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優秀で鬼のように厳しい副会長は実はツンデレな女の子 18ー2

難波駅からだいぶ歩いた
雑居ビルが立ち並ぶ路地裏をいくつか抜けた

菜緒が立ち止まった場所
古びた建物…

菜緒:…ここで話そか?
遥香:わかった…

中に入ると廃墟みたいにがらくたの山
なにかの工場だったのか?今にも崩れそうな感じがする

菜緒の正面に立つ
保乃は一歩離れて静観してるが不安げな表情

菜緒:…よう戻ってこれたな、ノコノコこの場所に来るとかアホなん?
遥香:…たまたま修学旅行で来たけど菜緒とはやっぱり話がしたかった…
菜緒:私はあらへんよ…私の人生めちゃくちゃにした裏切り者に
保乃:菜緒、何度も言ったやろ?遥香は…
遥香:保乃…いい
保乃:でも…このままじゃ
菜緒:……詫び入れてな?土下座してもらおか?
保乃:菜緒!親友になにさせん!
菜緒:親友やない!!私の…私のこと裏切って自分だけ逃げてのうのうと生きて…
遥香:……

菜緒:お前は私の人生押し付けたんや!責任取れや!

今まで見たこともない菜緒の形相
表情もだけど雰囲気が変わった
あんな短いスカート履く子でもなかった
もっと静かで控えめで大人しかった

…あの時の事が菜緒をこんな風に変えてしまった
でも…今の菜緒見て踏ん切りがつけた

遥香:…嫌や
菜緒:なんやて…?
遥香:責任も取らへんし謝らへん、土下座もしない
菜緒:…私の人生狂わせて謝らん?
遥香:…あの時決断したの菜緒でしょ?
菜緒:そう仕向けたのはお前やろ、遥香!

………………
遥香:え?高校は大阪じゃないん?
保乃:ほんま?
菜緒:…うん、でもなまだ迷ってて…
保乃:迷うって?
菜緒:菜緒な…お父さんから言われてん、高校は東京の高校へ行けって、家族のためになるからって…
保乃:家族のために高校?なにそれ
菜緒:詳しくはわからへん、でもお父さんや家族みんなに関わるからって…
遥香:菜緒、高校…ううん、菜緒の人生は自分で決めなあかんよ?お父さんのためとか家族のためとか関係あらへん、菜緒の好きにしたらいい
菜緒:……菜緒の人生…

……………………

菜緒:それで私は親父の言うことを聞かず、東京の高校へは行かんかった…
遥香:……

菜緒は私を鋭い目線で睨む

菜緒:私は地元の高校に進学した、でも親父は激怒してな…お母さんの実家に嫌がらせし始めたんや
遥香:どういうこと…?

菜緒:…おじいちゃんは会社を経営してる、小さな会社や…親父は婿養子で元々はおじいちゃんの会社に
いた…でも反りが合わなくて経営方針で揉めて親父は独立しておじいちゃんより大きな会社にした…

ふぅ…と一息つく菜緒
そして私をまっすぐと見る……闇に包まれた瞳で

菜緒:…おじいちゃんより力を持ったんや…おじいちゃんの得意先、全部奪っていった…だからおじいちゃんの会社は倒産寸前やねん
遥香:でもおじいさんは関係ないやん…
菜緒:…私の唯一の味方やったんや…おじいちゃんは…東京行くのやめたの親父に言ってくれた…そしたら嫌がらせや…

キッと私を睨みつける…憎悪に満ちた目

菜緒:結局親父の言うことが正しかった…遥香、あんた言うたよな?家族のためとか関係ない、私の人生自分で決めろって…めちゃくちゃやんか!

私のせい?…違う…菜緒、間違っている

遥香:菜緒、私のせいじゃない、菜緒が選んだことなの
菜緒:……じゃあ全部菜緒のせい?……お前が言ったからそうしたんやろ!

