見出し画像

まちのゲストハウスにちょうどよい建物とは

 もう1軒ゲストハウスを開業するとしたら、今と同じような物件を探すと思う。それだけ、1166バックパッカーズの建物は地方都市における交流型の小規模ゲストハウス(「まちのゲストハウス」、と呼んでみる)向きの物件だと思う。これからゲストハウスを開業したいと思う方にヒントになればと思い、その理由を書いてみる。

外と中の境界線を曖昧にする

 旅人同士や地域住民との交流を生み出したい「まちのゲストハウス」は、館内と館外の境界線を曖昧に作りたい。それには道に面したところに窓はほしい。1166バックパッカーズではある頃からベンチも置いた。「ちょっと休ませてな」と言って近所のおじいちゃんたちが座ってくれることもあれば、ベンチで荷物の整理をしている海外ゲストに通りすがりの人が挨拶してくれたり。「実は毎日通勤で、ここの前通ってます」なんてスーツの人が入ってきてくれたこともあった。

時間帯によって、外から丸見えだったり、その逆だったりする

玄関と客室の動線上にラウンジを置く

 1166バックパッカーズの図面を書いてみた(ちょっと簡略しているところもあるが、おおよそ正しいと思う)。客室は2階。そこに行くにはラウンジを通過しないと行けない。この作りはアタリだった。初めてのゲストハウス宿泊だったりすると、「私ラウンジに行っていいのかしら」「ラウンジで何したら良いんだろう」と緊張もあるが、チェックイン時に一度ラウンジに座っていれば、その後のラウンジ滞在はぐっと身近なものになる。本棚がある、お茶がある。そして万が一気まずければ(そんなことはないが)そのまま玄関で靴を履けばいい…。

建物の問題点としては、水回り。トイレ、シャワーを改修したい(が予算が…)。
通路のようなラウンジなので、なんとなく座って、なんとなく会話に入りやすい。

フレキシブルに部屋割りのできる客室

 入ったことがないひとも多いと思うので、2階も図面をおこしてみた。階段を上がって一番手前にあるのが男女混合相部屋(通称・ミックス)。ここは手前の6畳と奥の8畳に襖で間仕切りができる(図面内のベッドは2段ベッド)。
 次は個室。6畳の和室に布団を敷く。基本的には2名で使ってもらうが、ファミリーなどでは3名で使うことも。
 スタッフルームは4.5畳。1名が住み込み中。決して広くはないが、10年くらい前の小規模ゲストハウスはスタッフはたいていドミに住んでいたので、それに比べるとまぁ、悪くはない(と思いたい)。
 一番奥に女性専用相部屋(通称・女子ドミ)。フローリング6畳でここは2段ベッド。
 この部屋の何がいいかというと、グループで旅行に来られた際に、割り振りしやすいということ。例えば、1名客はドミトリー。2名だと個室またはミックスの手前(前述の通り奥の間と間仕切りができる)。3名だと個室。4名だと女子ドミを貸切に。そういう具合に5名、6名、7名、8名と部屋を組み合わせながら対応が可能。

実は開業時は今の女子ドミが男子ドミで、今のミックスが布団を5枚敷く女子ドミだった。

90余年、この建物はどんな景色を見てきたのだろう

 建物の良いところは他にも多々あるのだけれど、今日はここまで。1166バックパッカーズのこの建物は、築90余年だそう。私が借りて13年。それより以前に何度か壊されるピンチもあったのかもしれない(なかったのかもしれない)。要所要所で誰かがこの建物を残そうとしたから、私がバトンを引き継げたのかもしれない。

2010年、借りた当初。ラウンジがある場所。大工さんひとり来てもらっていた。
見よう見まねで内壁、外壁の塗装。近所の人から「うちも塗り直しお願い〜」なんて言われてた。

ゲストハウス営業に物件を貸すのは◎

 ゲストハウスは海外の方を含めて不特定多数のひとが出入りする場所。大家さんとしては普通の住居として建物を貸す方が安心という考えもあるが、一方で、我々は毎日4.5時間をかけてこの建物を清掃している。借りた時よりも確実に綺麗な状態をキープしている。しかもスタッフルームがあり、毎日誰かしら宿直をしている。何が言いたいかというと、「ゲストハウス営業に物件貸すの、けっこう良いと思いますよ」と大家さんに言いたい(ただ、そんなふうに綺麗に使う宿主だけではないのも実情かもしれない)。
 1166バックパッカーズの建物は、2010年にナノグラフィカの空き家見学会で見学し借りた物件なんだけれど、大家さんは「ゲストハウス、面白そうじゃない〜」「(入れたばかりの風呂釜壊さなければ)改修は何したっていいよ」と言ってくれ、家賃も下げて開業を応援してくれた。そういうよい巡り合わせのおかげで、この素晴らしい建物で営業させてもらっている。愛着しかない。

借りる直前は「三和観光株式会社」さんの事務所+民家。それより以前はクリーニング屋さん。
大きな改修はしていないが、大工さんが天井を落としてくれたり、水回りを整えてくれた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?