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『幽★遊★白書』における推しの変化

 「『幽★遊★白書』の登場人物で誰が好き?」
と90年代アニメを観ていた世代の女性に尋ねたら、おそらく多くは「蔵馬」か「飛影」と答えるのではないだろうか。
 私の推しも長らく蔵馬だった。クールだけど優しい、仲間や特に母親に危害が加えられそうになると激怒する。妖狐になるとめちゃくちゃ残忍。南野秀一と妖狐蔵馬とのギャップがたまらない。

 しかし、最近になって、『幽★遊★白書』を読み返したら、「桑原くん」が最高なのでは?ということに気がついた。
 桑原くんは、不良だけど万引きやカツアゲは一切しない。仲間想いで、仲間のためなら喧嘩も我慢して苦手な理科のテストで50点以上取るために猛勉強する。情に厚く、努力家で、その上猫が好きなのだ。猛勉強の末、補欠とはいえ名門高校に合格するし、将来も有望だ。外見の悪さなんて打ち消すくらい魅力と将来性に溢れている。ラーメンの屋台を始めた幽助とは違い、桑原くんならば堅実な道を歩みそうだ。

 蔵馬は相変わらずカッコいいけれど、やっぱり大人になると見方が変わるというか、現実的になる。妖狐よりも人間の方に魅力を感じ、推したくなる。「推す」と言っても、私の場合はグッズを集めることはせず、漫画を読んだりNetflixでアニメを観たりして、桑原くんの登場を喜ぶだけに過ぎない。それに、桑原くんを見ると
「ああいう上司がいたら働きやすいだろうなぁ」
と、つい現実の状況と当てはめて考えてしまう。桑原くんならば、決してミスを押し付けたり自分が気持ち良くなるための叱責をしたりせず、部下を全力で守るだろう。ああ、桑原くんの下で動きたい。しかし、実際にはそのような上司はいないに等しく、考えれば考えるほど虚しさは募るばかりである。

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