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「スイッチ 悪意の実験」を読んで

ある実験を企画する者、実験に参加する者、実験の材料として使われる者、それぞれの人物の行動と内面、その変化や成長について、ていねいに描かれた没入感を味わせてくれるすばらしい作品である。
 「行動した本人とその行動を見た他人の評価は、まず一致しないこと」と「行動する又はしないを選択した結果がただ存在すること」をつくづく認識させられた。
 誰かが何かを行動することに対して、その動機を他人が把握することは困難である。当人にとっては簡単であっても、人が変われば、非常に覚悟が必要な行動もある。電車で席を譲ることがあたりまの人がいれば、知らない人に声をかけるのが非常に困難な人もいる。
 善意であろうと悪意であろうと無意識であろうと、ある行動をすると又はしないと、それに伴う結果が存在するだけである。他人から見たら非難されるべき行動であっても当事者からすると良き行いであることがある。かばうための行動、当然反対もある。そんなことをつくづく考えさせる物語である。
 「大けがした人を見かけて、救急車を呼ばない人は、悪か」「良い嘘は必要か」といったことを考えたい人にお薦めです。もちろん、何も考えずただ読んでも面白い本です。

出版社:講談社 作者:潮谷 験 タイトル:スイッチ 悪意の実験
(R4.5.18読了)