菜緒は手をあげた
殴られる…そう思った瞬間…

○○:おいおい…話し合いに暴力はいけないぜ?お嬢さん
蓮加:大丈夫?賀喜さん
あやめ:間一髪でしたわ

○○さんは菜緒の手を掴んでいる
岩本さんと筒井さんは私の両脇で支えてくれてる

遥香:皆さん…いつの間に…
菜緒:だ、誰や!離せっ!
○○:手ださないならな、話し合いで手出したら負けだぜ?…悔いが残る

○○さんがかつて経験してること…だから言葉が重い

菜緒:…わかったから離して…
保乃:遥香、この人達は…
遥香:いつもお世話になってる先輩さん達…
保乃:そか…東京で友達できたんやな
遥香:うん…

保乃は微笑んだ
いつもお姉さんみたいに心配してくれた
東京行ってからも時々連絡してくれてた

○○さんは菜緒の腕を離していた

菜緒:…あんただけ幸せになって…あんたのせいで私は……
○○:おい、いい加減にしろよ
菜緒:なんや…あんたには関係ないやろ
○○:なに悲劇のヒロイン気取ってんだ?賀喜遥香は全然関係ないんだよ
……あんたもわかってるよな?
遥香:○○さん…
菜緒:……
○○:いいか?賀喜遥香が言ったことは間違ってねぇ
自分の人生は自分で決めるんだよ
菜緒:決めた結果がおじいちゃんを苦しめた…
○○:あのな、じゃああんたはそのじいさんになにかしてやったのか?親父さんと話したのか?
菜緒:それは……

○○:間違ってる、おかしいと思いながら反論もしねぇ、味方のじいさんも助けねぇ、それで親友を恨むなんざお門違いだろっ!
菜緒:……会社の事なんてわからへんもん…親父だって…菜緒、おじいちゃんのところにいるから会ってくれへん…無理や……
○○:あんたの気持ちを素直にぶつければいい、じいさんに言ってやれよあんたの気持ちを、親父さんに会えないなら強引にでも会おうとしてみろよ
菜緒:気持ち……

菜緒の目から闇が薄れた気がする
○○さんの言葉が効いてる

○○:あんた、わかってたよな?でも何もできなくてもがいて結局、賀喜遥香のせいにした
菜緒:……
遥香:菜緒

私は菜緒の前に立ち、手を握る

菜緒:……遥香
遥香:なんで言ってくれなかったの?相談してくれなかったの?私に直接怒りをぶつけてこないの?
恨んでもらってもいい…ただ、今みたいに話して欲しかった…
菜緒:……遥香、ごめん…本当にごめんなさい…菜緒…色々ひどいことした…
遥香:そんなのどうでもいい、菜緒…今が大事だよ
困った事があれば私は菜緒を助けるから
保乃:保乃もやで?忘れんといてな?
菜緒:遥香…保乃…

菜緒の目から完全に闇は消えた
代わりに瞳から大きな涙が零れる

あやめ:小坂菜緒さん
菜緒:……え?
あやめ:まだ希望はございますわよ…あなたのお爺様の会社は倒産しませんわ

あやめはノートPCを持っている
俺が小坂菜緒の身辺を探るよう言っておいた

あやめ:確かに取り引き先はお父様の会社に取られたみたいですがお爺様の会社の株まで買い漁れてはないようです
菜緒:つまり…?
あやめ:会社の株は確かに買っていますが筆頭株主でもなく乗っ取るレベルではありません
○○:つまりは親父さんが株買ったとしてもじいさんの経営は変わらねぇってことだ
菜緒:じゃ、じゃあ倒産は…
○○:現状は苦しいだろうが不当たりや借金抱えなきゃ今すぐになんてねぇ、安心しな
菜緒:よかった…

ぺたんと座り込む菜緒
私と保乃はすぐに菜緒を支える

蓮加:小坂さん…でしたね
菜緒:は、はい…

パチーン!

