―　「ところかまわずナスかじり」第五十七話　ロクサンヌ　―

　しゃちょー、聞いてるか？
　もーわたしはこれ話すときはいつもはずかしくてエビになりたくなるよ！
　聞いてるかっ！
　私がこの国来たの、もう、七年なる！
　・・・なるか？
　そう、最初たいへん。なにもわからない。
　最初のしゃちょー、次のしゃちょー、なにも教えてくれなかた。
　わたし、いっしょけんめいだたよ！
　わたし、いく場所ない。いっしょけんめい！それで、お金もらえない。これ、バカよ！悪いな！悪いな！
　わたし、いっしょけんめいでも、なにももらえない。だからわたし、もうやめた。ぜんぶやめたよ！そしたらな！しゃちょーもやめたよ！悪いな！しゃちょー、悪いな！
　わたし、ひとりでそれから三年。ハトとるよ。公園いってハトとって、たいへんよ！
　日本の動物、わたし、ぜんぶたべたよ。トナカイ、クマ、コゾウ、ヒリ、ザ、ザ、あれ、なんか？あ、そう、ザブトン！ぜんぶよ、ぜんぶ！わたし、たべてないの、黒いものだけ。あー、あれ、なんていったか？あの、黒いもの！あ、そう！カラス！あれ、黒いな！悪いな！
　
　わたしの膝小僧見る。これ、ぜんぶ傷よ！山に行った傷よ！日本の山、おかしい！変なのいぱいいる。わたし、あの、あれ見たよ。あのー、あれ、モク、マオウ？モクマオウ？
　いるか、モクマオウ？
　それと、転んだ！ずっと転んだよ！ヒザで！
　？ヒジか？
　こうやって、転んだ。ね？とてもいたいよ！いたいからわたし、泣いたよ！転びながら泣いたよ！ずっと！だからわたし、わらたよ。よかったよ。わかるか？その日からだ。わたしは押入れに入ること決めた。ああ、決めたよ！押し入れ、安全。悪いことない。一番いい。それからわたし、幸せ。何もないが一番。一番幸せ。いいか？

　だから今度わたし呼ぶときは押入れ来い。あと、酒！今日、もってない。悪いな、悪いな！今度はたくさん持ってくる。そしたらわたし、もっとやさしい。あ、あと、タバコ！マイルトセブン。しゃちょー、この前もってきたの、ワカバ！あれ、健康にわるい！悪いな！マイルトセブン、大丈夫。いいか？キャメルでもいい。たくさん、いい。いいか？

　じゃ、わたし、帰る。ねむくて目からケムリ出てるよ。はっはっは！