【一眼初心者向け】理論で学ぶミラーレス一眼の写真撮影
何年かカメラを使ってきた中で得た知識を整理しつつ、知り合いのカメラ初心者の人たちに教えられるような備忘録記事になります。
自分はプロでもなんでもない素人の風景専です。あんまり技術があるわけでも写真を撮るのが上手いわけでもないのですが、なんやかんや情報工学を専攻している関係上、ディジタル画像処理や信号処理の知識があったため調子に乗った記事を書こうと思ったわけです。
長い期間に渡りSONYユーザとしてやってきた中、つい先日FUJIFILMユーザへと移行しました。その他、定期的にキヤノンを使ったり、ミラーレス以外ですとGoProとかiPhoneとかで写真を撮っています。
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更新履歴
・20.07.08 明瞭度に関する記述、シャープネスに関する記述を追記
・22.07.07 階調に関する記述、大三元小三元レンズ関する記述を追記
・22.06.28 撮影モードに関する記述を追記
・22.06.27 初稿、直後若干改定
カメラ3変数 : F値、シャッタースピード、ISO感度
カメラの基本は「F値」「シャッタースピード」「ISO感度」の3変数です。この3つをまず理解することで大まかな撮影における画作りが可能になります。
それぞれの概要特徴。
「F値」… F値が小さいと明るい、大きいと暗い。F値が小さいとボケやすい、大きいとくっきりしやすい。
「シャッタースピード(以下、SS)」… SSが長いと明るい、短いと暗い。SSが長いとブレ易い、短いとブレにくい。
「ISO感度」… ISOが大きいと明るい、小さいと暗い。ISOが大きいとノイズが乗りやすい、小さいとノイズが乗りにくい(或いは乗らない)。
この3変数をうまく設定し、ボケを制御しつつ(F)、ブレを起こさず(SS)、ノイズを乗らさせず(ISO)、明るさのうまく取れた(F/SS/ISO)画を作ることを初心者の第一目標にします。
3変数に共通する明るさを表す指標として「EV(Exposure Value)」があります。これは相対値です。EVが1段階増加すると明るさが2倍になり、1段階減少すると明るさが2分の1倍になり、これを「+1EV」「-1EV」のように表します。
基本的にカメラにある撮影系モード(Auto・P・A(Av)・S(Tv)・M etc…)の殆どはこの3変数のうちどれを手動で設定するかどれを自動で設定するかの違いになります。
また、あくまで3変数は各々ボケ・ブレ・ノイズといった造形を左右するものと明るさを左右するものであり、色には作用しないという認識は重要です。
以下、それぞれの変数の詳細になります。
3変数① F値
「F値」… F値が小さいと明るい、大きいと暗い。F値が小さいとボケやすい、大きいとくっきりしやすい。
F値わかりやすく
F値は別名「絞り値」と言います。レンズの穴の広さを絞ることにより値が変化します。
F値の閾値はレンズ種に拠るものの、手にしやすいレンズで設定できる閾値の殆どが1.4〜20前後です。よくレンズに書いてある「1.4」とか「2.8」とか「5.6」とかはそのレンズが出せる最も小さいF値(「開放」と呼ばれる)を指します。
また、F値が小さい時「被写界深度が浅い」、大きい時「被写界深度が深い」と言った現象が発生します。焦点の合う部分を奥行き的に考えることに拠るのですが、ざっくり被写界深度が浅いとかなりボケる・深いと全体的にクッキリと写るというイメージです。
F値と明るさの関係
F値を1つ下げる( ÷√2倍 ≒ 約0.7倍 する)と +1EV、F値を1つ上げる( *√2倍 ≒ 約1.4倍 する)と -1EV となります。
F値とボケの関係
F値6台を切ったころ周辺からボケが明確に現れ始めます。F2.0~2.8で玉ボケが綺麗に発生し易いそうです。F値1台で玉ボケ同士が融合したようなボケ方になります。
また、玉ボケと一言で表現しても、丸に近かったり多角形であったりレモン型であったり色々な形があり、これは絞りの羽の枚数が作る穴の造形に拠ります。
F値のテクニック
風景の標準はF8〜11台、遠景の山なども明確に入れるときはF11~16台、遠景の山などに加え光芒(太陽光の筋)を入れようとするとF20台、逆に玉ボケを入れるにはF2.0〜F2.8台周辺から調整すると良いらしい。
[F値]
💡 1.4 <== F ==> 20台 🌚
(ボケやすい ←← )
その他、F値の変化によって解像度や歪みが変わる等もありますが、自分はその辺の知識が無いので詳しくなったら追記します。
Advanced. F値の知識
F値は、1 → 1.4 → 2 → 2.8 → 4 → 5.6 → 8 → 11 → 16 と増える記載が多い。(そのため、この値を覚えておくと良いと言う人が多い。)
なぜこのような飛び方になるかというと、原理として +1EV すなわち明るさが2倍になるためには、レンズの面積を2倍にすることで光量を2倍にする必要がある。
すなわち、S = π * r ^ 2(S:レンズ面積・r:レンズ半径)という円の面積の公式を考えると、先程の [ S が2倍 ] となるためには [ r^2 が2倍 ⇔ r が√2倍 ] される必要がある。
これによりF値はこの半径を考えているため、最も開放されている状態を1として、そこから√2倍ずつされていく仕組みになる。
(つまり厳密にはF値というのは、1 → 1.414 → 2 → 2.828 → 4 → 5.656 → 8 → 11.313 → 16 … の丸めを意味している。)
3変数② シャッタースピード(SS)
「シャッタースピード(以下、SS)」… SSが長いと明るい、短いと暗い。SSが長いとブレ易い、短いとブレにくい。
SSわかりやすく
SSはシャッターをどのくらいの時間開放しているかにより変化します。
SSの閾値は1/10000程度〜30秒程度。分数表示は何分の1秒を表します。「レリーズ」という道具を使うことでそれよりも長時間開放させることができます。
機種によっては分数秒の方を通常の数字で表し、1秒以上の秒の方を「"」を使って表すものもあります。(例. 1/125秒と3秒は「125」と「3"」のような。)
SSと明るさの関係
SSを2倍長くする( *2倍秒開放する)と +1EV、2分の1倍の長さにする( ÷2倍秒開放する)と -1EV となります。
SSとブレや流線の関係
SSは一般的に 1/125 が手ブレを起こさない限界と言われています。これ以上、SSを長くするとブレる可能性が高いです。もう少し厳しく判定させる基準として「1/焦点距離」というものがあります。あくまで目安です。
