優秀で鬼のように厳しい副会長は実はツンデレな女の子 21
○○:……無駄なもん建てやがって
俺は寮の前に来ていた
デカい、とにかくデカい
校舎からでも姿は見えたが高層ビルだなこれは
何階建てだ?20階は軽くあるだろう
寮の設備は部屋の中にだいたいあると聞いたので余分な物は持ってこなかった
着替えの服のみ、だから鞄一つ
にしても……この寮分け、なんかしらの意図があるんだろうな
美波がいい例だ
あいつは……
寮に住めない
昨日メールが来た
ご当主様からのアドレス
寮分けの通知ではなく
寮には住めないと言う通知
学園での在籍及び校内での○○様の護衛は今まで通りだけど入寮は許可できないと
『お前は○○の影だ、お前の存在を目立たせるわけにいかない』
『お前は……』
『飛鳥馬家の従者なのだから』
分かってはいたけど…
私はやはり人並みには生きていけない…
でも…私は…
我が主、○○様のお傍にいたい…
片時も離れたくない…
遥香:うわぁ…引くほど大きい……
眼前に広がる建物に呆然としてる
周りは引越ししてる生徒が慌ただしく動いてる
私はある程度の手荷物だけのつもりだったが…
遥香父:遥香!大丈夫か?!一人でやっていけるか?!パパがいないと寂しいだろ!?
遥香:もう!人いるんだから静かにしてよ
遥香父:何を言うか!遥香が引越しするんだぞ!一大事じゃないかっ!
遥香:大袈裟やねん……
遥香父:バカもん!どこの骨かわからない男が遥香にまとわりついたら…パパは!パパはぁぁ!!
遥香:あ、すみません、こんなに荷物いらないんで引き返してください
お父さんが勝手に引越し業者を頼みトラック数台止まってたので業者さんにお願いした
遥香父:はるかぁぁ!!そんな手荷物だけでは充分に暮らせんぞぉぉ!!
遥香:なんとかなるから、じゃまたね
遥香父:はるかぁぁ!手紙は必ず送るんだぞ!パパはぁ!パパはぁ!
……はぁ
親バカ通りこしてるわ
ちなみにお父さんは飛鳥馬グループ傘下の企業、ロイヤルホールディングスと言う電子機器材料を扱う会社の社長、賀喜幸太郎
1代で会社を上場させ飛鳥馬グループ傘下に参入した
やり手の社長なんだけど…親バカ
蓮加:……
和:……
あやめ:……
三人同時に寮に着いていた
お互い無表情で睨み合う
あやめ:あら、岩本の蓮加さん?なぜあなたがこんなところに?
蓮加:なぜって私が住む寮だからよ…
あやめ:あらあら、奇遇ですわね、私もなんですの
蓮加:あ、そ…私忙しいから…
あやめ:あら、逃げますの?この筒井あやめから
蓮加:どうすればそういう解釈になるの?
和:お二人共、みっともないですよ
あやめ:あら……
蓮加:あなたもいたの?
和:それはこちらのセリフです…あなた方と一緒の寮だなんて……
…あの雰囲気に入れないや…
祐希もずっといたんだけど入るタイミングなくなった
祐希はみんなと同じ寮なのは嬉しいけどあの三人はなあ
仲悪いわけではないけどなにかと張り合うから
○○入ればなんとかなるけど…まだ見ないね
牧村:…ふむ
私はマーギア寮周辺にいる
無論いたるところにある防犯カメラに映らない位置にだ
昨夜、○○から連絡がありある頼みをされ私はそれを実行している
美波君が寮に入れないから私にお蜂が回ったわけだ
寮に入る生徒の観察
それが私の役目だ
…ふむ、なんら変わったことはない
○○は何を気にしているのか
よく観察してるが特段気にする生徒はいない
見知った顔は…クラスメイトが何人かいた
しかしマークするような生徒ではない
……ん?
あれは…賀喜遥香と言ったかな
○○達と懇意にしている
同じ寮か…
いや待てよ…これはやはり何かあるのか
しばらく調べたほうがいいかもしれんな…
俺は寮の中に入った
入るとすぐホールがある
しかしほとんど人はいなく閑散としていた
まあ寮に来た時からおかしいとは思った
とにかくこの寮に入る生徒が少なく感じた
他の寮の状況は知らないが全校生徒の数にしては妙に少ない
そして活気がまるでない、静かなのだ
○○:なんだこの静まり方はよ…
ホールで独り言を呟いていた瞬間
背中がゾクッとした
なんだ?この寒気…
カツーン……カツーン……
いつの間にかホールには人はいなく、靴音がホールに響き渡る
カツーン……カツーン……
どんどん音が近くなる
音がなるほうへと顔を向けた
その瞬間……
凍てつく吹雪が俺を通り抜けた感覚に襲われる
凍らされる……そんな感覚
そして目の前にいる人物を見て文字通り凍りついた
…なんで?
…なぜ
あの人は…ここにいるわけ…
??:久しぶりだね、○○くん
今目の前でなにが起きてるか脳が働かない
言葉すら出ない
??:なーに?久しぶりに会ったのに無視ですかー?
微笑んで俺に言ってくるがなにがなんだかわからない…
○○:……なんでいるんですか?
??:二年ぶりにあった最初の言葉はそれ?感動の再会が台無し
○○:いや…その…
??:久しぶりだから言葉が出ないってこと?相変わらずヘタレだね
ニヤニヤしながら笑っている
…間違いない…でもなぜこの人がここにいる?
思考が追いつかない
さくら:あ!○○さん!
さくらちゃんが小走りでやってきた
さくら:○○さんもへクセ寮なんですね、知ってる人と同じで安心しました
安心した顔で言うさくらちゃんだが背中に背負ってる大きなぬいぐるみが目に入る
いつもならつっこむのだが…あの人が不満そうな顔をしてるから頷くだけだった
さくら:えっと…そちらの方は?
??:初めまして
食い気味に話し出す
??:私は…
「齋藤飛鳥、二年」
「○○くんの護衛役」
「あと……」
「○○くんの元カノ、これからよろしくね」
凍てつく魔女は……微笑む
後に語り継がれる、【災悪の祭典】ディザスターカーニバルの幕開けだった
続く