ブレスオブファイアシリーズの考察 1


 カプコンのブレスオブファイアシリーズといえば、スーパーファミコンを遊んでいた世代の我々には懐かしいRPGタイトルのひとつです。第一作の発売が1993年。それから3年前程にサービスの終了したスマートフォンゲームの「白竜の守護者たち」までを含めて販売されたタイトルは6本(アプリを除く)にもなります。

 このシリーズの大きな特徴は主人公がすべて「リュウ」という名前で、その名の通りドラゴンに変身する力を受け継いでいるということにあります(名前は変更できます)。

 ですが、では「すべての作品がひとつの世界観を共有しているのか?」というとこれは必ずしもそういうわけではありません。

 シリーズ中実際に「続編」であるのは1と2だけで、3は1との間に何か関係性があることをにおわせながら直接の繋がりについては明示されていませんし、4に至ってはほぼ別物といってもいいくらい雰囲気も世界観も違います。

 しかし、ではこれらはまったく別の独立した作品なのかというとそうともいえない節がある・・・そうしたわかり難さがまた想像力を刺激してくれる面白さでもあるのですが、今回はそれについて書いてみたいと思います。

 さて、もともとブレスオブファイア1とその続編にあたる2では、主人公リュウは「邪悪な神と戦う勇者」という存在でした。

 このあたりはおおよその王道RPGといっていいでしょう。ところが3になると敵は同じくやはり「神」ではあるものの、必ずしも邪悪な存在ではなく「世界を統括するシステム」のようなものとなってあらわれてきます。

 そして、4ではボスこそ同じく「神」ではあるものの、実は主人公と重要なつながりを持ち、彼に「本当に邪悪な存在はむしろ人間なのではないか」という問いかけをしてくる存在でした。

 こうした変化は一体どこからはじまったのか。

 それを考えるために、まずやや無謀ではありますが1~4までの作品を時系列順に並べた場合どうなるのかをまとめてみたいと思います。
 以下は私見になりますが、作品の内容を見ますと可能性が高いのは。

4 → 3 → 1 → 2

という順番か。または

4 → 1 → 2 → 3

のいずれであろうと思います。
 詳しくは後でまた触れますが、このうち2の後に3の世界があるとすると作中の核心である「世界の荒廃と竜族の滅亡」についての物語に矛盾が生じてしまいますし、4にいたっては「そもそも竜族はもともと世界にいる存在ではなく別世界から召喚されるもの」という前提が崩れてしまうため、1の前にあるとは考え難いためです。
 そこで今回は一番全体のシリーズに関連があるとした場合に矛盾なくまとめることができる

4 → 3 → 1 → 2

という順番が正しいとした仮設に立って考察してみたいと思います。

 まず、この順番になる可能性が高いだろうと判断した大きな理由は主人公であるリュウと深い関係のある「竜族」の存在です。

 彼ら竜族はブレスオブファイア1の世界では「白竜族」と「黒竜族」とに分かれており、白竜族の集落の規模はそれほど大きなものではありませんが、黒竜族は竜族の強大な力で帝国を築き上げるほどに繁栄しています。

 しかし、作中でこの二つの種族は激しい戦いを繰り広げることになり、その結果白竜族はリュウを残してほぼ全滅。黒竜族の帝国も崩壊することになってしまいます。

 その結果、ブレスオブファイア2では「封印の扉」の先にあるドラグニールという地下都市に生き残りの多くが逃れ辛うじて生活しているという状態になり、やがて甦るであろう「邪悪なもの」を監視しながら細々と生活しているまでに衰退してしまいました。

 ところが変わって3では彼ら竜族を「狩る」ようにと女神ミリアからの命令を受けた女神の僕であるガーディアン種族との戦いの結果、わずかな生き残りを残してほぼ絶滅しているため、1以降の世界観とは大きく隔たりが生じてくるのです(ただ、1との関係をうかがわせる伝承が竜族の聖地にはありますが)。

 そして、4ではそもそも「竜族」という種族自体が登場していません。

 こう見ますとリーズ全体を通して竜族が最も繁栄していた時代は1であるということになります。

 そうすると、もしもシリーズ全体がひとつの世界であるとした場合、まず竜族自体が登場していない4がもっとも古い時代であると考えるしかなくなるわけです。

 次に、竜族以外の全シリーズに共通して登場しているキーワードを見ていきましょう。

 まず浮かんでくるのが1、そして3で主人公たちの最大の敵となった存在である「女神ミリア」。

 続いて、1~4のすべての作品に共通して出演している魔法使いの「ディース」。

 そして、2~4にその名前のある、植物の王ともいえる「賢樹」。

 の三つになります。

 ミリアは2に登場こそしていませんが、作中でラスボスが「わが母神ミリア」と口にしていることから、やはりここでも作品と大きく関わっていることがうかがえます。

 では、このミリアという神は一体何者なのでしょうか。

 まずブレオブファイア1の時代。

 ミリアは強大な力を持った邪悪な女神として伝承されている存在であり、その力を欲した黒竜族たちによって復活が企てられることになりました。

 よくある「邪神を復活させて世界を手に入れよう」という、ものです。

 この作中のミリアは少女の姿であらわれますが、戦いになると「人類は滅ぶべき」といって本性をあらわにし、最後は巨大な怪物となって主人公たちとの死闘の末に敗れ去ることになります。
 しかしミリアから生まれた「地上の生き物たちへの憎悪」ともいうべきものは、後に新しい邪悪な神。ブレスオブファイア2の邪神「エバンス」を生み出すことになるのです。