また長い秒数SSを開放すると動いている光が線のように現れます。
SSのテクニック
手ブレを起こさないためには簡単なラインで 1/125 を基準、若干厳密なラインとして「1/焦点距離」を基準とする。ただし動いている物体(運動会の子供など)を撮る時は 1/500 を基準とする。これらはあくまで限界ラインであり、SSは短いに越したことはない。
逆に、車の光跡を撮る際は10秒前後を基準とする。星は15秒程度を限界とする。(15秒を超えると星が線になり始める。)これらを含め、手ブレラインを超える長い時間の露光になる場合は三脚が必須であり、シャッターを押したときの本体揺れがブレに大きく繋がるので2秒タイマーを設定すると良い。
[SS]
💡 30" <== SS ==> 1/10,000 🌚
(ブレやすい ←← )
Advanced. ブレの計算
ブレというものは、画素ズレという現象なので、原理を元に計算ができる。
愛読書『ディジタル画像処理』(詳細は本記事最終章の [参考文献] を参考)に以下のような公式がある。
ts = (S * R) / (N * v * f)
ts:SS限界[s]
S:1辺の画像素子サイズ[mm]・R:被写体までの距離[m]
N:1辺の画素数(pixel)
v:被写体の移動速度[m/s]・f:焦点距離[mm]
これを焦点距離50mmレンズのAPS-C機(S = 23mm・N = 6,000・f = 50)で20m先の歩く人(R = 20・v = 1.25)を撮るとすると、SSを限界 ts = (23 * 20) / (6000 * 1.25 * 50) ≒ 0.00123[s] となる。このとき 1/800 = 0.00125 なので理論上、大体このくらいならブレないと言える。
(個人的にはもっと長くても大丈夫なような気もする。)
3変数③ ISO感度
「ISO感度」… ISOが大きいと明るい、小さいと暗い。ISOが大きいとノイズが乗りやすい、小さいとノイズが乗りにくい(或いは乗らない)。
ISO感度わかりやすく
ISO感度はセンサの感度を機械的に強弱させることで変化します。
ISO感度の閾値は100〜約10万台程度です。
ISO感度と明るさの関係
ISO感度を *2倍 すると +1EV、÷2倍 すると -1EV となります。
ISO感度とノイズの関係
ISO感度は一般的に 1600 を超えるとノイズが乗ると言われています。しかしながらセンサの技術進化に拠るので機種によって大きく異なります。
ISO感度のテクニック
晴れなど明るさが取れる場合は100で固定するとベター。そうでない場合は基本的にAuto推奨で、大抵の機種はISO感度上限を固定できるのでAutoの場合は1600程度を上限に設定すると良さそう。
[ISO感度]
🌚 100 <== ISO ==> 10,000 💡
( →→ ノイズが乗りやすい)
3変数④? 変数ではない変数、露出補正
カメラには「露出補正」という明るさを補正する機能があります。
一見すると明るさに作用する4変数目に見えますが実は違います。
これはAやSのモードでしか使えないのです。
なぜ4変数目ではないかというと、これはモードの仕組みに理由があり、AやSのモードで手動設定しない値、すなわち、AモードであればSS、SモードであればF値、を自動設定するための指標が露出補正で定める値です。
ここから明らかなように露出補正の実態は今まで出てきた変数を明るさを基準にした簡易指標なわけです。
露出補正は大抵 -3EV 〜 +3EV、機種や上限下限解放によって -5EV 〜 +5EV 程度を閾値に持ちます。
露出補正設定のテクニックとして、露出を下げるとヒストグラム(設定すると画面上に出てくる分布グラフみたいなもの)が左に、露出を上げるとヒストグラムが右に寄ります。ヒストグラムは左端にぶつかると「黒潰れ」、右端にぶつかると「白飛び」というあまりよろしくない状況が起きます。そのため露出補正を行う際はヒストグラムが両端にぶつからないように調整するとよいです。
3変数のまとめ
初心者は余計な設定は気にせず、以上の3変数をうまく設定し、ボケを制御しつつ(F)、ブレを起こさず(SS)、ノイズを乗らさせず(ISO)、明るさのうまく取れた(F/SS/ISO)画を作ることを目的としましょう。
[F値]
💡 1.4 <== F ==> 20台 🌚
(ボケやすい ←← )
[SS]
💡 30" <== SS ==> 1/10,000 🌚
(ブレやすい ←← )
[ISO感度]
🌚 100 <== ISO ==> 10,000 💡
( →→ ノイズが乗りやすい)
こんな感じ。
3変数を使った撮影モード Auto(A+) ・ P ・ A(Av) ・ S(Tv) ・ M
実際に撮影する際の話。
大抵のディジタルカメラでは、撮影をする際にカメラ上部(所謂、軍艦部)のダイヤルをいじって何らかのモードをひとつ選択しなければなりません。それらのモードについての簡単な解説です。
各モードは、今まで扱ってきた3変数「F値」「SS」「ISO感度」のうちどれを機械側が自動で設定するかどれを撮影者が手動で設定するか、で用途が変わり、それぞれ特徴があります。
Autoモード(Canonのみ A+ モード)
Autoモードは字の如く、3変数すべてを自動で設定してくれるモードです。
主として明るさを機械的に最もバランスの取れた設定にしてくれるため失敗が少ないです。ただし、手を加えたボケや長時間露光による画作りができなかったり、構図の明るさ等によっては失敗に繋がる場合があるので万能というわけでもありません。
そうは言いつつ、初心者カメラマンにとって苦手になりがちなちょっとした動きのある人/モノを撮る時などに威力を発揮するモードです。全て機械任せなので瞳AF(人の目に焦点を合わせてくれる機能)と併せると大事なシーンでの失敗がかなり少なくなります。
Pモード
Pはプログラムモード。3変数のうちISO感度のみを手動解放したモードです。
F値とSSは自動設定。ISO感度の他、露出補正も解放されているため、3変数が関わる要素のうち明るさに限り撮影者に依存したモードと言えます。
また3変数の他、後述「色味に作用する機能」の「ホワイトバランス(WB)」や「エフェクトプリセット」等の機能も解放されるため、"基本オートが良いが色感は自分で選びたい" という撮影者にとって割と使い勝手が良い機能になります。
Aモード(Canonのみ Av モード)
AとはAperture(=絞り)モード。(Avとは Aperture Value の略。)「絞り優先」と呼ばれます。3変数のうちISO感度とF値を手動解放したモードです。
