見出し画像

13 マニアの追求は、迷惑にもなるし、社会貢献にもなる

 マニアは自分の好き追及する。そして追及の結果、迷惑な場合もあるが社会貢献する場合もある。鉄道マニアが私有地に不法侵入して写真を撮っていたとか、社員のふりをして乗務員室に入ったとかといったニュースを見た。一方で、描くことが好きな鉄道マニア、いわゆる”描き鉄”の人が東日本大震災で被害を被った三陸鉄道の復興イベントに駅名標の挿絵や記念スタンプ、電車の外装デザインに取組、社会貢献しているという記事も見た。このように、自己欲求で他人に迷惑をかける人、自己欲求を他者への貢献という形で実現する人がいる。たぶん、マニア本人は、意識していない。追及した結果、迷惑もかけているし、社会貢献もしている。

 マニアの社会貢献には、2つのパターンがあると考えている。マニア自身が直接社会貢献をするパターンとマニアの活動の結果により間接的に社会貢献に繋がるパターンがある。

 一つ目の直接貢献のパターンは、マニア自身が直接、新しい商品やサービスを創出する場合である。例えば、廃墟の保存活動をするためNPO法人を立ち上げた廃墟マニアや、鉱山での歴史的意義がある機械の保存活動をしている鉱山マニアがいる。それ以外にも、手品が好きで自分が考案した手品を販売している人や、自分で新しい文房具を考案している文房具マニアもいる。好きなことを追求するマニアがいるから、学問が発祥し、イノベーションが起き、新しいものが創出されていると考えている。

 後者のパターンは、マニアがマニアな食や製品を消費することにより、その分野が発展している場合である。アニメの舞台の巡礼やコスプレの撮影場所として非日常空間に集まるマニアがいることで、自治体や地権者が町おこしに活用するといった事例もあてはまる。地域限定や売れていない商品をマニアがSNSに投稿し、人気が出るという流れである。例えば、マイナーだった地域のクラフトビールが全国的に有名になったり、最初は売れなかったマニアは好んで実験者になる。新製品を買うのも使うのも最初はマニアである。変な店に入るのもたいていマニアである。たいした情報もないのに、それなりの価格がする新製品を発売日に買う人は、マニア以外のなんでもないと思っている。失敗も受け入れる度量のあるマニアが実験者になってくれることで、新しいものが社会で広まっていると考えている。

  ちなみに、作者の経験では、25年程まえ(2000年頃)に、ある同人誌即売会にて、山手線各駅の階段やエレベータと各車両の停車位置を図示し、出口や乗り換えの最適ルートをわかりやすく案内する同人誌を見た。乗り換えが複雑な、大阪や名古屋の路線にも作って欲しいと思ったことを覚えている。ネットの普及もこれからという時代、マニアな人が足で調べたのだろうと思った。この同人誌のおかげかどうかはわからないが、今では、利用者の多い駅ではよく見かけるようになった、案内である。

 しつこいが、マニアはとりあえず、興味あることを追求する。結果は考えないことが多い。山があるから山に登る。本が好きだから本を読む。推す対象があるから推す。そこには、すごいパワーがある。このパワーは、単に自分勝手に振る舞うのではなく、他への貢献を意識して自分勝手にふるまって欲しい。他人に迷惑をかけずに自分の好きを追求しているだけだから、ほっといてと思っているかもしれないが、「誰得かわからないけど、喜ぶも人もいるだろう」という感じで、他者を意識して好きを追求して欲しい。

 そして、みんな知っておいて欲しい。なんか好きだから気になるから、「買ってみよう」「試してみよう」という追求気質があるからこそ、「知りたい」「持ちたい」「発信したい」という欲があるからこそ、新しい商品やサービスが生まれ広まり、社会は豊かになっている。

マニアは迷惑をかけるが社会貢献もしている。