蓮加は小坂菜緒に近づき頬を叩く

遥香:い、岩本さん?!
蓮加:…賀喜さんの苦しみはこんなものじゃなかったはず…あなたも苦しい思いをしてたのはわかったわ
でも…友達を想い苦しんだ賀喜さんの気持ち…しっかりわかりなさい
菜緒:はい…

毅然とした態度だけど怒りではなく、慈悲に満ちた表情で菜緒を見てる

○○さんも岩本さんも…かっこいい…

蓮加:賀喜さん、あなたもよ…なぜ私達を頼らないの?小坂さんに言った言葉、そっくり返すわ
遥香:すみません…
○○:蓮加、もうそのへんにしとけよ
蓮加:…わかった

あやめ:私からも一言…私は周り聞いた話ですが賀喜さんはお父様の転勤で東京に来たそうです、ですがここにいる○○様や蓮加さんと最初衝突したそうです、決して最初から幸せだったわけではなく苦労されてます…しかし賀喜さんはご自分で困難を乗り越えてますわ
菜緒:…そうやったんや
遥香:過去の話よ…菜緒

私は菜緒の目の前に手を出す

遥香:これからも友達や、私も保乃も
保乃:せやで、昔と変わらへん

保乃は私の手に重ねる

保乃:ほら、菜緒
遥香:菜緒、おいで

私達は菜緒に笑顔を向ける

菜緒:…うん…友達や…

菜緒はそっと私達の手に重ねる

その時には菜緒は昔の眩しい笑顔に戻っていた


俺達は賀喜遥香達を残し先に建物から出ていた

○○:…一件落着だな
あやめ:ええ、なんとかなりましたわ
○○:今回はあやめに助けられたぜ、ありがとうな
あやめ:いえ私は責務を果たしまでです
蓮加:…○○

蓮加はじっと俺は見てる
言いたいことはわかってる

祐希:おー!いたー!あやめもいる!
和:お兄ちゃん…

祐希ちゃん、和、それと後ろから美波も着いてきていた

祐希:途中でさ、この人が○○の居場所知ってるって言うから案内してもらったんだよ、ありがとね梅澤さん
美波:いえ…
和:遥香さんは?大丈夫なんですか?
○○:ああ…解決したぜ…だが
蓮加:…全て話してくれる?ちょうど会長も和もいるし…そこにいる梅澤さんって人も関係あるのよね?
美波:……
祐希:んぁ?何の話?
蓮加:聞いてればわかります会長

じっと俺を見つめる蓮加

○○:…蓮加は薄々勘づいてはいると思うが俺とあやめ、そこにいる美波は…

『公安委員会だ』

祐希:えっ?!公安委員会って…好花先輩が言ってた
蓮加:……やっぱりね

和は何の事か分からず戸惑っている

蓮加:…公安委員会は生徒会では認めてない非公認の委員会…勝手なことは許さないわ…他の生徒に示しがつかない
○○:公安委員会と名乗ってはいるが学園の一委員会には属さねぇんだよ
祐希:どういうこと?
○○:公安委員会はな…理事会直轄の組織だ、だから生徒会は口出しできない、学園長もだ
蓮加:…なにそれ…何が目的なの

○○:学園を守るのは生徒会と同じだ、ただ生徒会と違うのは諜報活動やあらゆる学園の設備や装備を自由に使えること、生徒会が見逃してることを極秘に取り締まることだ
あやめ:FBIやCIAみたいなイメージだと思ってください
祐希:あ、じゃあ!転落未遂事件のマットって…
○○:俺達だよやったのは
美波:会長さんを屋上に誘導したのは私です
祐希:…え?あーー!そうだ!
蓮加:…話はわかった、ならこれからは生徒会と連携してほしい、勝手に動かれては困るから

○○:…蓮加、公安委員会は今を持って解散する
あやめ:え?!
美波:○○様…
○○:ここまで話しちゃ公安の意味がねぇ…
蓮加:…○○、あんた…他になにか企んでる?

○○:……あの学園を守りたいがな…1度今の学園を破壊し新しく創造する…あのクソ親父の思惑通りにはさせたくねぇんだよ
蓮加:それって…
○○:学園名のナーハフォルガーの意味はドイツ語で『後継者』…そしてここの生徒のほとんどがクソ親父が総帥として束ねる飛鳥馬グループの傘下企業の子息達が通っている
和:あっ……お兄ちゃん……それってもしかして…

○○:ああ…将来親の会社を引き継ぐ『後継者』達を集める学園…つまりは…

『クソ親父への人質だ』

○○は無表情に語る
蓮加、祐希、和は何も言えなかった


続く……



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