SSは自動設定。WBやエフェクトプリセットは解放。F値が解放されることにより若干の明るさとボケ感(や説明していませんが解像度等)の設定を撮影者に依存したモードと言えます。
初心者はポートレートやちょっとしたスナップを撮る際これで練習するのがおすすめです。
Sモード(CanonのみTvモード)
SとはSpeedモード。(Tvとは Time Value の略。)「シャッタースピード優先」と呼ばれます。3変数のうちISO感度とSSを手動解放したモードです。
F値は自動設定。WBやエフェクトプリセットは解放。SSが解放されることにより若干の明るさと露光時間に作画が依存する撮影(動く物体の撮影・光跡の撮影・夜景/星景の撮影 etc…)を撮影者が行い易くしたモードと言えます。
初心者は三脚を使うようなシーンを撮る際はこのモードで調整して、上手くいかないようであれば次のMモードを用いるのがおすすめです。
Mモード
MとはManualモード。3変数すべてを手動解放したモードです。変数の数が増えるため慣れが必要なモードとなります。Autoの対極に位置するモードであり、自分で納得のゆく画を作りたいときに使用しましょう。
その他のモード
多くのカメラのモードダイヤルには、以上の他にも動画撮影系モードを除いてもまだたくさんモードがある場合が多いです。
これらのモードは主に基本3変数以外の要素に手を加えたモードが多いです。
挙げられるものとしては、フラッシュを禁止するモード、運動している人物や鳥などを素早い動きの被写体を撮ることに特化した連射モード、パノラマ撮影を可能にするモード、特定の被写体に対して特定の色味を上げたりや滑らかさを加えたりするモード、自分で事前に設定したカスタムプリセットを適応するモード等々、機種によって様々でありますが、多くの場合、特定のシーン(や画作り)における特殊設定にあたります。
そのため、初心者はまずAuto・P・A・S・Mの5つの基本モード(特に後半3つの A・S・M のモード)に慣れることがおすすめです。
Advanced? 階調とそれに作用する機能
昨今流通している多くのデジタルミラーレス一眼カメラには [F値]・[SS]・[ISO感度] 以外にも様々な調整機能が備わっている。
その中で、知識の少ないユーザにとって特に分かりづらい機能が「階調」を左右する機能である。
本項目では階調周辺の用語を整理しつつ、その用語を前提として階調に関わる様々な機能の使い方を記述する。
注意:見出しタイトルに "Advanced" とあったように階調に関わる知識は他と比べて理解のしづらい項目が多いです。その割にあまりしっかり設定しなくてもどうにかなる機能のため、無理はなさらぬよう。
階調周辺で必要な知識① 階調
デジタル画像を白黒のグレースケールに変換した際、画像を構成する各ピクセル(小さい粒)ひとつひとつの白黒度合いは、0に近いほど黒く255に近いほど白いという0〜255を区間に持つの256段階の値(注)で表される。これを「階調」と呼ぶ。
(分かりやすく説明すれば、真っ白・真っ白だけど真っ白じゃない白・真っ白とは言えないくすんだ白・グレー寄りの白・白よりのグレー…...みたいな白って200色あんねんを数値化したイメージです。)
注:「256段階の値」
これは 8bit = 2^8byte = 256bite に拠る値。ただし8bitはあくまでJPEGに限り、RAWの場合は12bit〜14bitになる。
階調周辺で必要な知識② ヒストグラム
階調を構成する0〜255の各階調の値をx軸に取り、その値を持つピクセルの数すなわち各階調値の出現頻度をy軸に取り、1枚の写真における各階調の存在割合を図示したものが「写真のヒストグラム」(注)。
Advanced.
写真のヒストグラムにおけるy軸の最大値は不明であるが、世の中の確率密度関数のヒストグラムは大抵0.4なのでおそらくその前後だと予想される。(といいつつ様々な写真のヒストグラムを見ている限り、普通の確率密度関数のヒストグラムよりも広いレンジを取っている気がすることから実は0.25程度なのではないかという個人的主観がある。)
また、ヒストグラムは離散値であるため連続的なグラフではなく棒グラフの集合体と言える。
(補足として、本記事はあくまで撮影に焦点を当てているため、今回はグレースケールのヒストグラムに限定して記載しているが、実際の写真はRGB系の3色によって表現されているためグレースケールに加えR・G・B各色のヒストグラムも存在し、カメラによっては簡単に表示ができ、更に後述のLightroomClassic等ではカラーのヒストグラムを基にレタッチが可能。)
ヒストグラムのx軸は、左端が階調0すなわち黒、右端が階調255すなわち白を意味している。あくまで1枚の画像における各階調の存在割合のため、画像のどこに黒があるか白があるかのような分布場所の概念は無い。
例として、上画像のヒストグラムにおいては、左の方に高く細い山・右の方に小さな山が見られる。「左の方に高い山」は「左」=黒が「高」=たくさん存在している。「右の方に低い山」は「右」=白が「低」=少しばかり存在している。
また真ん中の方にも山を発見できるものの、真ん中に寄るほどRorGorBのなにかしら彩度を持つ可能性が高く、更に大抵の写真では綺麗に山ができることは無く、撮影において汎用性が低いため読める必要があまりない。
以下、便宜的に上で「山」と称しているもの全体を「山脈」と表現する。
このようにヒストグラムの読み方を理解できると、「黒潰れと白飛び」「コントラスト」「露出補正」「アンダーとオーバー」「シャドウとハイライト」「黒レベルと白レベル」「HDR」「トーンカーブ」等々が何を表すのかわかるようになり、撮影時やレタッチ時に階調設定機能の意味がわかる。
(本記事は撮影に焦点を置く関係上、カメラメーカ社種を共通してレタッチのみで現れる機能に関しては若干の割愛を行う。そして、複数の階調調整機能を挙げるが、使用メーカによっては設定不能な機能が存在する場合がある。)
注:「写真のヒストグラム」
"写真の" という接頭辞が付けたのは、ヒストグラム自体は度数分布表を指す一般的な統計用語であるため。
階調周辺で必要な知識③ 黒潰れ と 白飛び
画像の状態を表す言葉に「黒潰れ」と「白飛び」がある。両者は黒側の話か或いは白側の話かといった違いがあるものの原理的には同一のものとなる。
黒潰れは、ヒストグラムの山が左端にぶつかり崖のように絶壁となっている状態を表す。これが起きている部分は本当は色を持つはずが真っ黒になる。逆光で撮れる写真が黒潰れの代表例である。
