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つくる人と食べる人。両者の体験価値を高める材料。

ベルギーに本社を置き、製菓・製パン材料をグローバルに供給しているピュラトスが、カカオの収穫からわずか60日以内にチョコレートへと加工した「60DAYS」。オレンジやレーズンのような香りを帯び、まるでフルーツを食べているようなジューシーさも味わえる。そんな「60DAYS」は一度テンパリングしたほうが風味が際立つというのは、「パティスリー アプラノス」(埼玉県さいたま市)のオーナーシェフ、朝田晋平さんだ。実はどうしても「60DAYS」でつくりたい商品があるのだが、まだ納得がいっていないのだという。

「テリーヌショコラ」2,500円(税込)

「チョコレートのテリーヌなんです。みっちりとした濃厚な味わい。敢えて言えば、チョコレートの羊羹みたいなイメージの商品なんです。ポイントは舌触りで、とにかく滑らかな食感に仕上げたいんですね。今のところカカオ・トレースのチョコレートでは納得のいく仕上がりになっており、販売もしているのですが、60DAYSのチョコレートでつくるとどうもその滑らかさが足りない…。カカオ分なのか? コンチング工程なのか? それとも水分量の違いなのか? その原因を探っているところなのですが、それがわかるまでもう少し時間が必要かな(笑)。60DAYSはテンパリングしたほうが風味の出方が違う。それがわかっているからこそ『美味しくしたいーーー!』と思ってしまうんです。フルーティな60DAYSでつくれば、この商品が新しい次元にたどり着くはずなんですよ。…もはや趣味ですね(笑)」

朝田さんが「納得している」と自負する「カカオ・トレース」のチョコレートでつくられた「テリーヌショコラ」を味見させていただいた。口に入れた瞬間は濃厚で重さすら感じるが、食べ終わりは軽快。まるで、上品なキャラメルをなめているかのように滑らかな数秒前の記憶が、食感として追いかけてくる感覚だ。十分に美味しい。しかし「60DAYS」を使って朝田さんがつくる「テリーヌショコラ」は是が非でも味わってみたい。そんな欲望が腹の底から湧き上がってくるのを感じた。

改めて、材料メーカーの本分とは?

職人のクリエイティビティを刺激し、生活者の欲望を沸き立たせる。ひとつの材料で両者の体験価値を高めるという仕事をしているのが、ピュラトスという材料メーカーの本質なのかもしれない。

生活者が「食」に求めるものが増えている。私たちは栄養価や美味しさを手に入れられるようになって久しい。トレーサビリティ(生産・流通過程の追跡可能性)がうたわれるようになり、農家の顔が見える野菜はすでに当たり前になった。応援消費と呼ばれる消費行動も東日本大震災を契機に一般的になった感がある。つくり手の思いや信条への共感、もしくは、つくり手が抱える課題を解決するために「応援したい」という気持ちから生まれる消費のことだ。また、1990年代半ばから2000年代に生まれたZ世代の特徴は「エシカルショッピング(倫理的な買い物)」だといわれる。購買するという行動が「社会的に良いこと」「世の中に『Giving Back』すること」に紐づくか否かを吟味して買い物するのが当然なのだ。そして、さまざまな分野におけるサスティナビリティ(持続可能性)を実現させるSDGs的な視点も、生活者の消費行動を大きく左右する要素になっている。

ピュラトスは、生活者のそんな消費行動に寄り添うような製菓材料メーカーなのかもしれない。

Patisserie APLANOS /パティスリーアプラノス
048-826-5656
〒336-0027 埼玉県さいたま市南区沼影1-1-20 フィオレッタ武蔵野103
10:00-19:00
火定休
http://aplanos.jp/

ピュラトスジャパン
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-2-22
https://www.puratos.co.jp/ja