減量苦騎手列伝4 西谷凜騎手

減量に苦しめられる職業の一つに「騎手」があります
吉永正人騎手(当時)が「雨の日に、帽子のひさしから落ちてくる雨水が本当にうまい」と述べた話は有名です

以前から書きたかった「減量に苦しむ騎手の話」
本当に苦しんだ騎手からちょっと笑える騎手まで
どこかで読んだ雑誌の記事や出典がハッキリしない記憶を頼りに書いてみたいと思います

西谷凜騎手

2021年騎手デビュー 
2022年騎手引退 
通算244戦5勝(JRAのみ) 
 
50年後とまで言えば大袈裟かも知れないが人人の記憶が薄れた頃にこの騎手の上記概要を見たら「怪我で早期引退したのだろうか?」と思われるかもしれない 

しかし現実は日本の何処かで細細と競馬を続けている筆者がこれまた細細と書き連ねてる「減量苦騎手列伝」なるモノに登場することからも分かるとおり「減量苦が原因で早期引退を余儀なくされた悲運の若手騎手」なのである 

父は既に「減量苦騎手列伝」で書かせていただいた西谷誠騎手(執筆時) 
祖父は西谷達男元騎手 
ともに減量苦が祟り後に障害競走専門騎手として活躍している(祖父の西谷達男元騎手の身長は不勉強ゆえ存じ上げないが父である西谷誠騎手は高身長も災いした) 
 
そんな西谷誠騎手の子であり西谷達男元騎手の孫である西谷凜騎手 
 
余程勘の鈍い人でない限り「いつか減量で苦しむことになる」のは想像に難くないはずである 
そんな彼を何故騎手デビューさせたのか 
もっと言えば何故競馬学校騎手課程に合格させたのか 
職業選択の自由があるにせよ疑問しか無い 
 
騎手デビュー時点で既に身長が170cmを超えていた西谷誠騎手とは違い166.5cmと少しだけ小柄な体躯でデビューした西谷凜騎手 
同期デビューにもっと高身長の騎手が居たことで目立たなかったという部分はあるにせよ新人騎手としてはかなり大柄な部類である 
 
加えてこれは筆者の私見になるが西谷凜騎手は割と骨太な体格に見えた 
骨太な体格というのもこれまた騎手にとって後後減量の足枷となる 

さて  
ここで負担重量超過とその制裁についてであるが 西谷凜騎手の現役時代も相変わらず具体的な判断基準は公表されていなかったものの他の騎手も含めた事例から判断するに 
「0.3kg未満の超過については不問」 
「0.3kg以上超過した場合や0.3kg未満の超過であっても其れを繰り返した場合等は制裁(加重制裁あり)」 
「0.5kg以上超過した場合は公表負担重量変更のうえ過怠金以上の制裁」 
「1.0kg以上超過した場合は騎手変更のうえ制裁」 
となっていたように思われる  

西谷凜騎手の初勝利は2021年4月25日である デビューから二ヶ月弱と少し時間がかかってしまっているが問題はそこではない 
同日の他競走で負担重量について注意義務を怠ったとして30,000円の過怠金が課せられている 
これまた具体的な判断基準は公表されていないがデビューから当日までの間に西谷凜騎手は複数回負担重量に関して制裁を受けている 
そしてそれは「戒告」「過怠金10,000円」「過怠金30,000円」と現実に「加重制裁」が課せられていることからも西谷凜騎手が体重調整に関して何らかの問題を抱えていたのは間違いない 


そして翌週 
西谷凜騎手は調整ルーム内で脱水症を発症し騎手変更となる 
加えて「体重の調整ができなかった」「騎手変更となった」として騎乗停止処分を受ける 
 
以降の話は割と最近の出来事(執筆時)なのでこれ以上深く書くのは野暮というものであろうから今は後述する馬装(保護ベスト)不正改造事件を除いて割愛するが冒頭でも触れた「何故騎手デビューさせたのか」という疑問は拭えない 

筆者は父である西谷誠騎手がデビュー直後から減量に苦しんでいた様子を雑誌等で見ている 
なので筆者のような疑問を抱いた人はゴマンと居るはずである 
 
「こうなることは最初から分かっていたのでは?」 

ネットが急速に発達し色色な情報が飛び交う現代 
現地で撮影された一般競馬ファンの写真等も数多く公開される時代である 
166.5cmであったはずの西谷凜騎手が既に174cmを超えているという情報も飛び交っていた(一緒に写っている長身の調教助手氏より背が高かったことから) 
 

そして決定打となった「馬装(保護ベスト)不正改造」であるが 
コレに関しては筆者はちょっと強く言いたいことがある 
 
多くの競馬ファンが「前代未聞(の不祥事)」と若い彼を罵ったことについてである 
 
勿論西谷凜騎手がやってしまった事は重過失である 
それに関して擁護する気はない 
ただし「前代未聞」ではない 
 
バレてないだけで多くの騎手が似たような不正を犯して前検量をクリアしている 
後検量でバレて処分喰らったのは穂苅寿彦元騎手など多数存在する 
 
そして「保護ベスト不正改造」となると平沢健治元騎手もやっている 
つまり全然「前代未聞」でも何でもないのである 

そしてもっと強く言わせて貰いたいのは「同じような減量苦という境遇にありながらどういうワケか制裁を免れて現在も現役を続けている騎手が居る」というのは如何なモノかという点である 
執筆時点で証拠が無いので今は「誰が」とは言わないが 

残念ながら西谷凜騎手はその後も減量に苦しみ続け上記「馬装不正改造」を最後に騎乗機会がないまま引退してしまった 
 
だが調教助手として度度パドック等に登場する彼の写真がこれまた一般競馬ファンの手によってネットに公開されている 
 
その表情を見る限りでは現役時代過酷な減量が祟ったのかボロボロに荒れていた肌がツヤツヤピカピカで若者らしい爽やかさに溢れていて実に良い笑顔だった 
 
大好きな職業として自分で選んだ騎手を続けられなかったのは残念かも知れないが筆者は其の笑顔を見て少しだけ安心したのであった 
 

競馬学校に於かれましては今後彼のような若者を二度と出さないようにしていただきたいと強く願います 

 

2024年5月6日

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