例えば、上画像ではヒストグラム左端に山がぶつかり断崖絶壁となって黒潰れが起きていることが判断できる。主に画像上部や花の根元などが真っ黒になっており色を失い不明瞭になっている。
逆に、白飛びは、ヒストグラムの山が右端にぶつかり崖のように絶壁となっている状態を表す。これが起きている部分は本当は色を持つはずが真っ白になる。明るすぎる場所で撮れる写真が代表例である。
基本的に黒潰れや白飛びは撮影において不明瞭さやある種の汚さを醸し出してしまうことがあるため良しとされない場合が多く、これを露出やシャドウ/ハイライト調整で避ける。(ただし陰翳を意識した構図では敢えて黒潰れを残す場合もある。)
階調に作用する機能① コントラスト
まずはじめに階調機能の根幹を成す概念でありカメラ機種によっては変更可能な値「コントラスト」を紹介する。
コントラストは一般的に「明暗差」と呼ばれている。
ヒストグラムでいうと、コントラストが高い写真は分布(山脈)が相対的に表いっぱいに広がり、コントラストが低い写真は分布(山脈)が相対的に補足縮めたような細いものになる。つまり、山脈全体を引き伸ばすか圧縮するかといった話になる。
コントラストが高いほど、暗い部分は黒が濃くなり、明るい部分は白が濃くなり、白黒はっきりとした画になる。逆に、コントラスト低いほど、暗い部分も明るい部分もグレーに寄りのふわっとした画になる。
階調に作用する機能② 明瞭度
コントラストに似た概念で撮影時に設定できることの多い階調に作用する機能で「明瞭度」というものがある。
明瞭度は、ヒストグラムでいうころの山脈全体の特に中心部を引き伸ばすか圧縮するかといった機能である。
実践においては、明瞭度を上げると、ヒストグラム中央部分に近いコントラストが強まるため画像がよりくっきりする。逆に、明瞭度を下げると、ヒストグラム中央部分に近いコントラストが弱まるため画像がよりぼやっとする。
明瞭度はコントラストと異なり、ディジタル画像処理という分野では厳密な定義が存在しない。(画像処理を専門とする大学の教授に質問をさせていただいたところそのような回答をいただいた。)そのため、カメラやレタッチソフトによって適用範囲が少しずつ異なる。詳細は以下の補足項目を参考。
補足:コントラストと明瞭度とかすみの除去
参考記事:"THE DIFFERENCE BETWEEN CONTRAST, CLARITY & TEXTURE IN LIGHTROOM"
(この記事はAdobe社の LightroomClassic を基に記載されているため、 "contrast" はコントラスト、"clarity" はかすみの除去、"texure" は明瞭度のことを指す。)
最初に原文を示した後、日本語による解釈を記載する。原文は読み飛ばしていただいて構わない。
ディジタル画像の調整機能 "contrast"・"clarity"・"texture" はどれもコントラストを調整するという大まかには同一の機能となる。
"contrast" はヒストグラム範囲全体に影響を及ぼす関係上、強くすることによって、特にシャドウ部をより暗く、ハイライト部をより明るくし、更に中間部を減らす。他との違いとして最も強引にディティールを変化させる。
"clarity" はヒストグラム範囲全体に影響を及ぼすものの、特に中間部に強い影響を及ぼす。強くすることで局所的にコントラストが強まり、奥行きやテクスチャがより強調される。
"texture" は "clarity" 同様に中間部を中心としたヒストグラム範囲全体に影響を及ぼすが、その中でも高周波成分に強く影響を及ぼす。(これはおそらく信号処理におけるフーリエ変換時に高域強調フィルタをかけた形である。)強くすることで、結果的にエッジすなわち滑らかではない部分が強調される。
以上がコントラストと明瞭度の違いとなる。
SONY社製カメラ・キヤノン社製カメラではコントラストのみが、FUJIFILM社製カメラでは明瞭度のみが、設定できる。Nikon社製カメラのみ明瞭度とコントラストの両方が設定できる。
注意:"texture" と "clarity"
Adobe社は "clarity" を「かすみの除去」、 "texture" を「明瞭度」と表記しているが、FUJIFILM社やNikon社は "clarity" を「明瞭度」と表記している。(そしてFUJIFILM社やNikon社は "texture" に当たる機能が存在しない。)
FUJIFILM公式ページによると、
とあるため定義によるとどちらかというとAdobe社でいう "clarity" の機能に近そうだったが明確な情報が無かったため、先日FUJIFILM社に問い合わせメールを送った。返答が来次第、記載する。
(2022年07月08日 追記)
FUJIFILM社さんから一瞬で返答が来た。
流石に技術が宝となっていらっしゃる会社さん故、詳細は社外秘のようだ。
しかしながら、最近フィルムシミュレーションを愛してやまないいちFUJIFILMカメラユーザとして、私の利己的な原理の探究心なんかよりもFUJIFILM社さんの技術の方が大事なので、これからもヒミツのまま素晴らしいカメラを出し続けてくださるだけで私は満足なのだ。
ちなみに本当に一瞬で返答が来た上にかなり丁寧なご返事をいただいたので、FUJI機器で分からないことがあれば是非みなさん社員さんたちのお手を煩わせない程度に質問をすると良い気がした。超便利。
またNikon社のインタビューにおいてこのような答えがある。
(木村氏というのはNikon社の開発を担当している偉くて凄い方のようだ。)
Nikon社製カメラもおそらくFUJIFILM社製同様、どちらかというとAdobe社でいう "clarity" の機能に近そうである。
以上のことから、先程の
「SONY社製カメラ・キヤノン社製カメラではコントラストのみが、FUJIFILM社製カメラでは明瞭度のみが、設定できる。Nikon社製カメラのみ明瞭度とコントラストの両方が設定できる。」
を踏まえると、全体の階調を調整しようと思った際は、一旦SONY・キヤノン・FUJIFILMでは何も考えずコントラストか明瞭度の機能がある方を調整すべき。Nikonのみ「ローカル」「グローバル」の違いを意識して使い分けるべき。
階調に作用する機能② 露出補正
「3変数④? 変数ではない変数、露出補正」の章で軽く扱った「露出補正」はこの階調に作用している。
露出補正はヒストグラムにおいて山脈をまるごと左右に移動させる機能である。
この機能を使うことにより、黒潰れや白飛びといった山脈のヒストグラム端へのぶつかりを回避することができたり、全体的に暗過ぎるor明る過ぎる写真を丁度よい明るさに調整するということができる。
