小泉進次郎について

登場人物
O氏・・・政治に強いと思われてるツイッタラー
A氏・・・学生
B氏・・・ある団体の主催者

 O「はじめましてOです。今日はA君に誘もらってお邪魔させていただきました。どうぞよろしくお願いします」
 B「Bです。以前からOさんのことはA君からうかがっていたので、お会いできてうれしく思います」
 A「Oさんはボクが知る中では一番霊感というか・・・先見というか、とにかくそういうのがある人だと思っているんです。だから一度Bさんに会ってもらった方がいいかなと思いまして」
 O「霊感は・・・どうかな。自分じゃよくわからないんだけど。普段は政治のこといい加減につぶやいてるだけだしね」
 A「でもいうことはいつもかなり当たってるじゃないですか」
 O「うーん・・・当たることは当たってるのかも知れないけど、それでお金になるわけでもないし」
 A「基本的に先見者は評価されないもんですから」
 O「そういうもんか。あんま嬉しくもないな」
 B「我々の活動のことはすでにA君から聞いていると思いますが」
 O「あ、はい。一応ネットの方も見させてもらっています。ときどき私のフォローしてるタイムラインにも流れて来ますし」
 B「ありがとうございます。それで、我々の運動にも関係することなんですが、今回はOさんに今後の政治情勢の展望などをうかがいたいと思いまして
 O「今後の政治情勢ですか・・・うーん、しばらくは今のままの状態が続くんじゃないかとは思いますけど」
 B「はい」
 O「安倍政権は多少支持率が落ちてもすぐに瓦解するような感じではないですし、野党の支持率もまったく上がってませんから。有権者の多くは別に安倍政権にそこまで満足しているわけではないものの、それに代わるような人が今のところは出てこないことはわかっているというか。小池百合子も都知事になってしばらくは勢いがありましたけど、前回の衆議院選挙でだいぶ人気なくしましたから、対抗軸にはならないでしょうし」
 A「あれもし民進党と合流してなかったらどうなってたんでしょうね」
 O「たぶん衆議院でも結構な議席とれてたと思うし、もうちょっと人気も続いてたんじゃないかな」
 B「小池さんの場合やはり築地移転の問題が長引いたことなどが支持率の低下に響いたんでしょうか」
 O「いえ。それよりは選挙のときの言動の方が大きいかと思います。民進党と組んだかと思えば、意見の合わない議員は排除するみたいなこといってマスコミにずい分叩かれてましたから、あれが効いたんじゃないかなと」
 A「本来あれ当たり前の考え方なんですけどね。民進党の議員と小池都知事じゃどうしても意見の合わない人がいたのは最初からわかってたことですから」
 O「その合わないもんとくっ付いてまで政権獲ろうとする態度だよね。世論が期待してたのは与党とか野党とかそういう枠じゃなく、旧来のものを破壊する改革みたいなものだったんだろうけど、自民を倒すためになんでもいいなら民進党と組むことを決めた後で変に選別や排除はすべきじゃなかったし、第三極を目指すなら最初からどことも組まなければまだよかった」
 A「そのおかげで旧民進党系の議員は生き延びられたわけですが」
 O「それは前原さんの最大の功績というべきか。小池新党に勢いあるまま選挙やってたら話題完全にそっちに持ってかれてただろうし」
 B「小池さんといえば、Oさんはいずれ小泉進次郎が出てくるだろうと以前からおっしゃっていますよね」
 O「ええ」
 B「今もそう思われますか」
 O「はい。かなりの確率で将来の政局の中心になるかと」
 B「それはなぜ」
 O「なぜといわれると難しいですけど」
 A「もともとOさんも進次郎には否定的でしたよね」
 O「ああ、うん・・・進次郎の場合は色々と思うところはあったし」
 B「彼は新自由主義者ではないんですか」
 O「新自由主義、という言葉をどう解釈するかにもよるんですが・・・私はそのあたりのは別に専門じゃありませんし。ただ、彼を危険視していたのは、彼が政権をとれば日本という国そのものが大きく形を変える可能性があると見ていたからなんですよね」
