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拝啓 お母さん。 40年かかってしまった。ほんとうの恥を知るのに。ほんとうの恥を、やっと知りました。 全身が赤くなって消えたくなる。なんて形容はなまぬるい。周囲の目が気になって、うつむいて、小さくなっていたものは恥でもなんでもなかった。身をひそめて怯える必要なんて、なかった。 日本には、「恥を知れ!」だとか、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」だとかの言葉があるよね。 「それは、恥ずかしい言動です」と、恥ずかしがることをいろんな方向から強いてくる。第三者からの目線で恥
まぶたと眼球の間を、羽虫がせわしなく動き回る。鼻腔にも数匹が迷い込んで、飛び回る。定位置にあるはずの目と鼻が、定まらない。 頭全体がぼーっとする。不快で、わずらわしい。 きた、マスクをつけていてもなのか。 空気の冷たさはまだ冬のそれなのに、からだの異変で、春の訪れを感知する。 ん? 違うな。そもそも季節はずっとずっと前からそのままあって、冬とか春とか、あとからやってきた人類が、言葉を授けた。名前があるから、季節にも、明確な境界があるような気がしているだけ。 ゆった