実践では、ヒストグラムにおける山脈に対して、左右両端へのぶつかりを無くしさらに山脈の中間点らしき場所をヒストグラム中央に合わせる。(ただし後述のアンダー/オーバーめに敢えて撮る際は中央である必要はない。)
補足:アンダーとオーバー
露出すなわちヒストグラムにおける山脈の位置には大きく分けると5つが存在する。ヒストグラム左から順に「黒潰れ」「アンダー」「適正露出」「オーバー」「白飛び」の5つ(注)となる。
先述の通り一般的に、黒潰れと白飛びは悪しとされており、逆に山脈がヒストグラム中央に位置する適正露出が良しとされている。
その間に位置するアンダーやオーバーは適正とは言えないため好まれないことの方が多いものの、被写体によっては少し暗め/明るめの方が映えるという場合がある。その他にも、RAWのレタッチを行う上でアンダー/オーバーの方が自然な補正をし易い場合がある。
そこで実践において、アンダーまたはオーバーめに撮る必要性が感じられた場合はヒストグラム上の山脈の中間点らしき場所をヒストグラム中央から少し左右へ振らせたものにする。
注:「〜アンダー〜オーバー〜の5つとなる」
「黒潰れ」と「白飛び」はヒストグラムで絶壁が現れているの状態、「適正露出」はヒストグラムで中央地が中央寄りかつ絶壁が存在しない状態、という明確な判断基準がある。それに対して「アンダー」や「オーバー」はあくまで適正露出に対する相対的な [暗い]・[明るい] を意味しており、他3種に当てはまらない状態という曖昧な表現になる。
階調に作用する機能③ シャドウ と ハイライト
撮影時に設定できる階調に作用する機能で第一に挙げられるものが「シャドウ」と「ハイライト」。両者は黒側の話か或いは白側の話かといった違いがあるものの原理的には同一のものとなる。
シャドウはヒストグラムにおいて山脈左寄りの引き伸ばしを行う機能である。ヒストグラムの左10~30%の区間に近いほど、すなわち暗め色を持つ部分ほど、強い影響を受ける。(あくまでヒストグラムの左側に強く作用するが、右側であっても若干の作用がある。)
シャドウが強い(FUJI機でいうとシャドウが+される、LrCでいうとシャドウが-される)と暗い部分が黒に寄り、シャドウが弱いと暗い部分がグレーに寄る。
逆に、ハイライトはヒストグラムにおいて山脈右寄りの引き伸ばしを行う機能である。ヒストグラムの右10~30%の区間に近いほど、すなわち明るめ色を持つ部分ほど、強い影響を受ける。
ハイライトが強い(FUJI機、LrC共にでいうとハイライトが+される)と明るい部分が白に寄り、ハイライトが弱いと白い部分がグレーに寄る。
以上より実践においては、露出補正でヒストグラム全体的な山脈の位置を整えた後、シャドウやハイライトで暗部や明部の山を整える。(実質的にコントラストを暗部と明部で強弱つける機能となる。)
補足:黒レベルと白レベル
主にLrCレタッチの機能でシャドウ/ハイライトと混同しやすい機能に「黒レベル」と「白レベル」がある。
シャドウ/ハイライトがヒストグラムの左右10~30%の区間にあたる暗めの色や明るめ色を持つ部分に対して強く作用する機能だった。
黒レベル/白レベルはそこから更に進みヒストグラムの左右0%~10%の区間にあたる黒や白に対して強く作用する機能である。
黒レベル/白レベル共に強くするすなわちヒストグラムの山脈を両端に引き伸ばすことによりコントラストを強くすることと似た状況に、対して黒レベル/城レベル共に弱くするすなわちヒストグラムの山脈を細く縮めるばすことによりコントラストを弱くすることと似た状況を作り出すことができる。
レタッチにおけるシャドウ/ハイライトと黒レベル/白レベルの使い分けとしては、シャドウ/ハイライトは階調を整え正しい明るさに調整するため、黒レベル/白レベルはコントラストの強弱を調整するために、として使用することを検討すると良いらしい。
階調に作用する機能④ HDR
画像における最大輝度値と最小輝度値の幅、すなわちヒストグラムにおける山脈の左端から右端までの距離のことを「ダイナミックレンジ」と呼ぶ。
多くの構図におけるダイナミックレンジは、256段階すべてを網羅すなわちヒストグラム幅100%近くになるような取り方をすることは稀ため、大抵、露出補正とある程度のシャドウ/ハイライト調整を行えば写りの良い写真になる。
しかしながら稀に、極端に暗い部分と極端に明るい部分が両方それなりの面積割合で存在するような構図に対しては、ヒストグラム幅100%に近いダイナミックレンジを取ることがある。このような構図に対しては露出補正等を行ったところで、アンダー側またはオーバー側どちらか一方が見易くなる代わりにもう一方が犠牲になるか、或いは微妙に黒潰れと白飛びが両方微妙に存在するような画となってしまう。
この問題を解消するための機能が「HDR画像(High Dynamic Range Image)」画像の生成、通称「HDR化」である。
撮影機能におけるHDR化では、カメラが自動的に、露出を変えた写真として同一構図の写真を複数撮影し合成し調整が行われる。この過程を経てHDR化が行われた画像は、黒潰れ/白飛び部分の階調を減らし山脈の原型を保ったままヒストグラム内に収る分布を表す。
結果的にHDR化された画像は、山脈の形は変わらないが幅を狭く取ったことにより、実質的には黒潰れ白飛びの存在しないコントラストを弱くしたような画像となる。
補足:撮影時にコントラストを弱くする機能を実装すれば良い説
黒潰れや白飛びが起きている1枚の画像に対してコントラストを弱くしても両端の階調部分は変えることができない。
階調に作用する機能⑤ トーンカーブ
後日記載。
色味に作用する機能
今までの機能は基本的に造形や明るさに対して作用するものだった。これらに対して色に作用する機能を紹介する。
色味に左右する機能① ホワイトバランス(WB)
「ホワイトバランス(以下、WB)」は様々な状況下において基準となる白を理想の白として補正する機能。
同じ被写体であっても、蛍光灯下だと白っぽい画・太陽下になると黄色っぽい画・夜になると青っぽい画になったり、という光源に拠る変動を抑えるために使用する。
WBを補正するには、簡易的なものでカメラのホワイトバランス機能あるいはシーンセレクト機能がある。大抵のカメラでは「オート」「太陽光」「曇り」「電球」「蛍光灯」など光源名を選択しWBを補正する。
また、Advanced的な機能で、ホワイトバランス機能あるいはシーンセレクト機能には付随してWBを細かく調整できる機能がある。
