【不思議な話】スカートのシミが消えた話。

私は２０代の終わりごろ、婦人服を売るお店に勤めていました。
これは、そこで起こった不思議な出来事です。

ある日やって来たお客様が、柄物のプリーツスカートをお買い上げになりました。
ところが、お渡しするためにたたもうと広げてみると、ウエストに近い部分に、かなり鮮明なシミがついているではないですか。
お客様に見せたり、試着した時には、店員一同まったく気づかなかったことで、私も同僚たちも、青ざめました。
ですが、在庫を調べると、同じものがもう一着あることが判明します。
もちろん、サイズも同じです。
そしてこちらには、シミも汚れもほつれもありません。
やれやれと一同は胸を撫でおろし、そちらをたたんで袋に入れ、お客様にお渡ししました。

お客様が帰ったあと。
シミのついたスカートをシミ抜きに出すことになりました。
ところが。
スカートを確認したところ、どこにもシミがないのです。
もちろん、シミのない方と取り違えたということはありません。
お客様にはちゃんとシミのない方をお渡ししましたし、そもそも、シミがみつかったあと、スカートは従業員しか触らない場所に置いてあったのです。
更に言うと、最初にも書いたとおりシミはけっこう鮮明で、一目でそれとわかるものでしたし、私と他に二人の同僚が一緒に目撃しています。
まさか、三人が三人ともないものをあると見間違えるはずもありません。
とはいえ、シミがないのにシミ抜きに出すわけにもいきません。
それで、スカートは再びもとの棚に戻され、私を含めた店員一同、ただ首をひねるばかりでした。

ただ、私には少しだけ心当たりというか、もしかして……と思うことがありました。
当時私はパワーストーンにはまっていて、ラピスラズリや水晶のネックレスなどを買っては、職場につけて行っていたのです。
そしてその日も、買ったばかりのラピスラズリの指輪をして行っていました。
指輪は利き手にはめていましたので、当然スカートにも、その手で何度も触っています。
なので、もしかしたらラピスラズリが消してくれたのでは……な～んて思ったりしたのでした。
いや、もちろん、わかりませんけどね(;^ω^)
スカートの件があった日に指輪をしていたのは、偶然ではあるのですし。
ただ、あったはずのシミが消えてしまったのは本当のことなので――あれから何年も経った今でも、不思議な出来事として記憶しているのでした。