 こう見てしまうとミリアは純粋な悪の神、という感じがしてしまうのですが、そうしたイメージを覆すのがブレスオブファイア3に登場した「女神ミリア」の存在です。

 3の女神ミリアは1と同様に作中の「ラスボス」となっていますが、その性格は1のミリアが人類をはじめとする地上の生き物たちにすさまじいまでの憎悪を持っているのに対してむしろ世界を愛しむ慈母の女神であり、荒廃した世界を再生、維持、管理していました。
 彼女によると、かつて大きな争いの結果滅びかけた世界を分断し、自分は世界の最果てから人類の生活に必要最低限の技術を与え、世界が再び荒廃することにないようにモンスターまでも含めたすべての種が維持されるようにしているというのです(ここでミリアがモンスターの母神であることも重要)。

 ところがあるときに竜族という強大な力を持った種族が出現し、これが将来世界の秩序を破壊するのではないかと危惧した結果、自身を信仰する部族に特殊な力を与えて「ガーディアン」という種族をつくり、竜族を襲撃させて滅ぼしてしまいました。

 主人公のリュウは竜族の数少ない生き残りにして、もっとも強い力を持つ存在であるため、できることならその力をすべて失くして女神ミリアの作り出した世界で平穏に暮らして欲しい、と彼女はいいます。

 ですが、地上は女神の意志のもとで統治されるべきではなくそれぞれの生き物が自分たちの意志で歩む段階に入っていると考えたリュウたちは、ここでミリアと戦い打ち破ることになります。

 このときリュウにアドバイスをするのが、彼の仲間の中に紛れ込んでいた「賢樹」です。

 「賢樹」は世界中の植物をつなぐネットワークのようなもので、ミリアと賢樹の会話によるとミリアが生まれるよりもさらに古くから存在していたそうです。
 では、この女神よりも古くから存在している賢樹とは何ものなのでしょうか。

 ブレスオブファイア4では「召喚竜」という、特殊な儀式によって呼び出された「神」ともいうべき強大な力を持った竜の種族が存在していました。

 そして、この召喚竜の一体に「賢樹」樹竜という名前があります。

 そこで、もしも、この樹竜が後の賢樹になった存在だとするとミリアがこの世界にあらわれたのはブレスオブファイア4の後。すでに賢樹が世界にいた時代ということがここで確定するわけです。

 しかもこの4の時代がもっとも古代に位置すると考えられる理由には竜族が「来訪者」であることに加えて、人類が科学と魔法の融合した極めて高度な文明を営んでいたということも重要でしょう。

 科学力という点から見れば、もっとも盛んだった4の時代に比べると、3ではミリアのいうように一度世界が荒廃したため人類はわずかに古代の科学技術を復元して生活のために利用するというレベルにとどまっており、1の世界にたっては、すでにこうした科学文明の多くは失われている段階にあり、ほとんど登場さえしません。

 つまり

超古代(科学文明全盛期) → 古代(科学の残存した時代) → 中世(剣と魔法の時代)

 ということになります。

 一度は科学文明を発達させた人類が、再びそれを封印してしまった理由についてはわかりませんが、可能性として高いのは3の古代科学文系はミリアによって管理されていたものですから、彼女が倒れたことによりなんらかの変化が起こったと考えることことができます。

 その痕跡のように2にはところどころに古い時代の科学文明の遺産のような機械やシステムが見られますが、これらは通常の生活をする人々にはほとんど活用されることはありません。

 ですからもしも科学文明の最後の管理者がミリアであるとするのなら、3のミリアは自身を女神と称していても、むしろ「旧世代の意志を引き継いだプログラムの統括者」のような存在だったと考えることもできます。
 このように見ると、この統括者を破壊した3の主人公たちの行動が結果的には科学文明と人類が決別するに至った最大の理由であり、4の世界観の延長に終止符を打ったというストーリーが成り立ちます。

 そしてその後なんらかの理由で「欲望を叶える邪悪な女神」として伝承されたミリアが、人類と竜族とを再び滅ぼそうと考えて動き出したのが1以降の世界ということになるわけです。

 ではそもそもこのミリアというある種矛盾した存在はどのようにして生まれたのでしょうか。

 それを考えると「ブレスオブファイア4の世界には伝承すら見られず、召喚竜といわれる『神々』よりも後に、彼女が神として登場した」という点が浮かび上がるのですが、ここにどうもシリーズをつなぐ裏の物語があるようなのです。


 ~続く~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?