カメラはこれをxy座標の2変数で表す。x座標は、プラスが大きいと暖色のアンバー(A)(赤と思って良い。)、マイナスが大きいと寒色のブルー(B)(青と思って良い)の色温度。y座標は、プラスが大きいと緑(G)、マイナスが大きいとマゼンタ(M)。上記の光源名を選択する機能はこのA-B/G-Mのプリセットが登録されているイメージ。
[ホワイトバランス]
ブルー(寒色) -<==0==>+ アンバー(暖色)
グリーン -<==0==>+ マゼンタ
WBは勿論光源を補正するためにも使うが、画全体を自分好みの色感に調整するためにも使う。
実践において、初心者は色の影響の強いWBを選ぶと妙な色感になってしまうことが多々あるので最初は [オート] が良いのかもしれない。(プロのカメラマンは初心者にそうアドバイスをする方が多い模様。)
参考:YouTube動画『カメラ初心者がやりがちなホワイトバランスの設定は・・・』聞いて覚えるカメラ塾! さん
しかしながら伝説の名著では……
色味に左右する機能② HDR
先程の階調の章で紹介したHDRは、通常(スタンダードダイナミックレンジ)と比較すると黒潰れ/白飛びしている部分が黒/白単色以外で表されているので色調が増加したように見える。
ちなみに先程の伝説の名著では……
HDRをどう使うかは、皆さんにお任せなのである。
色味に左右する機能③ 様々なエフェクト
カメラには様々なエフェクトプリセットが存在する。
有名なもので言えばFujiの「フィルムシミュレーション」。これに近い機能として、Nikonには「ピクチャコントロール」、Canonには「ピクチャスタイル」、Sonyには「クリエイティブスタイル」というものがある。
エフェクトプリセットは、RGB各々に対しする彩度や色相、コントラストや明瞭度、シャープネス、といった値を各社が定めた複数種類のプリセットとして登録されている。カメラの機能の中で画の雰囲気を最も大きく変えやすい機能となる。
機種によってはこのエフェクトプリセットを軸として、ユーザが各パラメタを詳細に変更できる。
色味に左右する機能④? 機体差
この④と次の⑤はカメラの機能とは異なる色の乗せ方になる。カメラの機能とは異なるものの、撮影から出力(現像)にかけての色を決定する工程の中でそれなりに影響が大きいため記載。
④では機体差を挙げる。機体差は大きく分けると、カメラ本体の主にメーカによる違い、レンズの主にメーカによる違い、フィルターによる違い、の3種類がある。
カメラ本体のメーカによる違いという観点では、カメラメーカに依って色の乗り方が全く異なるという点を押さえる。具体的に、Canonは暖色系が乗り易く、Sonyは青が乗り易いといった具合である。更に、CanonやFujiは「記憶色」、SonyやNikonは「記録色」といった特徴を持った色味が出やすい。個人的にこの記事が分かりやすかったのでぜひ読んで欲しい。まるしか Photo & Art Blog『カメラメーカーの色味・機種の特徴・おすすめのカメラをまとめました』
(師匠からこれを教わる前のかつての自分は何も知らず「青が綺麗だから!」という理由でSONYを買い、「それまで使っていたキヤノンより色感が薄いなあ」とか思っていた。)
レンズのメーカによる違いという観点は、自分は純正レンズのみを多用するためあまり違いに関してわからないのでお許し頂きたい。更にこの記事を読むような初心者寄りユーザの大半がこれから数年は純正、或いはSigma、ギリギリTAMRONのレンズしか使わないと思うので割愛する。
そして最後にフィルターによる違いというものがある。カメラにはレンズの先端に別売のフィルターを付けることができる。「NDフィルター」とか「PLフィルター」とかが有名。単にレンズ露出面の傷防止の役割を持つものもあるが、質感を変えることができるという意味でもフィルターは使われる。自分はあまりフィルターを使わない関係上、こちらも全く詳しくないのでここでは割愛する。フィルターは割とお手軽なのでググっていただきたい。ブラックミストのNo.05がさいきん欲しい。
色味に左右する機能⑤? レタッチ
最後の色味を大きく左右するものとして「レタッチ」が挙げられる。
レタッチと格好良い名前が付いているものの、意味としては写真の画像編集である。レタッチは色や明るさなどぜんぶ込みの写真編集のことである。
結局、撮影時カメラでどうこうできることよりも文明の利器コンピュータの力で捻じ伏せる方が大幅にそして細かく調整できるよね、という話である。
多くのガチ勢は「Lightroom(ライトルーム)」と呼ばれるAdobe社のレタッチソフト "LightroomClassic" を使ってレタッチを行っている(気がする)。ただしLightroomClassicはサブスクの形式を採っており永遠に年額12,000円弱くらいかかる関係上、買い切りの "Luminar" というソフトを使う人もさいきん増えている。
レタッチは奥が深すぎるので本記事では割愛する。
ちなみに撮影形式に「JPEG」と「RAW(ロー)」というふたつがよく挙げられるが、JPEGはともかく、RAWという形式が存在するのは、RAWがJPEGよりも多くの情報を持たせて保存している形式のため、レタッチで変更できるパラメタがWBを始めとして多く更に編集により劣化しづらいためである。
補足として、レタッチを行わず撮った状態のまま世に出すことを「JPEG撮って出し」と言ったりする。
その他の分かりづらい機能
分かりづらい機能① シャープネス
カメラには「シャープネス」という機能が備わっている場合がある。
シャープネスは画像の輪郭の強弱を変更する機能になる。
実践においては、シャープネスを強くすればくっきりとした画に、シャープネスを弱くすればぼやっとした画になる。
補足:シャープネス と 明瞭度(clarity)
「階調に作用する機能③ 明瞭度」でも明瞭度の強弱で画がくっきり/ぼやっとした作りになるといった記述があった。その点では大まかにはシャープネスも明瞭度も同じような影響を及ぼす。
ただし明確な違い存在する。シャープネスは輪郭部分に強く影響を及ぼすため、強い値にしたところであくまでくっきりとした差が出るだけであまり不自然な影響を及ぼさない。
それに対して明瞭度は輪郭部分以外にも色が乗っているような部分であれば強く影響を及ぼすため、強い値にすればするほど明暗差がはっきりと出てしまい、多少劇画チックな画作りになってしまう。
あくまで明瞭度はコントラストを変化したいときに使うものであり、ディティールを変化させたいときに使うべき機能ではないと言えるかもしれない。
この理論的な違いは以下 Advanced. に記す。
Advanced. シャープネスの知識 & 明瞭度との理論的な違い
