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優秀で鬼のように厳しい副会長は実はツンデレな女の子 10

「はい、下がって!こっちに来たら危険だから!」
「そこ、もっと下がって!」

緊急招集された生徒会の人達が群衆、野次馬達を規制している
カラーコーンや立ち入り禁止のテープを貼って現場に入れないようにしてる

理々杏:史緒里、集まってる生徒はここから離したよ
史緒里:ありがとう理々杏
理々杏:そういえば連加は?会長も
史緒里:あの二人は大丈夫…直に来るよ

助けないと…
でもどうやって?周りを見てもあの子を助けるものがない
和ちゃんも懸命に周りを探してる
…あれ、さくがいない?
はぐれた?

「たすけて…こわいよ…」

上から落ちそうな子が叫んでいる
なんとか壁に手をかけてるけど多分持たない
落ちないように高いフェンスがあるから登ることも時間かかるしあの子に近寄れない

和:遥香さん…下がってください…
遥香:和ちゃん?!てかなにそれ?!

和ちゃんの左手には…弓
右手には矢を持っている

和:折り畳み式の特製コンポジットボウです
遥香:弓の説明じゃなくて!何する気?
和:時間を稼ぎます

矢をつがえ弦を引く
私の弓はコンポジットボウだけどできるだけ和弓に近づけさせて洋弓の余計なものをほぼ排除したカスタムモデル
でも威力、射程距離は和弓の比じゃない
…長年和弓をやってたならできる…和

遥香:和ちゃん!危ないから!
史緒里:やめなさい!もしあの子に当たったら…
蓮加:史緒里、やらせてあげて
史緒里:蓮加?!いつの間に…

蓮加:和…普通なら危険物の所有及び使用は厳重処罰の校則違反よ…でも今は緊急を要します…使用を許可します、責任は私が取るから…

『射ちなさい!和!』

和:…はいっ!

躊躇なく弦を引き矢を放つ
放った姿は実に凛々しい…

グングン矢は女子生徒に迫る

…本当は高さがあってあの人と均等の位置がよかったけど周りには何もない
だからギリギリの高さで放つしかなかった…

お願い…

遥香:あっ…!!
理々杏:だめっ!あの子に当たる…!
史緒里:いやぁぁ!
蓮加:……

ガキンっ!!

壁に刺さる音が響く…

矢は…女子生徒に刺さった…

ように見えた…

遥香:みなさん…あれ…
史緒里:……うそ…でしょ
理々杏:……刺さってる…

一同呆然とするしかなかった、その光景に

ただ一人は除いて…

蓮加:…腕は鈍ってないようね
和:今でも日々鍛錬してますから…

和の放った矢は女子生徒の首に刺さってるように見えるが違う
制服のブレザーの襟を狙ったのだ

史緒里:いや…普通無理だよ、ブレザーってピッタリしてるよ?
和:よく見てください…あの人のブレザーは明らかに大きさが違います…ブカブカなので若干ですが狙える隙間があったのです
蓮加:…あの高さじゃ判別なんてできないわよ
和:…視力いいので
遥香:いや、そういうレベルじゃないでしょ!
和:…二射目、三射目いきます…
遥香:人の話聞けやっ!

遥香のツッコミを無視し矢を放つ
今度は連続で

二射目は左のブレザーの襟、三射目はスカート
ほぼ同時に刺さる

和:和流…三点射ちです
遥香:…ツッコむ言葉もないわ…
蓮加:…本当に時間稼ぎね…でも
和:私たちのやれることも稼ぎました…

『甘いな』

後ろから声が掛かる

??:確かに時間稼ぎにはなった…だがこの瞬間、あの女生徒が落ちた時の想定はしてるかね?救う手立ては?

野太い声…厳格な感じ…誰…
後ろを見るとそこには…

麦わら帽子にTシャツ、オーバーオールに長靴、
そして背中には藁の籠を背負い、中にはトマト
巨体な…おじさんがいた…金髪だし

?? 諸君らはまだ甘いな…

いやそんな格好で言われても…
ほんと…誰?

蓮加:…すみません、私は消防、救急車を要請してて指揮が取れませんでした…
??:気を病むな蓮加君、まだこれからだ、諸君達もだぞ
史緒里・理々杏・和:はいっ!

…みんな知ってる人?

??:賀喜遥香君

遥香:は、はい…?

??:自己紹介はあとだ!蓮加君!これを使いたまえ!

岩本さんになにか放り投げた

いや!自己紹介せえよ!気になるから!

おじさんが投げた物を受け取る

蓮加:これは…校旗?
??:そうだ、手頃の物がなかったからこれならまだ使えるだろう
蓮加:そうか…落ちた時これで受け止められる
遥香:あ…確かに…
??:丈夫な素材で作られてるから簡単には切れない…しかし
蓮加:まだ足りない…

蓮加は集まっている生徒達に向かって叫ぶ

蓮加:みなさん!今着てるブレザーをお貸しください
落ちた時のため衝撃吸収するのに必要です
どうか…お願いします…あの子を救いたい

生徒達に向かって頭を下げる岩本さん

するとみんな無言でブレザーを脱いでいき近くの生徒会委員に続々と渡していく

「力になろうぜ!」
「あの子たすけてあげなきゃ」
「おい!ブレザー集めろ!」

生徒達は声をあげ協力してる

蓮加:それから衝撃を和らげる物ならなんでもいいです、今は実験棟に入るしかありません、中に入ることを許可しますから探してください

「おうっ!!」という雄叫びあげ続々と実験棟に入る
すごい…岩本さんの声で今まで混乱してたみんなをまとめてる
副会長は伊達じゃない

他の人達は校旗を広げてる
かなりの大きさだけどやっぱりあの高さでは心持たない

あっ!さくだ!まさかなにかに巻き込まれたんじゃ…
急いでスマホを取り出し電話をする

遥香:あっ!さく?!いまどこにいるの!
さくら:ごめん、かっきー…今屋上に着いた
遥香:屋上!なんで?
さくら:ロープを何本か見つけて…なにか役に立つかなって思って屋上に来たの
遥香:あっ!それなら命綱とかに使える!
さくら:うん、だから何人か人集めたからなんとかやってみる
遥香:でもフェンスあるよ?
さくら:今はフェンスの隙間からロープをくぐらせるしかないからやってみる…それに
遥香:それに?
さくら:あの人も来るから

そういったと同時に…

祐希:着いたー!!

バカでかい声の会長さんの声が聞こえた

祐希:みんな!さっそくフェンス切るよ!できるだけ大きな穴!工具は集めたから好きなだけ使って!
会長権限でやっちゃえ!!命綱は付けてよ!

「おう!」という声が聞こえる
そうか、フェンス登るより何人かでフェンス切れば早いし救出活動も早い
会長さん…すごい

さくには屋上の様子を知りたいので通話のままにしてもらった
その間、衝撃吸収になる物が続々と集まる
ブレザー、座布団数枚、クッションが何個か…
数はあるが…

和:…心持たない
蓮加:だけどないよりかはマシ、本校舎からここ遠いけど物資を持って来て貰ってる
遥香:それまでに間に合えば…
??:…いやこれだけではまずい
遥香:えっ?
??:和君、動揺したあまり君らしくないミスをした
和:…え

腕を組み女子生徒を見ている

??:あれでは…落下した時の想定位置が判断できない
和:…そうか…しまった
??:あの矢が…邪魔になってしまったな

厳しい顔で見つめていた

続く…

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