― 「ところかまわずナスかじり」第316話 底のないスニーカー ―

 私、旅行が好きでね。
 この前、イタリアに行ってきたんです。
 そしたら驚いちゃって。

 あのね、イタリアの人たちの靴って、皆、底がないんです。
 ね?驚くでしょ?

 でね、聞いたんですよ、イタリア人に。『どうしてみんな靴の底がないんだ?』って。
 そしたら、何と答えたと思います?

 ほら、イタリアの道ってどれも細い、路地みたいなところばっかりじゃないですか?
 普通の車が入らない。
 だから人一人入れるくらいの車しか入らない。
 でも、そんな車ないじゃないですか?
 
 だからイタリア人はみんな、木箱をくり抜いて、それをかぶって車と見做してるんですって。

 でもそれだけなら靴の底が減ることはない。

 ほら、イタリア人って気が短いでしょ?
 車間距離が短すぎて、すぐ急ブレーキするから靴の底が減っちゃうんですって。
 木箱車のブレーキっていったら道に足をこすりつけることだから当然だよね。

 で、右足の靴の底がなくなったら左足の靴の底でブレーキするんだって。
 ブレーキする足を右から左に変えるなんて柔軟な発想、日本人じゃとても思いつかないでしょ?
 イタリアってさすがパスタの国だなって感心しちゃいましたよ、私。

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