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読み切り

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読み切りの掌編、短編をまとめています。
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2022年3月の記事一覧

晴れない春を抱えたまま <読み切り小説>

 まぶたと眼球の間を、羽虫がせわしなく動き回る。鼻腔にも数匹が迷い込んで、飛び回る。定位置にあるはずの目と鼻が、定まらない。  頭全体がぼーっとする。不快で、わずらわしい。  きた、マスクをつけていてもなのか。  空気の冷たさはまだ冬のそれなのに、からだの異変で、春の訪れを感知する。  ん? 違うな。そもそも季節はずっとずっと前からそのままあって、冬とか春とか、あとからやってきた人類が、言葉を授けた。名前があるから、季節にも、明確な境界があるような気がしているだけ。  ゆった