シャープネスは画像処理における「鮮鋭化フィルタ」と呼ばれるフィルタ処理のアルゴリズムが適用されている。
このフィルタ処理は「空間フィルタリング」のひとつで、空間フィルタリングとはそれぞれの画素すなわちそれぞれのピクセルすなわち粒々ひとつひとつに対して周囲と情報を合わせた計算補正をかけるものである。
シャープネスで用いられる鮮鋭化フィルタでは、周囲と該当画素の微分によって強い勾配をもつ部分(=どうも輪郭になっていそうな部分)に対して、ピンポイントで周辺との差を更に広げる補正をかけている。
それに対して明瞭度では、トーンカーブ変換と同様に、被写体の輪郭をはじめとしたの造形に依らず画像全体の階調毎に作用する調整となる。
分かりづらい機能② 測光モード
カメラにはAutoやAやSのモードにおいて「測光モード」という明るさの基準を被写体のどの場所で定めるか決めるモードがある。
測光モードは大きく分けて大抵「マルチパターン測光」「スポット測光」「中央重点測光」の3種類。(他にも「画面全体平均測光」や「ハイライト優先測光」などあったりもする。)
測光モードの基本はマルチパターン測光。これで大抵の明るさの基準は問題なく自動で決めることができる。
ただし、マルチパターン測光は逆光といった明暗差の激しいもので妙に暗く写ってしまう。そこで、逆光などの構図ではスポット測光を用いて最も注目する部分をピンポイントで測光し明るさを確保する。
中央重点測光はマルチパターン測光の下位互換的な挙動をすることが多いのであまり使わない。
ちなみに、ハイライト優先測光は瑠璃光院に代表されるような構図を作るときに白飛びを防ぐことができる。
分かりづらい機能③ フォーカスエリア
後日執筆。
以上は撮り方の話であったが、ここからは道具に関連する話。
換算 ・ 非換算、 広角 ・ 標準 ・ 望遠
ミラーレス一眼にはセンササイズとして大きい順に「フルサイズ」「APS-C」「マイクロフォーサーズ」の3種類が存在する。
フルサイズの代表格といえばキヤノンのEOS R系統やSonyのα7系統やNikonのD500系統、APS-Cの代表格といえばキヤノンのEOS kissシリーズやSonyのα6000系統やNikonのZ-fcそして富士フィルムXシリーズなどである。
センササイズの違いによって画角や場合により画質が変わったりする。基本的にフルサイズに寄るほど綺麗という認識になる。この違いは特に画角差が現れるのが不便で、例としてセンササイズが異なるカメラ同士が同一焦点距離のレンズを使った場合、撮れる範囲すなわち画角が異なる。
この画角差に繋がる焦点距離の差を異なるセンササイズ間で統一するために「換算」という概念が現れる。基本的にフルサイズの距離、いわゆる「35mm換算」を画角の基準とし、APS-Cとマイクロフォーサーズの焦点距離をこれに補正をする。
35mm換算
= APS-C距離 *1.5(ただしキヤノンのみ *1.6 )
= マイクロフォーサーズ距離 *2.0
更に世の中では35mm換算を基準として広角・標準・望遠を決めている。
広角 |35mm| 標準 |100mm| 望遠
派閥によっては
広角 |35mm| 標準 |85mm| 中望遠 |200mm| 望遠 |600mm| 超望遠
つまり「標準レンズ」と言われているレンズはフルサイズ機でそのレンズを使ったときにこの「標準」の域をカバーしているレンズになる。
しかしながら、これはあくまでフルサイズの話であって、APS-Cの場合は標準が望遠をカバーしていたという話になり得る。
[一般的なAPS-Cの場合]
広角 |24mm| 標準 |66mm| 望遠
派閥によっては、
広角 |24mm| 標準 |55mm| 中望遠 |130mm| 望遠 |400mm| 超望遠
となってしまう。
かつて自分は写真の師匠に教えて貰うまでこれをよく分かっていなかったがなにかネックがあるかというかとそういうわけでもなかった。とは言いつつも、為替のドルの如く「知っておくと分かることが増える」という話なので知っておこう。
(具体的に使えた例として、先日師匠から教えて貰ったのが、「iPhoneは君のカメラで画角18mm」というものがあった。これは、iPhone画角4mm→35mm換算約28mm→APS-C機換算18mm、という話だった。)
ズームレンズ ・ 単焦点レンズ
レンズには大きく分けて2つのレンズがあり、それが「ズームレンズ」と「単焦点レンズ」である。
ズームレンズというのは倍率を変えられるレンズのこと。たとえほんの少ししか倍率が変えられなくてもズームレンズはズームレンズである。ズームレンズの中でも広い範囲をカバーしているレンズを「高倍率ズームレンズ」と呼ぶ。
用語としてズームレンズの広角端を「ワイド端」、望遠端「テレ端」と呼ぶ。例えば24-70mmのズームレンズであれば、ワイド端24mm・テレ端70mmとなる。テレ端の "テレ" はおそらく古代ギリシア語→英語の "遠い" を表す接頭 "tele-" 由来だと思われる。
単焦点レンズというのは倍率が変えられず画角が固定されているレンズのこと。一眼初心者は "iPhoneですらズームが効くのになんでそんな不便なレンズが存在するんだ" と怒りさえ覚える。が、単焦点レンズは存在理由がある。
単焦点レンズが存在する理由は主に2つ。それは「小さく軽いこと」「開放F値の小さいレンズが安いこと」である。特に後者は顕著で、例えばSonyならば24-70mmズームの開放F値2.8のレンズですら25万円に対し、50mm単焦点の開放F値1.8のレンズが3万円台という勢いになる。
大三元 ・ 小三元
ミラーレス含め、一眼レフ用のズームレンズの花形に「大三元レンズ」「小三元レンズ」がある。
発端は不明であるがおそらく確実に語源は麻雀の役の大三元と小三元だと思われ、麻雀役と共通し、大三元小三元共に該当の3種類が揃うと強力な威力を発揮する、小三元の方が手頃で大三元の方が大変、大三元はかなり強力、といった特色がある。
大三元レンズ、小三元レンズ共に以下のような共通点を持ち、
ズームレンズであること
解放F値が統一されていること
広角・標準・望遠の3種類存在すること
相対的に重いこと
相対的に高価なこと
といった点が挙げられ、特に2つ目の「解放F値が統一されていること」がこれらのレンズを大三元・小三元たらしめる所以となる。
先述の通り「解放F値」というのは、例として "XF50mmF1.2" の "F1.2" のようなそのレンズが設定可能な最も明るいF値のことであるが、世の中の大半のズームレンズのデメリットとして、解放F値が大きいこと・画角によって解放F値が変動すること、が挙げられる。
