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昨日はやさしい人間に当たった。父親にはなんで普通に出来へんねん!と怒鳴られながら下に降りて父親の作ったレトルトカレーを食べた。
今日は良くなろう 謝ろう 美しくなろう と思い、気晴らしに電車に乗った。明度を急激に上げて全てが白く消え去ったような日照りが全て無かったことにしてくれているようだった。マスクの下にはじっとりと汗をかき、眼鏡が鼻の油で何度も落ちる。
電車の本数は1時間2本しかない。あと2分で電車が来る。俺はタイミングを見計らって信号無視をした。小走りで横断歩道を渡りきったところでピョピョ と後ろから他人事のような信号機の音が聞こえてきた。信号無視なんてもうしない。
しばらくすると、俺を追い越して早歩きで踏切を渡る人間がいた。もう何ヶ月も前に切りそろえられたであろう襟足が肩に重くかかっている。
模範解答のようなダサい服装
メトロノームのように規則的に歩く姿
中学まで一緒だった同級生だとすぐにわかった。
卒業文集にそれぞれが将来の夢や思い出を書いている中、1人だけ夢の中の女の人に恋をしたことを書いている人間がいた。それが今前に座っているこの同級生
この異端な文集を読んで以来、俺は彼のことをやんわりと忘れていなかった
もう、当時使っていた緑色のリュックではなく、使い古した黒いChampionのリュックにヘルプマークを付けている。
同じ駅で降り、同じ速度で彼は規則的なので少し早歩きで後を付いていく。
俺は何故だか1人だけ感情が昂って
████くん、俺が誰だかわかりますか
会話も特にしたことがなかったけど、俺は君が誰なのかわかるよ 君の文集は本当に良かったよ ████くん!!!!ーーー
と思いながら改札を出ていく同級生を見送った。
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