減量苦騎手列伝1 西谷誠騎手

減量に苦しめられる職業の一つに「騎手」があります
吉永正人騎手(当時)が「雨の日に、帽子のひさしから落ちてくる雨水が本当にうまい」と述べた話は有名です

以前から書きたかった「減量に苦しむ騎手の話」
本当に苦しんだ騎手からちょっと笑える騎手まで
どこかで読んだ雑誌の記事や出典がハッキリしない記憶を頼りに書いてみたいと思います


西谷誠騎手

1995年騎手デビュー
デビュー時点で既に身長は170cmを超えていたと記憶している
同期の騎手の公称体重が重くても46kg台なのに対し西谷誠騎手は47.5kg近くあったと思う
同期全員が揃った写真でも身長が図抜けて高く頬はゲッソリと痩せこけていた
競馬学校騎手課程時代から減量苦を強いられてきたのだろう

父は同じく騎手の西谷達男
減量に苦しみ騎手晩年は障害競走のみの騎乗であった

さて西谷誠騎手
デビュー直後は負担重量50kgでも騎乗出来ていた
しかし徐々に減量苦が西谷誠騎手を襲う

52kgで乗れず52.5kg
54kgで乗れず54.5kg
55kgで乗れず55.5kg

度重なる負担重量超過
身長も更に伸びて175cm前後
最早平地競走で騎乗するのは限界であった

障害競走への騎乗が主になった頃JRA公式サイト上で西谷誠騎手の公称体重が56kgに書き換えられた
公表された負担重量で騎乗するには自身の体重を概ね其れより2~3kg減じた程度まで減量しなければならないと言われている
一般的な障害競走の最低負担重量は当時57kg
既に其れに乗るためにも減量を強いられる身体になってしまったのだ

デビュー当時は思い切りの良い騎乗で平地競走でもまずまずの成績を残していた
身長さえ伸びなければ……
体重さえ増えなければ……
周りは勿論何より本人が一番そう思っていただろう

それから数年後の2007年
期せずして平地競走の騎乗機会が訪れた
負担重量は57kg
この年は障害競走でも騎乗機会は58kgまで
恐らく除外の権利取りか何かで出馬投票が西谷誠騎手で通ってしまったのだろう
当時はまだ平地競走の免許も保持していた

そのレースを映像で見たが大きな身体……特に長い脚を無理矢理畳んだ騎乗フォームは凄く目立っていたように思う
もう西谷誠騎手は平地競走の騎手ではなかったのである

このようなケースでの騎手変更は稀にあるが「管理調教師が騎手への騎乗依頼を怠った」として制裁を受けるか「騎手が負担重量について注意義務を怠った」として制裁を受けるか……必ず誰かが制裁を受けることになる
そのどちらも選択する事無く57kgで騎乗した西谷誠騎手なりの意地だったのかも知れない

(執筆時)現在は平地競走の免許を返上し文字通り障害競走専門騎手として活躍する西谷誠騎手
最近は59kgでの騎乗も殆ど見掛けない
更なる減量苦と戦っているのだろうか

無理のない程度に続けて貰えたら一ファンとして幸いである

2020年12月5日

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