例えば、2022年夏現時点での世の中のエントリーモデル機を挙げると、
キヤノン社:EOS Kiss 10 レンズキット同梱レンズ;EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM
SONY社:α6400 パワーズームレンズレンズキット同梱レンズ;E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS
FUJIFILM社:X-E4 レンズキット同梱レンズ;XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
NIKON社:Z 50 レンズキット同梱レンズ;NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
といったように、解放F値はどのメーカのエントリーモデルのレンズキットであっても画角によって変動し、ワイド端で3〜4台、テレ端で5〜6台といった具合である。
このデメリットを解消したレンズが本項目「大三元レンズ」「小三元レンズ」である。
片方、大三元レンズとは、解放F値がF2.8通しのレンズのことである。
そしてもう一方、小三元レンズとは、解放F値がF4(F4.0)通しのレンズのことである。
大三元・小三元レンズは先ほど挙げられたズームレンズの描写デメリットを払拭し、解放F値が小さく、画角に依らず解放F値が固定、となっている。
F値項目等で記述した通り、解放F値が小さいことは、より明るく、よりボケやすく、より鮮明に写る、といったメリットがある。
そして、大三元と小三元の相対的な違いとして
大三元は明るくボケやすい、小三元は暗くボケにくい
大三元は重い、小三元は軽い
大三元は高価、小三元は安価
といった違いがある。
例えばFUJIFIMのレンズであれば、標準域大三元に当たる "XF16-55mmF.28 R LM WR" は655gでメーカショップ価格142,450円、標準域小三元に当たる "XF16-80mmF4 R OIS WR" は440gでメーカショップ価格103,950円、といった具合である。
これらの違いはあくまで大三元と小三元の比較であり、小三元ですらただのズームレンズと比較すると圧倒的に明るくある程度はボケやすい上に、キットレンズ程度のレンズ群と比べたら重く高価である。
(ちなみに大三元と小三元にこのような差がでる理由としては、基本的にF2.8という描写力の高い大三元の方がレンズ構成が複雑なため、F4の小三元と比較し、重量は重く、高価となる。)
また以上の特色はあくまで「大三元・小三元」の「大」「小」の部分のみ触れていたが、「三」に当たる部分すなわち「広角・標準・望遠の3種類存在すること」という点も特筆すべき特色である。
大三元・小三元共に、どのメーカにおいても必ずといって良いほど広角・標準・望遠域に対応した3種類のレンズが販売されている。
例えばFUJIFILMのレンズであれば、大三元で "XF8-16mmF2.8"・"XF16-55mmF2.8"・"XF50-140mmF2.8"、小三元で "XF10-24mmF4"・"XF16-80mmF4"・"XF18-120mmF4" といった具合である。(画角とF値に注目しているため、RやLMなど詳細なレンズ特性名部分については省略している。)
このように同一解放F値という描写力の似たレンズで幅広い画角をカバーできることになるため、大三元あるいは小三元をすべて持っておけばとりあえず困ることはない、という話になったりもする。
(しかしながら先述の通り、小三元ですら揃えると合計重量1.5kg前後かつ合計金額30万円近くの定価、大三元に至ってはメーカによって合計重量2kg前後かつ合計金額60~80万の定価となるため、是非はわからない。)
Appendix. FUJIFILM機材あれこれ
ここからはFUJIFILMの機材に限った特殊機能等について記述する。
FUJIあれこれ① 設定変数
F値 / SS / ISO感度
フィルムシミュレーション
カラークローム・エフェクト
カラークローム・ブルー
グレインエフェクト
ダイナミックレンジ
トーンカーブ
カラー
シャープネス
明瞭度
FUJIあれこれ② フィルムシミュレーション一覧
PROVIA
Velvia
ASTIA
クラシッククローム
PRO Neg. Hi
PRO Neg. Std
クラシックネガ
エテルナ
エテルナブリーチバイパス
(以上、有彩色のフィルムシミュレーションに限る。)
フィルムシミュレーション#1 PROVIA/スタンダード
概要:
シーン:
フィルムシミュレーション#2 Velvia/ビビット
概要:
シーン:
フィルムシミュレーション#3 ASTIA
概要:
シーン:
フィルムシミュレーション#4 クラシッククローム
概要:
シーン:
フィルムシミュレーション#5 PRO Neg. Hi
概要:
フィルムシミュレーション#6 PRO Neg. Std
フィルムシミュレーション#7 クラシックネガ
概要:
[テクニック] クラシックネガは、同『FUJIFILM画質完全読本』によると、グレインエフェクトで粒状感を出したり、画角32mm(APS-C換算約21mm)で写ルンですにかなり近い質感になるという。
フィルムシミュレーション#8 エテルナ
フィルムシミュレーション#9 エテルナブリーチバイパス
概要:
FUJIあれこれ③ FUJIレンズ記号の意味
レンズに現れる順。
XF / XC … XFが強い。XCは小さい。
R … 絞りリング有(Ring?)
LM … リニアモータ有(Linear Motor?)
OIS … レンズ内手ブレ補正有(Optical Image Stabilization)
WR … 防塵防滴有(Water Resistant?)
Macro … マクロレンズ
PZ … パワーズーム有(?)(Power Zoom?)
APD … アポダイゼーションフィルタ有(APodization Filter)
参考文献
『ディジタル画像処理』, 公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)出版
『FUJIFILM 画質完全読本』, 玄光社 出版
Bryan PETERSON 著『ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 露出を極める』, 日経ナショナルジオグラフィック社 出版
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