 B「日本が変わるというのは、やはり小泉政権で行われた構造改革のようなものが進むということでしょうか」
 O「構造改革・・・というのもこの場合適切なのかどうか。彼を見て感じたのは、そうした理念や主張よりも、伝統とか国のあり方みたいなものに捉われないような印象を受けたからなんです」
 B「どういうことでしょう」
 O「日本の場合、社会の仕組みが非常に入り組んでいると思うんです。例えばある分野ではひとつの団体が力を持っていて、また他の分野では企業の団体なり、経営者の集まりが強い発言力を持っているという具合に。そして政治家というのはほとんどの場合、そうした団体なり、地域なりの利害を多かれ少なかれ背負って議論をしているわけじゃないですか」
 B「おっしゃる通りです」
 O「しかし進次郎にはどうもそういうものがあまりないんです。むしろそうしたものを煩わしいと考えているような節がありまして」
 A「その点では根っからの改革者なわけですか」
 O「そう。だからその方向がどこに向くかによるんだけれど、本当に旧体制の破壊者になりかねない。つまり国のあり方そのものを変えてしまい兼ねないタイプだろうなと」
 B「Oさんはそうした改革には反対なんですね」
 O「反対・・・ともいえないんですが。そうした改革には非常に大きな『痛み』がつきものなんです。とくに今の体制の中でなんとかやってるような人たちにはかなり大変なものになるでしょうから」
 B「それは具体的にどういった」
 O「例えば地方の零細農家とか、中小企業の多くはこのケースでしょうね。さっきの政治と利害の話に繋がりますが、ほとんど採算の取れないような産業がなんとかやっていけるのも、変な話ですがそこにある程度の利権と発言権があるからなわけです。今、外国人の研修生を低賃金で働かせる企業が問題になっていますが、そこまでして競争力のない産業を生き残らせているのも、そうしてもらわないと困る団体なり、地元なりの要望が政治に反映されてるからといえるわけですし」
 B「頭の痛い話です」
 A「でも進次郎はそうした利権みたいなものには興味がない」
 O「うん。むしろ効率が悪いと考えてるんじゃないしら。だから農業改革なりでもそうだけど、採算の合わない零細業者はそもそも経営の方法から見直して、やり方を大きく変えてしまった方がいいと考えてる感じなんだよね」
 A「旧来の政治家が利害の調整役だとしたら、進次郎の場合そもそも使えない利権はさっさと焼いちゃおうってわけですね」
 O「そういうこと」
 B「それはでもひとつ間違うとかなり乱暴な方向にいきそうですね」
 O「です。でも、有権者の多くは彼の考えを支持するだろうとも思うんです。それは例えばさっきの外国人労働者のようなケースの場合、現状を肯定的に見ている有権者は少ないでしょうから。この点、進次郎は旧来の政治家、とくに自民党の政治家とはかなり違うなと」
 A「有権者を掴むのは父親譲りですか」
 O「進次郎の場合とくに有権者一般の支持があるというか。利権に頼らないでも当選できるのが強いからね」
 B「そういったところは自民党がもともと地域政党の側面が強い団体であったことを考えるとかなり対極にいる人物のように思いますね」
 O「ええ。だからこそ、これまで『なあなあ』ですませてきたものが彼の前ではあまり力を持てなくなるわけです。それこそ都知事選挙のときに小池百合子が『都議会自民党の闇』とかいって、自民党の体質を批判の対象にしたときに自民党の支持層もかなり小池支持に傾いたりしてましたし」
 A「だからOさんはあのとき『有権者の流れが変わった』といってたんですよね」
