「原爆」をテーマに3つの作品を紹介します

 8月6日に広島で、8月9日に長崎で75回目の原爆の日を迎えました。「note」をはじめた時期が時期なので、戦争の作品の紹介が続きますが、ご容赦いただきたいと思います。きょうは「原爆」をテーマに3つの作品を紹介します。最後の1つは映画ではなくドラマです。

■映画『ジョーンの秘密』

 8月7日から東京・TOHO シネマズ シャンテほかで公開されている映画『ジョーンの秘密』はイギリス史上、最も意外なスパイの実話をもとに、英国の作家ジェニー・ルーニーが書き上げ、ベストセラーとなった小説を映画化したものです。

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 世界がミレニアムに浮かれていた2000年、驚愕のニュースがイギリス国内を駆け抜けた。ロシアのKGBに核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”が、MI5の手によって暴かれたと報道されたのだ。だが、人々に衝撃を与えたのは、その事実よりも容疑をかけられた“その人物”だった。まさに私たちの隣に住んでいるような80代の老女だったのだ。ジョーンは信じられないほどの過去を隠し続けて静かに生活を送っていた。
 夫に先立たれ、仕事も引退したジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)、イギリス郊外で穏やかな一人暮らしを送っていた。ところが、2000年5月、ジョーンは突然訪ねてきたMI5に逮捕されてしまう。ロシアに機密情報を流したというスパイ容疑だった。ジョーンは無罪を主張するが、先ごろ死亡した外務事務次官のW・ミッチェル卿が遺した資料から、彼とジョーンがKGBと共謀していた証拠が出てきたというのだ。
 捜査官の取り調べは、1938年まで遡る。ジョーンがケンブリッジ大学で物理学を学んでいた頃だ。事の始まりは、同じ学年のユダヤ系ロシア人ソニア(テレーザ・スルボーヴァ)との出会いだった。ジョーン(ソフィー・クックソン)は、彼女に誘われて参加した共産主義の会合で、ソニアの従弟のレオ・ガーリチ(トム・ヒューズ)に紹介される。カリスマ性を放つレオと、たちまち恋におちるジョーン。ミッチェル卿と知り合ったのもその会だった。

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 次の尋問は、1941年、原子力開発機関で事務員として働き始めた頃に及ぶ。ケンブリッジでトップの成績だったジョーンは、プロジェクトリーダーであるマックス・デイヴィス教授(スティーヴン・キャンベル・ムーア)にその才能を認められ、原爆開発という機密任務に参加することになる。
 すると、その情報を仕入れたレオに、原爆の設計図や研究結果をロシア側に提供するよう要求される。レオのことは愛していたが、共産主義に賛同できないジョーンはきっぱりと断り、レオに利用されているだけなのかと傷つくのだった。
 1945年、アメリカ、イギリス、カナダの協力が実り原爆実験は成功。アメリカは、8月6日に広島、8月9日に長崎へ原爆を落とす。ジョーンは何十万もの人々が亡くなったというニュースを聞き、焼け野原の映像を見て激しく動揺する。
 やがてジョーンの名前と容疑が報道され、ジョーンは自宅前で記者会見を開くことを決意する。果たして、彼女が発表した“真相”とは?

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 ソ連KGBに核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”ジョーン。仲間や家族を裏切ってまで、何を守ろうとしたのか、そして、ジョーンを突き動かしたものとはいったいなんだったのか?

 本作で描かれた「ジョーンの動機について」聞かれたジュディ・デンチは、「映画の中では 彼女は広島の原爆投下を知り、行動を起こすの。私自身も広島のことはよく覚えてる。そのあとすぐに長崎が続いたのよね、ショックを受けたから彼女の気持ちもわかる。彼女は不公平を是正すべきだと信じてた。“一方に情報が偏るべきではない”とね」と、語っています。

 「巨大なテーマを扱った小さな映画」と監督のトレヴァー・ナンが表現する本作。ジョーンをスパイ行為へと駆り立てたものは広島と長崎への原爆投下に恐怖を感じ、二度とこんなことが起きないようにしなければという気持ちだった――。すべての国が同じ機密情報を持っていれば、世界はより安全な場所になると考えたジョーンのとった行動は果たして正しかったのか? クライマックス、ジョーンのスピーチに、今を生きる私たちに深くつながる物語であることに気づかされます。

■ドキュメンタリー映画『ヒロシマ・ナガサキ:75年前の真実』

 2つ目は、8月2日より動画配信サービス「Hulu」で独占配信中 (字幕版、吹替版、英語字幕版)のHulu × ヒストリーチャンネル共同製作ドキュメンタリー映画『ヒロシマ・ナガサキ:75年前の真実』です。

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 本作は、イギリスの有力製作会社「October Films」により、広島と長崎への原爆投下から75年の節目を迎える2020年に向けて製作されました。監督にはドキュメンタリー作家のジェイムス・エルスキン(『氷上の王、ジョン・カリー』、『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)を起用。

 「原爆を産み出したマンハッタン計画を遂行する研究者たちの焦燥や葛藤」が当事者たちの肉声と実録映像をのみ通じて語られるアメリカ側の視点と、「原爆投下前の日本の日常風景、そして被爆直後の焼け野原と化した広島と長崎の記録映像と被爆者たちの声」で語られる日本側の視点、日米双方を360度の視点で構成。当事国ではないイギリスのOctober Filmsが製作することで、原爆がもたらした日米の姿を客観的に捉え、真実を時系列に描いています。

 最新技術でクリアになった当時の音声とデジタルリマスターでカラー化した映像には、双方で直接的に関与した人々の声が記録されています。また、この作品には原爆投下後の日本を撮影したモノクロ映像(アメリカ軍が日本から強制徴収した映像)や、戦後75年の時を経て初公開となるアメリカのクルーが撮影した被爆地の映像、原爆の開発を推進した研究者たちの肉声なども含まれています。

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​■国際共同制作 特集ドラマ『太陽の子』

 8月15日にNHK総合/BS4K/BS8Kで放送される特集ドラマ『太陽の子』(後7:00~8:50)。事実をベースに創作された物語です。

 太平洋戦争末期、京都帝国大学の物理学研究室で原子の核分裂について研究している石村修(柳楽優弥)は、海軍から命じられた核エネルギーを使った新型爆弾開発のための実験を続けていた。空襲の被害を防ぐための建物疎開で家を失った幼なじみの朝倉世津(有村架純)が、修の家に居候することになる。そこに修の弟の裕之(三浦春馬)が戦地から一時帰宅し、久しぶりの再会を喜ぶ。爆弾開発の実験がなかなか進まないなか、研究室のメンバーは研究を続けていく事に疑問を持ち始める。そして、裕之が再び戦地へ行くことになった矢先、広島に原子爆弾が落とされたという知らせが届く。研究者たちは広島に向かい、そこで焼け野原になった広島の姿を目撃するのだった。

 このドラマと違う視点で描いた国際共同制作映画『太陽の子』(公開日未定)も制作される予定です。

■写真クレジット

映画『ジョーンの秘密』(C) TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018

ドキュメンタリー映画『ヒロシマ・ナガサキ:75年前の真実』(C)2020 A&E Television Networks. All Rights Reserved.

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