初めてのAIオペレーター
わたしの声は小さくて、低い。
ここのところマスクをしているから、さらに困る。仕事関係の方や、買い物先の店員さんに「えっ?」と聞き返されることが多い。もっとはっきり大きな声で話せばいいのだけれど、人と話すのは苦手なので、いつももごもご、くぐもった声になる。
最近はSiriにもよくお世話になる。会話の流れで「この曲なんの曲?」「おいしいパン屋さんは?」と聞いたりする。だが、無言だったり「よくわかりません」と言われる始末。この声を認識してもらえないのだ。
こちらが「わかりません」と言いたくなる。
話すのは苦手。そんなわたしが、今日、思いがけずAIと会話することになった。
◇◇
我が家は自営業だ。仕事柄書類を大量に扱うので、シュレッダーを使う代わりに、ヤマト運輸の「機密文書リサイクルサービス」を利用している。
専用の段ボール箱に不要な書類を入れて、回収・溶解までしてくれるサービスだ。だいたい1ヶ月に一箱のペースで回収をお願いしているが、年末年始を挟んだため、事務所に3箱も溜まってしまった。
いつものように集荷を依頼の電話をすると、ナビダイヤルに繋がった。音声ガイダンスに言われるがまま「集荷」、「法人」と番号を押していく。すると突然、電話口から可愛らしい女性の声で
「これより、AIが承ります。集荷のご依頼でしょうか?」
と流れてきた。
えっ?
えーあい?
初めてのことでうろたえながら「はい」と答え、そして、急に不安になった。
…果たしてAIは、わたしのくぐもった声を認識するのだろうか‥σ(^_^;)
そして、隣で仕事をする主人に「この電話、AIなんだって!」と伝えた。主人も興味津々だ。
テンションが上がるこちらをよそに、電話口のおねえさんは流暢に話しかけてくる。
A「お客様は〇〇〇〇様でよろしいでしょうか?」
どうやら、サービス登録してある電話番号から、社名を確認しているようだ。ふえー。
おりちゃ「はい」
するとお次は
A「集荷場所は、栃木県〇〇〇〇でよろしいですか?」
おお〜! 会話になってる!! てか、わたしの声、認識してるよ〜(T ^ T) と、感激しながら返す。
お「はい♪」
A「ほかにご要望がありますか? ない場合は、『ない』とお話しください」
こんなことまで聞いてくるの? すごいなぁ。
「ありません」って言ったらどうなるのかな? そんな意地悪なことを少し考えながら、いつもの小さな低い声で応えた。
お「ない」
すると、
A「お電話ありがとうございました。承りました」
確かそんなことを言われたので、電話をそっと置いた。
ふう…
電話が終わった後、わたしはちょっとした放心状態だった。
そして、それから1時間ほどしてドライバーさんが集荷に来た。
手続きを済ませ、しみじみ。
なんかすごい体験をしたなぁ。AIってすごい。
何より、この声を認識してもらえてよかった。
うん?
というかさ、かわいい声で流暢に話すAI。
「はい♪」と「ない」しか言ってないわたし。
なんだか、わたしよりも有能かも…
こちらが試してみたと思ったけど、案外試されてたりして。
そんなことを思った一日だった。
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