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リファ【長編小説】連載中

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愛があったはずの場所に、空白地帯が増えていく。 在日韓国人三世の私は、そのままの自分を受け入れてくれたと初めて思えた扇谷太一と出会い、結婚する。二児をもうけ、穏やかで満たされた… もっと読む
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2021年12月の記事一覧

聞けない _『リファ』#26【小説】

 五輪・パラリンピックの開催が、いよいよ二週間後に迫ってきていた。  デルタ株の感染拡大…

ORIAI
2年前
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ゆるやかな伝播 _『リファ』#27【小説】

 あの気まずいランチ以来、ヨンエさんとは仕事以外の会話を避けていた。ヨンエさんからも、し…

ORIAI
2年前
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あたりまえが特殊 _『リファ』#28【小説】

 生まれたときに割り当てられた性別にも、好きになる相手の性にも、私は違和感を抱いたことは…

ORIAI
2年前
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英雄 _『リファ』#29【小説】

 折り畳み傘を広げて、ヨンエさんと新宿駅まで歩く。新宿一帯に人が増えてきた時間なのか、並…

ORIAI
2年前
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相手が大事にするもの _『リファ』#30【小説】

 太一が銀の保育園への送迎を終えて、戻ってきた。どちらが言い出すともなく寝室へ移動した。…

ORIAI
2年前
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そのときしか出せない言葉? _『リファ』#31【小説】

 東京都を中心に過去最悪の感染者急増となるなか、五輪の開催まで一週間を切った。ある世論調…

ORIAI
2年前
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すれ違いの構造 _『リファ』#32【小説】

 私は前回と同じ席で二ノ宮と向き合い、「どのような体制で、三人で子育てをされているんですか?」と尋ねた。 「僕と彼女と子どもたちが同じ家に暮らしていて、週に二回〜三回の決まった曜日と時間にリュウちゃんが来ます。上の子が生まれたばかりの頃は、リュウちゃんのタイミングで好きにうちに来てくれたらいいよ、としていたんです。でもそれだと、僕たちもアテにできない。リュウちゃんも役割が決まってないから、居心地が悪そうでした。だから今は、月曜と木曜の朝はリュウちゃんが上の子を保育園に送っ

汝を知れ _『リファ』#33【小説】

 インタビューは佳境に入った。 「二ノ宮さんの家族形態に批判的な人たちの存在を、どのよ…

ORIAI
2年前
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対峙 _『リファ』#34【小説】

 ヨンエさんはアイスコーヒーを、私はアイスカフェラテを買い、南新宿に向かって歩く。「代々…

ORIAI
2年前
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摩擦 _『リファ』#35【小説】

 パンデミックの混乱がまだ続くなかで、東京オリンピックが開幕した。  緊急事態宣言下で、…

ORIAI
2年前
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