織部 ひかる

やらねば成れぬ何事も

織部 ひかる

やらねば成れぬ何事も

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今思い返せば、あれは被災だった

いつものように、バイト先で後片付けをしていた時、急に地面が揺れた。 熊本はもともと地震が多く(今振り返ると多かったが、あの時はこんなもんだと思っていた)地面が揺れることは度々あった。 だから、これもその一つだと思ったが違った。 立っていられないほど、一瞬でこれはまずいと悟るほどの揺れ。 調理場の料理人がだっと外に駆け出していくのを見て、本能的に外に出た。足元は砂利で、目の前には一緒にバイトに入っていた母と同い年くらいの女性。 そんなに親密な仲ではなかったが、確か手を

    • それでも僕らは通勤する

      いつもの満員電車。 出勤前の憂鬱に包まれた車内はマスクをした人々で溢れかえっていた。布製のマスクに防塵マクス、さらにガスマスクなど多種多様なマスクが目に映る。 このご時世、どこで買い占めたのか聞きたい気持ちをぐっと堪えて、僕は車窓を眺めた。 朝焼けに輝くビル群。その周りをのそのそと歩くゾンビたち。 西暦20××年。日本は未曾有の大災害に見舞われていた。 大陸の真ん中。鬱蒼としたジャングルかどうかは知らないが、そこから未知のゾンビウイルスが広まった。 最初はテレビで

    今思い返せば、あれは被災だった