もしもあの子がとんでもない性格のあの子でメンバーにいたら…という世界線のお話
大きな部屋…楽屋に僕はいる
他のメンバーは衣装に着替えメイクもバッチリ
順番を待っている
振り付け確認してる子、髪型を念入りにチェックしてる子、雑談してる子達…
でもその中で僕は焦ってた
いくら見回しても…
あの子だけはいないのだ
(またか…勘弁してくれ…)
楽屋にはいないと気づき外へ出ようとしたその時
「間に合った〜セーフ!」
「セーフじゃないわ」
勢いよくドアを開け飛びこむように入ってきた
…僕が今1番仕事の上で悩まされてる子
「どこ行ってたの…て衣装着てないじゃん!」
「聞いてよジャーマネ!下でねタピオカ売ってるって聞いたの!だのに…デマだよデマ!もうおこリンピックだよっ!」
ものすごい勢いでまくし立てる彼女
いつものことだが圧倒される
この子が…グループのセンターとは誰も思わないだろう
小坂菜緒
日向坂46のマネージャーを僕はしている
まだ下っ端で何人かいるうちの1人
スケジュールの管理の他にメンバー1人1人を見て回るのも僕の仕事
悩みを聞いてあげたり話相手になったり寸劇させられたり…
「ほら、話はあと、衣装に着替えて小坂さん」
菜緒 へーい
まだ話足りなかったみたいで不満げに衣装部屋行く
「○○さんっ!」
突然怒号のような大声で奇妙な早歩きで近寄ってくる子が…
「は、はいっ!」
「○○さんも大変だね、小坂の面倒」
「ま、まあ…仕事ですから」
「クセ強いからねあの子。困ったら私頼ってよ、じゃ」
僕の返事も聞かずまた奇妙な早歩きで立ち去る
彼女は齊藤京子
日向坂の1期生で面倒見が良いが体育会系で実は空回りしてたりする
…僕が思ってたイメージとは違ってた
テレビやライブでは明るく清楚なイメージだし、握手会やミーグリもそのままだった
けど…
僕はオタクだけど芸能に興味があって入社しマネージャーになった…
そしてこの現実だ
そう…メンバー皆…偽りのメンバーを演じてる
菜緒 ジャーマネ!ジャーマネ!
○○ な、なに?
菜緒 今日の収録終わったらお仕事おしまいですよ?
○○ うん、今日はおわ…
菜緒 なら!なら!ご飯食べに行きましょ!
○○ 嫌です
菜緒 えー!?即決?!なんで!?
○○ あのね…僕マネージャーだし…いつも言ってるけど2人きりとかダメだよ?
ため息をつきながら毎度言われることを毎度同じことを言う
…頼むからアイドルって自覚持ちなさいよ
すると小坂さんはじーと僕を見つめ…
菜緒 私って…可愛いじゃないですかぁ
○○ …はい?
菜緒 わかりますよ?私って可愛いから一緒にご飯い行くのためらうの。でも大丈夫!可愛いのはオプションだから気にせず行こっ!
衣装を着て真面目な顔してこの子は何を言っているのか…
呆気に取られて言葉が出ないところに
「リハ始まります、みなさんお願いします」
スタッフさんの声がかかり、「はーい」とメンバーが返事をするとスタジオへ向かう
小坂さんも何事も無かったようにメンバーの方へ行く
○○ …はぁ…疲れる…
「毎日大変ですね○○さん」
目の前には日向坂46のキャプテンがいた
○○ あ、久美さん
久美 菜緒も悪気ないんで、あの子なりのスキンシップだから許してあげてくださいね
○○ いや…僕は大丈夫ですけどね…
久美 困ったらなんでも言ってくださいね
○○ ありがとうございます
久美 ハグハグする?
○○ しません
佐々木久美さん…いい人なんだけどハグで解決しようとするのは勘弁してほしい…
リハが終わり本番に入る
いつも通り、”世間一般の”知る日向坂を演じている
「はい…本を読んだり漫画見たり好きですね」
「恐竜も好きですね…そんなことないです」
”世間一般の”大人しく控えめな小坂菜緒
…あれできるんだからやっぱりすごいよな
様子を見ながら感心する
やっぱりプロだな…
収録が終了しメンバーは着替え楽屋で帰り支度を始める
僕は楽屋で撤収するのを見守ってると…
菜緒 ○○さん!
どこから現れたのか私服の小坂さんが来た
菜緒 ご飯行きましょ!
○○ だから行かないって…
菜緒 もう!いつもいつも断って!私、こんなに可愛いんだよ?
○○ い、いや…そういうことじゃ…
上目遣いでじっと見つめてくる小坂さん
…正直可愛い
いや!だめだ○○!僕はマネージャーなんだ!
アイドルと2人きりとか…
己を鼓舞するが小坂さんはまだ見つめていて…
あ、あかん…ぼ、僕は…
「菜緒、いい加減にしなさいよ、○○さんが困ってるでしょ」
小坂さんに堕ちる寸前で救いの声がした
菜緒 美穂?!○○さんは困ってないもん!だのにどいどいひーだよ!
美穂 どう見たって困ってるのわかるじゃない。ほんとにいつも自己中ね
菜緒 なぬ?!どこが自己中よ!
美穂 あらあら、自覚ないなんてほんとに困ったものね
また始まった…
日向坂の名物のひとつ
小坂さんと渡邉美穂さんの言い争い
最初はみんな止めてたけど、レクリエーションと捉えてからみんな止めやしない
菜緒 とにかく!美穂には関係ないからね!
美穂 困るって言ってるのよ、菜緒だけの○○さんじゃないし美穂の○○さんだしみんなの○○さんだし
菜緒 そんなこと知ってる!でもご飯ぐらい…
美穂 ほんとにおバカねぇ。○○さんは菜緒と2人きりが困るって言ってるの。そうですわよね、○○さん
両手を軽く上げ僕に微笑む渡邉さん
その通りなんだけど、渡邉さんとかみんなの僕ってなに?
○○ そうだね、小坂さんが嫌とかじゃなくてアイドルとマネージャーが2人きりは誤解招くでしょ?
菜緒 なぬ?!誤解招くの?なんで?!
美穂 …あんたほんとにおバカ?世間から見たらアイドルが殿方といたらスキャンダラスでしょ、そのぐらい分かりなさいよ
渡邉さんは至極真っ当な事言ってる
代弁してくれて助かったと思ったけど…
菜緒 じゃあ!じゃあ!マネージャーって名札つければいいじゃん!
○○ …あのね、そういうことでは…
美穂 菜緒、今はねお仕事以外外で殿方と2人きりでいる行為は世間ではタブーなの
今の芸能は…
菜緒 じゃあ!美穂もいこっ!
○○ え?
美穂 はぁ…?!
菜緒 それなら芸能禁止違反にはならない!だって2人きりじゃない!ありありの大ありだよ!
○○ …まあ違反ではないか…渡邉さん、ごめん、お願いできないかな?
美穂 …○○さんからお願いされたら…断るわけにはまいりませんわ…
僕に目を背け恥ずかしそうにしてる
菜緒 よしっ!じゃあ決定!焼肉!
美穂 ちょっと勝手に決めないでちょうだい!
そのあとも小坂さんと渡邉さんは口論してたが楽しそうなのでほっといた
芸能禁止項目法か…
だからずっと断ってた…
こんなのがあるから…
ふっと視線を感じた
たまに感じる視線
いや…あれは視線なのか?
睨まれてる…よね…あれは…
椅子に座ってじっと僕を見てる…いや…
睨んでる子…
「な、なに?」
恐る恐る聞く
「…上村さん」
続く…
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