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らんちう/たま

私はたまが好きだ。

たまは、1990年に「さよなら人類」で一世を風靡したバンドで、一世を風靡した頃は私は産まれていなかったか、産まれたてホヤホヤだったが、17歳の頃、唐突に出会ってしまった。

「さよなら人類」のシングルCDが、家の片隅にあることは知っていた。小6で初めて買ったCDが中島みゆきの「地上の星」で、誕生日にアルバム「大吟醸」を祖母から買ってもらうくらいには渋好みだった私も、高校生の頃には鬼束ちひろや椎名林檎にはまっていた。(なぜかCoccoは聴かなかった)

だが、17歳のある日、なんとなしにたまのCDが気になった。本当に「なんとなしに」だった。

「さよなら人類」は、懐かしのメロディー的な番組で知ってはいたが、2曲目の「らんちう」を聴いた瞬間、私の体には電流が流れた。

聴いたことのない声。聴いたことのないメロディー。なのに、懐かしくて、寂しくて、素敵で、楽しそうで、合間に語りが入ってて、「よお〜」で始まり「よお〜」で終わる。

私はその日のうちに、ネットで「さんだる」と「ひるね」を買った。(「CD選書」みたいな再販ぽいCDで、「きゃべつ」等の他のアルバムは無かった)そして、狂ったように聴いた。狂ったように聴いて、インターネットで、「たま」が既に解散したことを知って泣いた。

でも、全員が音楽活動を続けていて、ライブをガンガンやっていると知った。

受験生になった私は、大学生になったら絶対にライブに行くと決めた。色々あって浪人したが、19歳の春分の日、私はついに知久さんのライブへ行くことになった。

緊張のあまり友人(私がたまを薦めてはまってくれた)が心配するくらい体が震えていた。知久さんが同じ空間に来るんだ、あの「らんちう」の知久さんが。そう考えると、心臓が爆発しそうだった。

開始時間を5分程過ぎて、知久さんはぬるっと登場した。目の前に現れた知久さんは、ものすごく彫りが深くて、目が大きかった。

マスターからもらったビールをゴクゴク飲んだ知久さんがご機嫌に歌い始めてからは、あまりにも夢の様な時間だった。

私は小さなライブハウスで、知久さんの彫りが分かるくらい近くで、「らんちう」をついに聴くことが出来た。

それから何度も知久さんや石川さんのライブへ行ったが、あの日初めて知久さんに会えた日の「らんちう」は私の宝物だ。

#思い出の曲

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