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コラム/雑記

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単発のコラムや雑記など、連載シリーズ以外の投稿のまとめ
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#学問

経済学と化学をつなぐ「見えざる手」(前編)

突然だが、この2つの事象にはある共通点がある。何かお分かりだろうか? ・・・ ・・・・・・ 実は、この一見何の関係もなさそうな事象は「ル・シャトリエの原理」という全く同じ原理によって起きている―と言われたら、納得できるだろうか? 私はnoteで経済学関連の連載をしているが、大学院時代の専門は化学であり、ル・シャトリエの原理を初めて知ったのは高校時代である。その後、社会人となりミクロ経済学を学び始めた矢先、生産理論の中に全く同じ法則として現れたの知り、非常に驚いたのを今

経済学と化学をつなぐ「見えざる手」(後編)

前編のあらすじ 1884年にフランスの化学者ル・シャトリエは、分子の「変化を"嫌がる"」性質が化学反応の方向性を支配するという原理を発見し、自然科学界に一大センセーションを巻き起こした。同時に、分子が意志を持って変化に抗うという化学の「見えざる手」的世界観は、社会科学とりわけ経済学にも影響を与えた。後編では、アメリカの大経済学者サミュエルソンが成し遂げた、ル・シャトリエの原理を用いた経済現象解明の本質に迫る。前編はこちら。 天才経済学者が成し遂げた偉大な"化学結合"アメリカ

【祝・初選定!】「先週特にスキを集めた記事」に選ばれました【見えざる手】

本日、9/12付の投稿『経済学と化学をつなぐ「見えざる手」(前編)』が、 「先週特にスキを集めた#勉強の記事」 「#学問への愛を語ろう 応募作品の中で、先週特にスキを集めた記事」 「#化学がすき 応募作品の中で、先週特にスキを集めた記事」 にトリプル選定されました!! マニアックなテーマだと思っていたので皆様に読んで頂けるだけでも嬉しいのに、スキまでこんなに頂いてしまい感無量です…!記念すべき10本目の投稿にもなり、今後の表現活動の励みになります。 本シリーズは「ある一

その世界、下から見るか?横から見るか?

もし「花火の正面」がどこか、どんな形をしているか分からないまま、自分が見た角度から花火を描いてみると、それはどんな形をしているだろうか? ・・・ 消費者理論の連載が、第7回をもってひと段落した。理論の一つの集大成とも言えるSlutsky方程式まで辿り着く当初の目標が果たせたため、ここで一呼吸置き、「私が学んだものは何か?」色々な視点から眺めることにしたい。 価格理論を学び始めたのは今年の年初あたりだと記憶しているが、既に今までに触れたどれでもない独特さを感じている。かつ

「X+note=L」始めてみた

X(Twitter)との連携を始めてみた(アカウント:@weekendeconomy)。 連携するからには、noteとXのメディア特性の違いを踏まえつつ、フォロワーの皆様に両メディアをフォロー頂いてこそ最大限の価値を提供できるようにしたい。そのためには、「X+note=L」という等式の成立が鍵だと気付き、まとめた次第である。 noteとX(Twitter)の特性の違い既に各所で議論されている通り、noteとXはメディアとしての拡散性、情報の保存性、検索性、そして文字数のあら

【2週連続!】「先週特にスキを集めた記事」に選ばれました【見えざる手】

今週も、9/12付の投稿『経済学と化学をつなぐ「見えざる手」(前編)』が、なんと【2週連続】で 「#化学がすき 応募作品の中で、先週特にスキを集めた記事」 に選定頂きました! また、先週の祝・初選定を同じくご報告させて頂いたこちらの投稿も、 「先週特にスキを集めた#勉強の記事」 「#学問への愛を語ろう 応募作品の中で、先週特にスキを集めた記事」 にダブル選定頂きました!! サイエンスコラムの本投稿が私のnoteを知って頂くきっかけとなり、感無量です。今後の表現活動の大

【感謝!3週連続!】「先週特にスキを集めた記事」に選ばれました!

今週は、9/27付の投稿『企業の「本源的価値」を巡る三大革命(2)』が 「先週特にスキを集めた #勉強 の記事」 「#学問への愛を語ろう 応募作品の中で、先週特にスキを集めた記事」 にダブル選定頂きました!! また、先週同じく選定記事のご報告をさせて頂いたこちらの投稿も、 「#化学がすき 応募作品の中で、先週特にスキを集めた記事」 に選定頂きました! 先週から連載を開始した「企業価値評価」シリーズの序章第2編の反響が特に多く、非常に嬉しく思っています。テーマ的には投

カイゼン研究の第一人者に学ぶ「コンセプト化」の真髄

10/18に出版された、カイゼン研究の第一人者・岩尾俊兵氏による著作『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』を読了した。私は本書における筆者の主張内容もさることながら、本書の随所に垣間見える筆者のプロフェッショナリズムにむしろ興味を持ったため、本書で筆者が提示したイノベーションモデルの枠組みを使って、筆者自身がいかにイノベーティブであるかを自己回帰的に分析できないか、という興味関心の元、本エントリーを書いた。 本書に興味を持ったきっかけnoteの「今日のあなたに」で紹介された

組織の経済学を知るための5人

経済学とは「市場取引を分析する学問」であり、経済学に登場する企業は、組織にもマネジメントにも言及されない「ブラックボックス」的な存在である―これが少なくとも伝統的なミクロ経済学の見方であった。このように単純化された企業のモデルは、複雑な資源配分の仕組みを分析する上では有効だが、その内部で経営者・従業員がどのように関与しているかについては、何も記述されていない。 しかし現実には、むしろ取引の大部分が、非市場的な組織の内部取引として、価格メカニズムとは異なる方法で取引を行ってい

元理系、市場経済を学ぶ

年初に一念発起してミクロ経済学を学び始め、はや1年が経とうとしている。学生に戻った気分で独学を始め、無謀にも学会に首を突っ込み、自学が高じてnoteでの発信にも繋がった。学会の内容はチンプンカンプンではあったが、「来年は手を挙げて質問する」を目標に気ままに学んでいる。 ミクロ経済学への探訪は間違いなく私の2023年のキートピックの1つであろう。年の瀬も近いのでこれまでの学びを振り返りたいが、テーマが無いと書きづらいため「元理系のレンズを通して見たミクロ経済学」という切り口で

エスカレーターはビジネス書100冊に勝る

人間関係に悩んだら、エスカレーターを眺めよ。 やりたいことが見つからなくなったら、エスカレーターを眺めよ。 良いリーダーになりたければ、エスカレーターを眺めよ。 毎日の通勤通学で、エスカレーターという最高の教科書を目の当たりにしているとしたら、それは非常に幸運なことだ。ビジネス書100冊に勝る。 あの乗り物、よくよく考えると実に不思議である。関東では急がない人は左側に寄り、急ぐ人は右側を通る習慣は、いつどのようにできたのか。なぜ関西では逆なのか。なぜ急いでいる時に限って1

ビジネスは経済学に役立つのか?

経済学はビジネスに役立つのか?「ビジネスマン向けに経済学や経営学などの学知を分かりやすく伝える」系の動画や記事が、最近増えたような気がする。 これまでいわゆる「ビジネスエンタメ」的な動画はよく視聴してきたが、よく見かけるビジネス系インフルエンサーや論客を招いたディベート番組から、徐々に学者によるアカデミック知見を活用したニュースの解説やビジネスの実践を深堀りするコンテンツが増えたように思う。 単に私向けによくリコメンドされているだけかと思いきや、よく見かけるチャンネルの過