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ベーシックインカムは極めて怪しい.6 ―BIENが歪めるBIの定義―


■BIENの質問と回答から見える問題点

現在、BIにおける情報発信サイトはこちらになりますが、

こちらの「ベーシックインカムに関するよくある質問」にはインフレについて噴飯物な回答がなされています。

ベーシックインカムはインフレを引き起こすでしょうか?

インフレは、支出可能なお金の量が経済の生産能力の価値よりも大きい場合に発生します。その状況で、お金の量が増え続けると、1 単位のお金で買えるものは次第に少なくなり、お金の価値は、時には急速に失われます。現在の税制と給付制度の変更のみで賄われるベーシック インカム制度では、マネー サプライは増加しないため、インフレは発生しません。支出可能なお金の量が経済の生産能力を下回る場合、政府はギャップが埋められるまでお金を作成し、その新しいお金を使用してベーシック インカムを支払うことができます。ただし、インフレが発生し始めると、お金の作成を停止し、新しい税金を使用してベーシック インカムを支払う必要があります。

https://basicincome.org/faqs/

■BIではインフレは発生しない!?

実は私は、BI推進派の人たちと議論をしたとき、「BIではインフレは発生しない!」と言われたことがあります。
正直、全国民に給付金を一律に行うのにインフレが起きないというのは、何を言われたのか一瞬唖然としました。
これはポストケインズ派経済学であろうと、主流派経済学であろうと同じ見解であるはずです。もしそれが現実ならちょっとした新説です。給付された貨幣が一切使われずタンス預金されるというわけなのですから。

MMTにおける積極財政論の議論の場合は、積極財政政策の正しさを述べるたびに、この「インフレコントロールができるにもかかわらず、そのインフレを懸念する人たち」という心配性の人たちがワラワラ湧いてきました。
一方で私たち積極財政派も積極財政を行うことでインフレが起きないとは思ってもいません。
寧ろ私はDPインフレこそが起こって欲しいと主張しているわけでもあります。

なのに、もっと直接的に、国民に貨幣を供給する理論においては、BI推進派はインフレをほぼ懸念しません。或いは懸念があったとしても「徴税でコントロールできる」ということで特に関心を持ちません。積極財政政策よりもインフレ圧力は強いはずなのに。
前回書いたものにもつながりますが、それがCPインフレだろうと、DPインフレだろうとそれにも無頓着です。
が、BIENのこのページを読んで得心しました。

■BIENがBIの5つの特徴をまさに歪めている張本人

上記の抜粋文中、
現在の税制と給付制度の変更のみで賄われるベーシック インカム制度」
ぬけぬけとそういっておりますが、
これはBI(ベーシックインカム)ではありません。

1.定期的 (Periodic): 一定の間隔で支払われる (例えば毎月ごと)。1回限りではない。
2.現金給付 (Cash payment): 交換に適しており、受領者が何に費やすか決定できるものによって支払われる。つまり、食べ物やサービス、特定の用途に限られた引換券などは該当しない。
3.個人向け (Individual): 個人に支払われる。世帯への給付ではない。
4.普遍的 (Universal): 資産調査なしにすべての人に支払われる。
5.無条件 (Unconditional): 労働要件や働く意思の実証なしに支払われる。

上記の5項目がBIの要件ですが、であるとするなら、「現在の税制と給付制度の変更のみで賄われる給付金制度(例:生活保護、年金等)」はBIではありません。4.普遍的5.無条件が不適合です。
逆説的に申し上げますと、つまりBI推進派の人々がBIによるインフレを懸念しないのは
BIではない限定的給付金制度をBIと表現するから
であり、「4.普遍的」「5.無条件」を満たしてないにもかかわらず、その限定的給付金を行ってもインフレにならないことを理由に
「BIを行ってもインフレにならない」
と主張しているわけなのです。
この、何とも玉虫色、といいますか、BIENやBI推進派側のインフレに対する論理展開は極めて不誠実である、と言わざるを得ません。

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