 O「そういうこと。自民党を支持する層が野党に票を入れるというのはあんまり考えられないんだけど、小池百合子や進次郎みたいに自民党の中から出てきた改革派になら自民党の支持層からの票も流れやすい。都議会議員選挙までは完全にこれだったんだよね。でも衆議院で民進党とくっ付いたら与党の支持者にも野党の支持者にも受けがよくなかった。挙句に国民民主党と立憲民主党に分裂しちゃったから大敗したんだけどさ。もしその前の小池百合子人気が生きてたら自民党が単独過半数維持できてたかは正直怪しいと見てたけど、支持率伸び悩んでたからなあ」
 B「しかしその場合、自民党の中にも反進次郎派がかなりの割合で出てくるわけですよね。彼らが進次郎が首相になることを望まないことや、対抗馬を立てる可能性も高いと思うのですが」
 O「そうなるとそれこそ進次郎の望む形なんですよ。『抵抗勢力』が党内にいた方が無党派層や、自民の支持層の一部からは支持を得やすい・・・自民党もこのあたりはもう一枚岩じゃないですから」
 B「と、おっしゃいますと」
 O「先ほどBさんがいったようにもともと自民党は地域政党からはじまってると私も思うんです。ようは地元代議士がその土地の利権を・・・まあ、昔ならそれこそ『地元に新幹線ひいてくる』みたいなもんですけど、そういう形で地方と中央の橋渡しというか、利害調整をやっていたと」
 B「はい」
 O「しかし、この何十年間で地方がかなり衰退してしまった。とくに忠臣にあった農業がだいぶ弱くなって、地方から東京やその周辺に出ていく人も増えましたからね。地方創生といっても、産業という面から見るとそれほど先行きがいいとはいえないわけです。そこに来てネット通販の普及であったりとか、流通産業の発達で、欲しいものがあればネットで簡単に買えるような時代になると、その土地にいかないと手に入らないものって意外にないんですよ。だから地方というと観光業が強くなるのはその点必然なわけなんですが」
 A「これも失われた20年とグローバル化の影響というわけですね」
 O「時代の必然ともいえるかな。もうとっくに人や物の移動を制限できるような時代ではないし」
 B「つまり現在はもう自民党支持層の中でさえ利権と政党との関係が維持されていないというわけですか」
 O「ええ。若者の支持層なんかはほぼそうでしょうね。別に自民党を支持していることで直接のメリットがあるわけでもなく、経済をよくしてくれそうだからとか、社会が安定していた方がいいからとか、そういう漠然としたもので支持してる人の方が多いんじゃないかと」
 B「なるほど」
 A「進次郎に期待する人も多いわけですね」
 O「うん。あいつ演説も上手いし、生来のカリスマもあるから。小池百合子のこともあって、アレルギー的に嫌いだって人もいるけど、一方で保守っぽい人の中にも自分たちの考えが進次郎にはまるで通用しそうにないから嫌だってのもいそうな感じだし」
 A「確かに」
 O「右左というか、イデオロギーにほとんど価値を見出してないんだよね進次郎。それこそ合理性と正反対のもんだから。それが保守にも左派にも嫌われてる部分なんだけど、元来多くの有権者は右でも左でもないから別に保守派に支持されなくてもいいと思ってるだろうし、保守派もまたそこまでまとまりがあるかといえば微妙だから」
 B「Oさんとしては、進次郎が今後飛躍するのは時代の必然のようなものが背後にあると感じているわけですか」
 O「そういうことになりますかね。なので有権者がそれを望むならそれを否定するだけしても仕方がないだろうと」
 A「他に有権者からそこまで支持されそうな人っていませんかね」
 O「いない。出てきて話題になりそうなのは橋下徹くらいだけど・・・どうかなあと」
 B「先ほど進次郎が政権をとって改革が実現した場合『痛み』があるとおっしゃいましたけど、これはどのくらいのものになりそうなんでしょうか」
 O「そこは私もかなり漠然としてますが、ようは改革に付いてこられない部分での脱落者がかなり出るので、失業率なんかはかなり上がるんじゃないかなと」
 B「その改革の方向というのは?」
 O「AI技術にはとくに力を入れてる感じですよね。見てると若手の企業家やメディアアーティストなんかともよく対談してますし」
 A「〇合陽一さんですか」
 O「そそ」
