怒ってしまい、取り引きを辞めるまで言ってるらしい…
私の責任だから謝罪はするけど課長は出張、私について来てくれる人もいない…なんかしら理由つけて逃げたのだ
ひとりか…ほんと負け組だね
重い足取りで会社へ向かう
私は会社に着き、必要な物を持って外に行こうとする
うちの課の人達は何も言わない、冷ややかな目…
明里:金村
外に出ると丹生ちゃんが待ってた
美玖:丹生ちゃん…
明里:ぎゅぅ!力になれなくてごめん…
ハグしながら泣きそうな声で言ってきた
美玖:ううん…丹生ちゃんも大事な案件あるでしょ
明里:…断わろうとしたけど止められた
美玖:嬉しいけどだめだよ、丹生ちゃんは丹生ちゃんの仕事しなきゃ
明里:かねむら〜
美玖:大丈夫だよ…行ってくるね
明里:…うん
できるだけ笑顔で丹生ちゃんと別れた
…ほんとは私も泣きそう
でも心配させたくないから丹生ちゃんを…
待ち合わせの喫茶店に着く
指定された場所に行くがまだ誰もいない
…確か課長さんと担当の人が来るんだよね…
二人とも男性…怖いよ…
暗い気持ちで待ってると…
「あの…日向商事の方でしょうか?」
声をかけられた…女性?
スーツをきっちり着こなした女性
微笑んでこちらを見てる
美玖:は、はい…
??:すみません、うちの✕✕と△△は急に体調が悪くなってしまって代理で私が来ました
女性は椅子に座り名刺を出す
??:私、はんなりフーズの…松田と言います
美玖:日向商事の…金村です
名刺交換をし、松田さんの名刺を見る
え…係長?私と変わらないぐらいの歳にみえるのに
一方、松田さんは私の名刺と顔を交互に見てる
なんだろ…
松田:かねむら…みく…かねむら…あっ!
美玖:ふぇ?!
松田:…もしかしたら…あなた、あの金村美玖?
美玖:あの金村美玖と言われても…
松田:負け組金村!
その言葉に心臓がドキンとした…
それを言ってたのは…あだ名みたいに付けたのは
ただひとり…
美玖:…このちゃん?え…うそっ…
松田:やっぱりだ!美玖!好花やで!
美玖:このちゃん〜!
何年ぶりかの再会
高校時代の…『救世主』
彼女に会って私の負け組の道が大きく変わろうと
する音がした…
続く…
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