てんかんと私②

 小1の私は台所で何となく座っていた。

 少し離れたところで母は友人と電話している。その頃は携帯電話なんて無かったので、固定電話だ。コードを指でくるくる回しながら母は何かを話している。その表情は固い。

 バチン
 
急に母の平手打ちが飛んできた。
 何もしていないのに。ただ座っていただけなのに。

 そんなことが何度か続き、母に嫌われているんだと思って悲しくなった。でも、母が私を嫌う理由も何となく察していた。
 妹や弟のように明るくない私。
 保育園でも小学校でも下ばかり向いていて、誰からも好かれていないこ私。
 思っていることはあるけれど、口の中で消えてしまうのだ。それで何も言えず、前を見ることもできない。(こんな内向的な私を変えたのは英語の辞書と美川憲一、それにAちゃんという同級生のおかげなのだが、Aちゃんについてはまた今度書きたい)

 バチン
 
また何もしていないのに叩かれた。どうして、どうして。

 この時、私はてんかんの発作を起こし、気を失っていたらしい。それで母は慌てて私の気を取り戻そうと叩いていたようだ。
 でも、そんなこと説明してくれなくちゃ分からない。それに私は本当に「ただ座ってただけ」なのだ。気を失っていたという自覚は全く無かったし、振り返っても、当時自分が気を失っていたなんて信じられない。

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