 B「正直なところAIの導入で社会がどう変わるかは私には予測がつかないのですがそこまで急激なものになるのでしょうか」
 O「その点では日本よりも中国の方が早いんじゃないかなと。あちらではもう電子マネーが当たり前のように普及してますし、色々社会実験もはじまってますから。ただ、それを見ていても基本は効率化なんですよね。無人のコンビニやホテルであったり・・・ようするに労働力をどこまで効率化できるかという方に向いている」
 B「それは労働者には厳しい社会になるでしょうねえ」
 O「ええ。近い将来、そこは当然大きな痛みになっていくだろうなと。しかし農業の場合などのように、確かに効率化を考えて導入していくべき部分もあるわけです。これは現状で農家そのものが減っているわけですから、効率化した方が将来性がまだあるんじゃないかという段階なので。あくまで上手くいけば、ですけどね」
 A「例えばそこに非正規の若者とかロスジェネ世代を活用するという発想はないんでしょうか」
 O「ああ、それかあ。まあ難しいと思う。地方だと農業にしろ林業にしろ、大変なんでやりたい人が減ってるわけだから、ロスジェネや非正規の人が参入しても従来のやり方じゃ食えるかどうかわかんないし」
 A「そこをなんとかAIの活用でもっと作業を効率化できれば」
 O「難しいんじゃないかなあ・・・」
 B「コンビニが無人化すればパートやアルバイトはかなり削減されそうですよね」
 O「実際、最近はスーパーでも無人レジの導入進めてるとこ増えましたしね。それでどの程度効率化が進むかはわかりませんけど、コンビニのアルバイトにしてもかなり外国人の人が増えてるのが現状ですから、そこもどちらがいいのかはなんともいえませんね」
 A「本来なら正社員増やせばいいんですけど」
 O「それもフランチャイズだと難しいと思う。あんまバイト代出しても今度店が持たないだろうし」
 B「うかがっていて進次郎が人気集めそうな理由がわかってきました。彼の考え方はともかく、方向性そのものは今の社会が抱えている問題とは合っている感じがします」
 O「進次郎はその点、時代の空気を読むのは上手いんですよ。政治家としての実務能力がどうかは別として指揮官としては悪くないと」
 A「そういう風に見るのでOさんは進次郎主義者だといわれるわけですか」
 O「本当はそこまで好きでもなかったんだけどね」
 A「Oさんは割と伝統とかそういうものが好きですからね」
 O「それもあるんだけど、イケメンで時代の空気も読める英雄とかむかつくじゃん」
 A「そこですか。わかりますけどまあ」
 O「まあ・・・思えば皮肉なもんだよ。マスコミや野党はずっと自民党の『利権体質』というか『談合政治』を批判し続けてきたんだけど、そこは人の移動とか、自民党の支持層の複雑化で、そういう古い体質を世間も歓迎しなくなってきた・・・そこまでは彼らの狙い通りだったんだけどさ、今度有権者の支持を集めるには、政治家個人の人気や指導力が必要になっちゃったという。ところがそういう政治家は野党の方にはまったく見当たらず、進次郎のがずっと向いてるんだこれが」
 A「結局大衆を扇動しようとしても肝心の御輿がなかったんですよね彼ら」
 O「そういう政治がいいとは思わないんだけども、そういう環境である以上、進次郎が権力を握るなら簡単に倒れてもらっても困るなとは思ってる。他に目ぼしい政治家もいないからね」
 A「なるほど。こうして民衆の間から独裁者が生まれるんですね」
 O「いや、進次郎は独裁者にはならないと思う。有権者の人気がある以上わざわざなる必要がないから。その点いうなら・・・『僭主』だよな」
 A「なるほど」
 O「彼はあくまで民主主義の王であり、皇帝や独裁者ではないからね」
 B「なかなか色々と考えさせられるお話でしたが・・・頭が痛そうです。ありがとうございました」
 O「いえいえ。こんなものですみません」

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