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脚本の科学

ハリウッド形式の脚本術で散々言われているテクニックが映画で繰り出される際、脳はどうなっているのか?

既存の文系的なアプローチを、理系的に説明して、それらが実際に脳科学的にも有効だと裏付ける本書。

脚本術の本を読み漁っている人からすれば特に目新しいことは書いていないが、「なるほど、映画鑑賞中、脳はこうなっているのか」という発見がある。

また、別に『本を読む時に何が起きているのか』という著作もあるが、そちらは内容がアート志向なので直接読むことをお勧めする。こちらにも脳科学的アプローチが「ちょっぴり」入っている。


ボトムアップと、トップダウン

ボトムアップは知覚、外からの情報。

↓ と照合する。

トップダウンは、脳のデータベース。


人間の脳は絶えず新しい情報を既に知っていることにつなげる。

「彼・彼女は生き延びるのか、勝つのか?」といったフックの問いを生み出せ。

リアリティーのある会話に出てくる優れたストーリーは編成の分泌物の流れを解放しそれがポジティブフィードバックの力を確立する。これが因果的な説明のあくなき探求、および私たちが感情的に つながるメインキャラクターと結びついて観客を虜にする脚本の切り札。

コントラストの伏線

観客にある特定の結果が起きると信じさせるような手がかりを与えておいて、その反対の結果を見せる。

お笑い芸人なんかがそう。オチがおもろいのは、予想の斜め上だから。


インフォダンプ--状況説明の科学

状況説明を「ケチって」伝え、観客による好奇心の創出によって伝えられる。

パズルのピースのように

スクリーンで起こっていることを、現実世界の経験に結びつけるプロセスこそ、脚本家が状況説明において巧妙に使用できるものだ

「 現実」を持ち込む。 観客のスキーマもしくは映画や様々な脚本や舞台についての広範囲にわたり既存の知識が物語の理解をさせるために役立つ。

ワークショップ

居酒屋で作戦会議しているのを盗み聞きする場面。 セリフを読者に手がかりを与えるようなやり方で書き、その手がかりを照合することで別のキャラクターたちが話していることについての理解を乱すようにしてほしい。盗み聞きしているキャラクターは作戦会議のキャラクターたちと対面しようとする意志を持つ話しかけたいと思わせる。そういった意外な結末 を考える。

原因と結果の科学

脚本家に覚えておいてほしいのは、因果的な説明を探そうとする期待こそ、観客がいわゆるフック「鉤」の問いを作り出す理由であると言うことだ。

「彼女はこの窮地から脱出できるのか? 彼女は〇〇するのか?」など。

言い換えれば、ボトムアップの視覚的・聴覚的情報の流れは文字通り感情に包み込まれていて、観客は意識していないかもしれないが、その感情こそがボトムアップの情報の流れから導き出される問題・注意・関心を方向付け予見する。

深く根付いた「常識」は脚本家の道具箱の中で最も見逃されているものかもしれない。 生き残るための行動・必要性が満たされる時、私たちは心地よく感じ、また心地よく感じる事はゴールが達成されたことと不可分の関係にある。

宙吊りの原因は、因果関係の人間のこだわりを利用することによって予見を作り出す。 もしキャラクターが自らの欲望や目標に言及すれば、あるいはまだ起こってもない出来事を暗示すれば、観客はこれから起こるであろうその出来事を虎視眈々と待ち受けることになるだろう。

葛藤の 科学

感情的ジェットコースター

アドレナリン、ドーパミンその他の興奮性の化学物質の原因を生み出してシナプスに洪水を起こすことで観客の注意を保つ

緊張と弛緩を巧妙に変化させる事によって葛藤を生み出すこともできれば、観客の心臓の鼓動と気を減速させて、成功を予感させることで一時的な解放をもたらすこともできる。 タイミングが重要である。脳は素早く反応する道具だ。成功による安堵のサインが、次の瞬間にはトラウマの警告を発する。

かっちりとしたセリフを避けるには

よく言われるのはサブテクスト。

さらに有益な思考法は、むしろ「間接的話法」あるいは「間接参照」indirectionの問題とみなすことだ。 つまり隠喩、直喩、誇張法、換喩、アイロニーなどだ。

こういった「間接参照」の使用は、私たちの極めて葛藤に満ちた知覚的・認知的情報処理とマッチする葛藤を表現する。

脚本執筆と映画政策にアプローチするための--そしていかに他人とは違って、なおかつ実力者でいられるかと言う難問を解くための--最良の方法は、ルールと言う観点からではなくむしろ効果と言う観点から考えることだ。 つまり、脚本家/観客が観客にいかなる効果を擁護したいのかということだ。このことが脚本家が単にルールに従う人から真のクリエイターに変貌することを可能にする。観客にいかにして影響を及ぼすかについて決定を下すのがクリエイターだ。

プロのように学び、アーティストのようにそれをぶっ壊す。

まとめ

本書には、『世界に1つのプレイブック』や特に『スター・ウォーズ』を神経科学で読み解いて説明すると言う興味深い内容が書かれている。

特にスター・ウォーズは1977年の公開時だけでなく、それ以降もずっと観客の知覚認知システムに影響及ぼすと言う快挙を成し遂げてきた。そのやり方は40年間1度も時代遅れになったことがない。今、このシンプルなやり方を真似れば、あなたも400億ドルを稼ぎ出せるかもしれない。

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(個人メモ)SFを書くときにもう一度これを読み返すこと。


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